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エルフのお婿さん

おっさんに部下が出来ました

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「────なるほど、そんなことがあったのか」

「……えぇ……そう……です……」

 良夫とジャックが感動の再会を果たし、熱い抱擁を(ジャックから一方的に)交わしてからおよそ一時間後。

 未だ放心状態にある良夫から、ジャックは途切れ途切れにではあるが、昨夜のことを聞き出していた。

(ヨシオさん……そんな状態になるまでエルフの長やその腹心と渡り合ったのか……さすがだ……)

 そしてその内容から、良夫の衰弱はレムやルルとの激しい連戦|(セックス)が原因だと推察し、ジャックは感嘆のため息を吐く。

 やはり良夫は、自分などとは比べものにならないほど優れた男性機能、そして揺るぎない信念と覚悟を持つ、男の中の男なのだと再認識したからだ。

「……ン……わい……ンチン……こわ……」

 だが、いくら良夫といえども、やはりエルフの長やその腹心との戦い(セックス)で得たダメージは大きかったのだろう。

 宙を彷徨さまようその瞳に光はなく、表情からは感情が抜け落ち、小さな声で何かをブツブツと呟き続けている。

「……っ」

 そんな良夫の姿を前にして、ジャックはまるで自らを罰するようにキツく唇を噛みしめた。

 先日良夫が『任せておけ、ジャック。エルフとのセックスは、お前の分も俺が引き受ける(美化200%)』と言ってくれたときから心に芽生えていた、『このままヨシオさんに頼ってしまいたい』というよこしまな気持ち。

 今の良夫の状態は、そんな自分の心の弱さが招いてしまったもののような気がしてならなかったからだ。

 実際には、ジャックがどのような抵抗をしようとも、良夫は連れ去られていただろう。
 
 しかし、問題はそこではない。

 良夫のことを本当に『友』だと思っていたのなら、たとえ敵わなかったとしても、ジャックは良夫の為に体を張るべきだった。

 命をかけてでも抵抗し、良夫に『あんたは一人で戦っているんじゃない、俺という仲間がいるんだ』という意思を示すべきだったのだ。

 そうすれば、例え実戦|(セックス)で役に立つことは出来なくても、決死の覚悟で前に進む(実際は縄でグルグル巻きにされ担ぎ上げられていた)良夫の、心の支えになることくらいは出来たかもしれない。

 なのにジャックは、『ヨシオさんなら大丈夫だ』という良夫に対する信頼を自分への言い訳にして、良夫のことを見捨ててしまったのだ。

「……いつから俺は、こんなに弱くなってしまったんだろうな」

 ジャックは、自嘲気味な呟きをポツリと漏らした。

 王国の騎士をやっていた頃には、王や仲間のために命を捨てる覚悟があった。

 色々あって冒険者になってからも、守るべき弱者の為に命がけの依頼をいくつもこなしてきた。

 だが今は、自分が良夫に『守られる』立場になってしまっている。

 それどころか、結果的には良夫をエルフに差し出すことで、自分だけが助かろうとしていたではないか。

「くそっ……!」

 自分に対する苛立ちを抑えきれず、ジャックは人小屋の壁を殴りつけた。

 確かに、良夫はジャックよりも男として数段優れた存在だろう。

 良夫もそれを自覚しているからこそ、ジャックを守るために体を張ってくれているのだろう。
 
 だが、だからといって、良夫の陰に隠れて自分だけが安穏としていていいわけがない。

 どれだけ超人的なチンポを持っていても。

 どれだけ強い心を持っていても。

 良夫とて神ではなく、自分と同じ人間なのだ。

 ジャックは、何かを決意したように表情を引き締めると、口を開いた。

「なあ、ヨシオさん。覚えているか? 俺が以前、出来ることなら何でも手伝うって言ったことを」

「……えぇ……はい……」

「だがおそらく、ヨシオさんは俺に何かを頼むつもりなどないだろう。違うか?」

「……えぇ……はい……」

「……ふっ、やはりな。あんたはそういう男だよ、ヨシオさん。強くて、温かくて、優しい……まさに英雄にふさわしい男だ。俺なんかよりもずっとな」

「……うぅ……チン……こわ……」

「だから、俺は決めたよ。ヨシオさんが俺に頼まなくても、俺が勝手にヨシオさんの為に働くことにする。
 エルフどもからもヨシオさんの身の回りの世話をするように言われているが、それとは関係なく、俺自身の意思でな」

「…………」

「これでも、炊事洗濯は得意なんだぜ。騎士団にいたって言っても、俺は平民からの叩き上げだからな」

「………………」

「……一度はあんたを見捨てた俺だ。信用してくれなんて都合のいいことは言わない。だが、もう一度だけ、チャンスをくれないか。
 あんたの下で、働かせてくれ。頼む、ヨシオさん……っ」

「……………………えぇ……はい……」

「……っ! あ、ありがとう、ヨシオさん! ありがとう……っ!」

 


 ────こうして、良夫が放心状態で適当な相づちを打っている間に、彼の新たな住処には、いつの間にやらイケメンマッチョな裸の家政夫が誕生したのであった。

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