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第三章
62話 これはいいものだ
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「ふ~っ、アンキモは体がでかいから、一匹をみんなで食べても結構お腹いっぱいになるな」
「おいしかった」
「キュアッキュ」
「俺はちょっと足りんな。あと、米が食いたい」
「それは言わない約束ですよ、ゴーダさん……」
アンキモ鍋を完食したチロたちは、満たされた腹をさすりながら(ゴーダだけはもの足りなさ気)仰向けに寝転がり、空を見上げていた。
穏やかな風が吹いており、雲の流れも緩やかだ。
このまま微睡みに身を任せて昼寝をしてしまうのも気持ちいいのだろうが、チロにはまだやることがある。
「……さて、じゃあコイツを煮てみるか」
体を起こしたチロは、中身だけ絞られてその辺に捨てられていたムンクさんを拾い上げると、付いた土を軽く払い落としてから皮を削ぎ落としていった。
「チロ、それ食べるの?」
興味を持ったのか、ヒナが寝そべったままコロコロと転がりながら近づいてくる。
「ん、中身だけ絞って捨てるのも、ムンクさんに悪いかなと思って」
「ふ~ん、やっぱり、チロは優しい」
「……これも、優しさに含まれるのかなぁ」
なんてことを話しながら、チロは皮を剥いていく。
そして剥き終えると、次は丸裸になったムンクさんを適当に刻んでいった。
ムンクさんは繊維質で、中に入っていたショーユにほとんどの水分を回しているのか、身の部分はザラっとしていてあまり水気がない。
「ほいっと」
ボチャボチャ
乱切りにしたムンクさんを、アンキモの出汁が染み出た汁に放り込み────
そのまま待つこと、約十分。
「どれ……」
茹で上がったムンクさんを、チロは箸でつまんで口の中に放り込んだ。
「もぐ、もぐ…………おぉ、これは」
ムンクさんの身はやや繊維質が強い感じはあるものの、辛味とわずかな甘味を含んだ独特の味わいだった。
決してまずくはない。
あえて何かに例えるならば、生姜に似ているだろうか。
「中は醤油っぽいなにかで、外は生姜っぽい何かとか、見た目のわりに有能すぎるだろムンクさん……まぁ、どっちも類似品だけど……」
「チロ、それ、おいしいの?」
ムンクさんの感想を呟いていたチロの言葉に反応し、ヒナが体を起こして尋ねてきた。
「おれは嫌いじゃないけど、好みは分かれるかもな。食べてみるか?」
「うん」
「じゃあ、はい。あーん」
「あ~ん……」
ヒナの口にもムンクさん────もといショーガを放り込む。
「キュアッ」
「お前もか、ほれ」
いつの間にかチロの頭に乗っていたキングも試食を要求してきたので、頭の上にも箸を持っていってやった。
「ゴーダさんは……あ、もう食べてる」
ゴーダはチロが勧めるまでもなく、すでに鍋から直接ショーガの煮物をひょいぱくと食べていた。
「どうだった」
「わたしは、あんまり好きじゃないかも……」
「キュアァ……」
ヒナとキングに感想を聞いてみるが、どうやらふたりの口には合わなかったようだ。
ただ、これはそれなりの大きさの塊を煮たものなので、薄切りにして臭み消しに使ってみたり、すりおろして肉に漬けて焼いてみたりすれば、その評価も変わってくるかもしれない。
そんなことを思いつつ、チロは最後にゴーダに視線を向けた。
「これは……酒だな。ビールじゃなくて酒が飲みたくなる味だ」
「それは言わない約束ですよ、ゴーダさん……」
その意見には全くもって同意であるが、米にしろ酒にしろ、この世界で手に入らないものを思い出させないで欲しい。
そう、心から思うチロであった。
「おいしかった」
「キュアッキュ」
「俺はちょっと足りんな。あと、米が食いたい」
「それは言わない約束ですよ、ゴーダさん……」
アンキモ鍋を完食したチロたちは、満たされた腹をさすりながら(ゴーダだけはもの足りなさ気)仰向けに寝転がり、空を見上げていた。
穏やかな風が吹いており、雲の流れも緩やかだ。
このまま微睡みに身を任せて昼寝をしてしまうのも気持ちいいのだろうが、チロにはまだやることがある。
「……さて、じゃあコイツを煮てみるか」
体を起こしたチロは、中身だけ絞られてその辺に捨てられていたムンクさんを拾い上げると、付いた土を軽く払い落としてから皮を削ぎ落としていった。
「チロ、それ食べるの?」
興味を持ったのか、ヒナが寝そべったままコロコロと転がりながら近づいてくる。
「ん、中身だけ絞って捨てるのも、ムンクさんに悪いかなと思って」
「ふ~ん、やっぱり、チロは優しい」
「……これも、優しさに含まれるのかなぁ」
なんてことを話しながら、チロは皮を剥いていく。
そして剥き終えると、次は丸裸になったムンクさんを適当に刻んでいった。
ムンクさんは繊維質で、中に入っていたショーユにほとんどの水分を回しているのか、身の部分はザラっとしていてあまり水気がない。
「ほいっと」
ボチャボチャ
乱切りにしたムンクさんを、アンキモの出汁が染み出た汁に放り込み────
そのまま待つこと、約十分。
「どれ……」
茹で上がったムンクさんを、チロは箸でつまんで口の中に放り込んだ。
「もぐ、もぐ…………おぉ、これは」
ムンクさんの身はやや繊維質が強い感じはあるものの、辛味とわずかな甘味を含んだ独特の味わいだった。
決してまずくはない。
あえて何かに例えるならば、生姜に似ているだろうか。
「中は醤油っぽいなにかで、外は生姜っぽい何かとか、見た目のわりに有能すぎるだろムンクさん……まぁ、どっちも類似品だけど……」
「チロ、それ、おいしいの?」
ムンクさんの感想を呟いていたチロの言葉に反応し、ヒナが体を起こして尋ねてきた。
「おれは嫌いじゃないけど、好みは分かれるかもな。食べてみるか?」
「うん」
「じゃあ、はい。あーん」
「あ~ん……」
ヒナの口にもムンクさん────もといショーガを放り込む。
「キュアッ」
「お前もか、ほれ」
いつの間にかチロの頭に乗っていたキングも試食を要求してきたので、頭の上にも箸を持っていってやった。
「ゴーダさんは……あ、もう食べてる」
ゴーダはチロが勧めるまでもなく、すでに鍋から直接ショーガの煮物をひょいぱくと食べていた。
「どうだった」
「わたしは、あんまり好きじゃないかも……」
「キュアァ……」
ヒナとキングに感想を聞いてみるが、どうやらふたりの口には合わなかったようだ。
ただ、これはそれなりの大きさの塊を煮たものなので、薄切りにして臭み消しに使ってみたり、すりおろして肉に漬けて焼いてみたりすれば、その評価も変わってくるかもしれない。
そんなことを思いつつ、チロは最後にゴーダに視線を向けた。
「これは……酒だな。ビールじゃなくて酒が飲みたくなる味だ」
「それは言わない約束ですよ、ゴーダさん……」
その意見には全くもって同意であるが、米にしろ酒にしろ、この世界で手に入らないものを思い出させないで欲しい。
そう、心から思うチロであった。
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ちょっとずつ食べる物がおいしそうになっていくのが応援したくなります。
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三弦さん、感想ありがとうございます。
私自身もどちらかといえば前世のチロ的な性分の人間なので、死んで生まれ変わる前に『変わらねば』と鋭意努力中です。
ちょこちょこ更新したり、前に書いたものを修正したりしていく予定ですので、今後ともどうかよろしくお願いいたいします。