異国の地で農業を始めました

序章

いざ国外へ！

私には食べたいものがある。でも、この国には多分、手に入れるのは困難で、私の生活圏にはまず売っていないだろう。
ウメは動画を見ながらため息をついた。動画ではおいしそうな料理の作り方が流れている。大根を使った煮物、サツマイモの大学芋、、筍ご飯、小松菜の胡麻和え、レンコンの味噌汁、白ご飯の上に乗った梅干し。
手際良く作られる料理たちはどれも美味しそうに湯気が立ち、視聴しているこちらも作ってみよう、食べてみたい、という気にさせてくる。

「でも近所や隣町では売ってないんだよな～、はぁ…」

アメリア大国。世界でも大きな経済力と軍事力を持ち、出稼ぎにやって来る人が多い国。世界の経済を引っ張っている国だ。
移民が集まれば独自の食生活が自然と入ってくる。そして自然とその地域には自国からの商品が立ち並ぶ店が出来て、自国に限りなく近い生活が出来る。

ウメが移民としてアメリア大国に来たのは約半年前の冬。経済状況が悪くなり、瑞穂国みずほこくでも海外へ出稼ぎへ行く人たちが増え始めた。
うめが長年勤めていた会社が経済悪化の影響で倒産。都会では一時的にでもコンビニやスーパーで働くことも出来たが、地方、そして更に田舎で暮らしていたうめの周りにで仕事を見つけることは大変難しかった。あったとしても給料がとても低い仕事ばかりであった。どうにかして生活が豊かになる仕事を見つけなくては、と思いウメはインターネットの求人を眺めていた。

「これは家から１時間、この職場はこの市から次の次の市で２時間半、良さそうな職場は全部隣の県だ…ガソリン代が掛かりすぎる。」

大きな独り言を呟きながら、下へ下へと求人のホームページを下げていく。

「ん？これは…」

『海外で農作業を行ってくれる方募集！庭付きの家、初任給から半年まで生活費補助！』

クリックしたら最後、沢山のウイルスソフトがダウンロードされ情報が抜き取られそうなクリック詐欺みたいな求人欄である。しかし初任給までは生活費補助、という言葉に釣られたうめは求人欄をクリックした。どうせ危ないサイトならウイルス感知ソフトや除去ソフトが警告してくれるだろうし、ものの試しで見てみよう。そういう軽い気持ちで見てみることにした。


ランドファーム

作業内容　農作物の播種はしゅ、管理、収穫（売れない野菜は無料で貰えます）
給料　　　時給17ダリア

田舎で一緒に農業をしてくれる方を募集中です。初心者でも1から丁寧に教えます。初任給から半年の間は州が生活費を補助してくれます。
山々に囲まれ、自然豊かな場所で一緒に農作業をしてくれる方を募集しております。体力があれば性別は問いません。
一緒に田舎のスローライフを楽しみませんか？

landfarm.e-mail.com
+0×××ー×××ー××××
820ウッドランド　カシードラル市　ミネタ州　アメリア大国　○○○○〇　

連絡先は瑞穂国農林課まで
no-rin.e-mail.mz
××ー×××ー××××

掲載期間2日前
閲覧数　10人


「えっ、国が関連してるの！？」

こんなにおいしい条件はそうそう見当たらない。生活費は半年補助してくれるし、実質半年間はタダ。給料はこちらと比べると2倍以上。しかも野菜はあまり買わなくても良い。
もしこの求人に受かればこの国では大金持ちになれる可能性もある。どの道、家の近くの求人は遠い所ばかり。

（ならもう、いっその事国外で働くのも有りなのでは？）

ウメに迷いはなかった。

「あ、あの、農林課でしょうか？ホームページに掲載している求人の件でお電話しました。」