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エルフのお婿さん

おっさんはエルフの村に連れてこられました

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「とうちゃーく!」
「あー、重かった!」

 どざぁっ!

「アウチッ!」

 地面に放り出された良夫が声をあげる。

「あ、ごめん人間。つい獲物を狩ってきたノリで放り出しちゃった」

「ごめんね~」

「メンゴ」

「アウチッだって、ぷぷぷ、変な鳴き声」

 良夫に対する乱暴な扱いに、口々に謝罪を口にするエルフ少女たち。
 最後のは違うが。

「い、いえいえ、大丈夫ですよ。このとおりピンピンしてますから」

 舗装されてもいないむき出しの地面に放り出されたのだから、本当は小石とかが肌に突き刺さってかなり痛い。
 だが良夫は、気丈にも涙をこらえてそう答えた。
 
 エルフ少女たちに少しでもいいところを見せたい。
 その一心である。

「あたしおさに到着したって報告してくるね~」

「わたしはごはん食べてくる~」

「うちも~」

「わたしはこの人間をつついてる」

 だがエルフたちは良夫の男気おとこぎを華麗にスルー。
 
 相手にされなかった良夫の瞳からはキラリと一粒の涙がこぼれ落ち、乾いた地面へと吸い込まれていった。
 



 ◇


「────あの、私はこれからどうなるんでしょうか?」

 エルフ少女たちが散り散りに去っていってから数分後。
 良夫は出会った時から自分の腹肉にえらく興味を持っているエルフに尋ねた。

「ぷにぷに…………ん? それは、長が決めること。普通は勝手にわたしたちの領土に入り込んだ侵入者は、生きたまま皮を剥いだあと死刑だけど……」
「皮剥ぎっ!? 死刑っ!?」

 予想もしていなかった残虐行為に、良夫は驚愕の声を上げる。

「でも、おまえは人間のオスだから、死刑にはならないと思う」
 
 だが、続けて告げられた言葉に、ほっと安堵の息を吐いた。
 
「あ、あぁ……よかった。ん? 人間の『オス』だから、ですか?」
「そう、オスだから」
「…………」

 腹をぷにぷにとつつき続けるエルフ少女を眺めながら、良夫はその言葉の意味を考えた。
 オスだから……男だから、良夫は死刑にされない。

 それはつまり、エルフたちにとって『男』が必要な存在であるということだ。

 ならば、良夫が男として求められるものとは何だ?

 労働力?
 いや、エルフの少女たちは、外見的にはJC位にしか見えないものの、木の上から飛び降りてきたり良夫を担いで長い距離を歩いたりと、その身体能力は良夫を軽く凌駕している。
 
 メタボ腹の四十男など、ぱっと見で必要ないと分かるだろう。

 同じ理由で、戦力として期待されていないのも明白だ。

 良夫は体重や体積ならエルフ少女たちの何倍もあるだろうが、その9割は水とあぶらと優しさで出来ているのだから。
 
 ならば……ならば……

 良夫はエルフ少女の言葉から『ある結論』を導き出し、そして震えた。
 彼女たちになくて、自分にあるもの。

 それは────チンコしかないではないか。

「あの……もしかして、私が連れてこられた理由って……」

 良夫は期待に胸を膨らませながら、エルフ少女に訪ねようとした。
 だが、 

「長からの通達である! 人間のオスは、牧場に連行! なお、今回は特例として人間のオスを捕らえてきた若芽わかめ組に優先使用権を与えるものとする! 以上!」

 良夫の言葉は、突然現れたJKくらいに見える鎧を着たエルフによって中断させられた。

 JKエルフの言葉に、良夫の腹をつついていたJCエルフが「やたっ」と喜びの声を上げる。

「あの~、質問してもよろしいでしょうか?」
「ん、なに、人間。わたし、これからちょっと忙しいから、一つなら答えてあげる」

 ずっと腹をつついていたくせに忙しいも何もないだろう、と良夫は思ったが、大人な良夫はぐっと言葉を飲み込んで、JCエルフに質問を投げかけた。

「…………牧場って、何するところなんでしょう」
「牧場は、ナニするところ。それじゃ、わたしは準備してくるから、あとでね」

 ぼかされた。
 一つしか質問に答えてくれないくせに、肝心なその答えをぼかされた。

 名残惜しげに良夫の腹をぷにっと一つ突き、JCエルフが去っていく。

 良夫はその小柄な後ろ姿を眺めながら、『ナニするところ』の意味を悶々と妄想し続けるのだった。
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