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「あなたが例の勇者ね!!」

 ピンクの髪がふわっふわした感じの女の子がこちらを指さして決めポーズをとっている。チョット無表情になる俺。この城はあれか? 『俺より強い奴に会いに行く』系のキャラ勢ぞろいか?

「いいえ違います!」
「え?! そうなの?」
「はい!」
「あ、人違いですみませんでした」

 言い切って去ろうとする俺。しかしここで間が悪くお姫様とそのお連れの方達登場。

「あ、勇者様。この間はとても楽しかったですわ。また是非。ではごきげんよう」
「あ、いえいえ……はい、ごきげんよう」
「……!!」

 姫様が去るのを見届ける俺と、ピンク髪。姫様が角を曲がり見えなくなるまで少し時間がたつ。
 ぎろっとピンク髪の目がこちらを見る。あーこわっ。

「あなた、やっぱ勇者じゃないのよ!!」
「いえ違います(キリッ)」
「嘘つくな!」
「ちっ……」
「舌打ちした!?」

 どうやらもうごまかされてはくれないようだ。

「で、何か御用ですか? 魔導士殿」
「え? なぜわかるのよ!」

 んなもの一目瞭然だろ、装備品の指輪はおろかそもそも杖持ってんじゃん。
 服装は紫系のローブ。確かこの世界での魔導士はローブの色で階級分けされているんだろ?
 ってことは一番上じゃなかたか? 紫は。要はこいつは何気にこの城で一番すごい魔法使いの可能性が高い。

「あぁ……カン? ですかね(ハハハ)」
「カン……って……まぁいいわ、あなた魔法使えるんですって?」
「えぇ……まぁ多少は……」
「わかったわ、では私と勝負なさい!」
「いやです」
「えぇ!?」

 またこのパターンか……とはいえ、多分断れないんだろうなぁ……。そのあとどうにかはぐらかそうとするも、
 結果的にはまた、対戦を受けることになった。

 対戦する場所は城の庭、少し離れた外側にある特別な魔法練習場。周囲を含めかなり高度な結界ははられているらしく、
 かなりのクラスの魔法でも破られることはなさそうだ。

「さぁ、ここなら思う存分できるから安心していいわ」

 ムフーと鼻から息を拭いている感じにピンク髪がない胸を張る。ふとそのない胸に目が行く。
 そっと見た先の平原を確かめて、スッと目をそらす。

「ちょっと、今何を見てなぜ悲しそうな眼をして目をそらしたのよ!」
「あ、いえ……気にしないでください。大丈夫ですよきっと、咲かない花も出ない芽もないといいますから」
「だから何の話を!」
「頑張ってくださいね(微笑)」
「きーーっ!」

 ピンク髪がちょっと身体的な悩みを持っていたのか、俺の視線に気づきあれやこれや言ってきている。
 まぁあっちの世界だったらセクハラで訴えられそうだけどな。大丈夫この世界にはそんなものはない。
 安心してよい。ただ問答無用でぶっ飛ばされそうになるけどな。

「頑張ってるわよ!!! 燃え射て! 火矢!!!」

 無詠唱ってやつなのかなぁって思ったらちゃんと詠唱してた。ただかなり高速だ。この世界呪文に詠唱がある。
 この呪文詠唱を短縮、もしくは高速で処理することは魔導士としては必要なスキルということになるみたいだな。

「氷矢っと、いきなり危ないなぁ……」

 直ぐに打ち消し用の対抗魔法を放つ。互いに空中でぶつかり相殺されて消える。

「あら、ちゃんとできるんじゃないの」
「多少は?」
「なら、これはどうかしらね? 燃え盛る炎の球よ、眼前の敵を撃て、火炎球」

 今度は火炎球か……まぁあれだ、ファイヤーボールだな。威力は抑えめにしてるのか、さほど大きくないけど、アレだって当たれば痛いからな。

「はい、氷塊」

 俺は氷の塊をぶつける。またもや同じく相殺され、辺りに水蒸気が立ち込める。
 結構水蒸気あるし面白そうだから、あれもやってみるかなぁ……。

「蜃気楼」

 これはもうそのままだ、周囲に俺の幻をいくつも作る魔法。この世界の攻撃家魔法を正確に当てるには、どうも相手の視認は不可欠らしいのだ。

 範囲魔法でやれないいのでは? と思わないでもないのだが、
 歯に魔法の場合リスクも大きく、彼らの場合は詠唱が長くなる。強い魔法にはその分余計に手間も多いらしい。
 だからこういうのは役に立つ。

「蜃気楼ってなによ、って、なにこれ! 幻術系統までできるの??」

 驚いて頂けて何よりだ、俺の場合は幻術というか、色々混ぜてやってるんだけどね。さてこの後はどうするかなぁ。
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