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エルフのお婿さん

おっさんは呼び出しを食らいました

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 ────翌日。


「なるほど……では、エルフさんのお相手をするのは、だいたい三日に一度くらいなのですね?」

「ああ、そうだ。さすがに毎日エルフの相手をして生きていられる人間などいないことくらい、あいつらも理解しているからな。
 …………まあ、ヨシオさんは別かもしれないが」

「そんな、いくら私でも毎日は無理…………でも、ないかもしれませんね(一日三回の床オナが日課でしたし)」

「マジかよっ!?」

 朝食エサのグレープフルーツっぽい果物とキャベツっぽい植物、そして、また出てきた謎の緑色ゼリーを食べながら、良夫は同僚(家畜仲間)であるジャックとの会話に花を咲かせていた。

 昨日ジャックから格上認定された為、良夫がジャックに対して抱いていた苦手意識が薄らいで、ふたりの距離が縮まった結果だ。

「それにしても、この緑色のゼリーってなんなんですかね。あんまり美味しくない……というか、はっきり言ってマズイですけど」

 会話の流れで、良夫はずっと気になっていた苦くて青臭いゼリーのことをジャックに尋ねてみた。

 するとジャックは意外そうな顔で、

「ん、ヨシオさんは知らないのか? これは回春草フォーエバーヤングと呼ばれる薬草を煮詰めて、その汁を冷やして固めたものだ」

 と答えた。

「グフッ、フォ、回春草フォーエバーヤングですか?」

 あんまりな名前に、良夫は口にしたゼリーを吹き出しかけながらジャックに聞き返した。

「ああ、回春草は精力回復と勃起持続効果、そして催淫効果のある成分を含有する植物で……まあ、平たく言えば精力増強剤と媚薬の合わさったようなやつだな。
 だから、美味くないのも当然だ。こいつは食事というより、薬だからな」

 ジャックが苦々しげに、ゼリーを木のスプーンで突き崩しながら言う。

 おそらくこの回春ゼリーの効能によって、ジャックは自らが望んでいないにも関わらず、エルフとコトに及ぶ際には精力満タンの状態を維持させられてきたのだろう。
 
「妙に朝からムラムラするな、とは思ってたんですが、そのせいだったんですね。
 ……あれ? それになんだか、体も軽いような……?」

「ああ、それも回春草の効果だ。こいつは疲労回復効果も抜群でな、調合次第では優秀な回復薬ポーションにもなる。
 だから、何人もめかけを囲っているような貴族のエロジジイだけじゃなく、常に危険と隣り合わせの冒険者にとっても喉から手が出るほど欲しいものなんだが……残念なことに、この薬草はエルフの領域近くにしか生えていなくてな」

「…………もしかしてジャックは、これを取りに来て……?」

 ジャックの表情や言葉から後悔にも似たものを感じた良夫が尋ねてみると、ジャックは「……ああ」と頷いて、いつもの自嘲的な笑みを浮かべた。
 そして、

「気をつけていたつもりだったんだがな。気づけば、いつの間にかエルフに囲まれていた。
 もちろん俺も抵抗はしたんだが……ふっ、まるで手も足もでなかったよ。おかげでこのざまさ」
 
 言いながら、首についた鎖をガシャリと鳴らした。

「ジャック……」

 良夫は、いちおう同情的な声を出しておいた。

 良夫自身には一切不満などないので共感できないのだが、同僚(家畜仲間)との友好的な人間関係も、より良い職場(種付け牧場)環境を作るためには必要だと思ったからだ。

「いや、気にしないでくれヨシオさん。こいつは俺の自業自得ってやつだ。
 騎士団を辞めて、面倒なしがらみは全部捨てたつもりだったんだが、結局そうもいかなくてな。
 普段であれば、エルフの領域近くに自生する植物の採取なんて危険な依頼は引き受けないんだが、騎士団時代の同僚を通して現国王の正妃から依頼が……」
 
 と、良夫の演技を真に受けたジャックが、なにやら自分語りをし始めところで……


 ────バタンッ


「ヨシオという人間はいるかっ! むっ、そこのオーク似の人間、キサマだな? 長からの命により、今からキサマを連行するっ! おとなしくばくにつけいっ!」

「えっ、ちょっ」

「ヨ、ヨシオさんっ!? おいっ、ヨシオさんは昨日お前らの相手をしたばかりだろっ!」

 突然扉を開け放って現れたJDエルフにより良夫は縄でグルグル巻きにされ、ジャックの必死の抵抗も虚しく、牧場の外へと連れ去られてしまったのだった。
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