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第二章
42話 みんなでご飯
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「────うまいっ!」
剛田が、角ウサギの丸焼きを豪快に齧りながら、そう叫んだ。
「すごく、おいしい……っ」
ヒナもまた、小さく切り分けた角ウサギの肉をもぐもぐと噛み締めながら、目を輝かせてて喜んでいる。
「キュアッ! キュアァッ!」
そしてキングも、ようやくありつけた食事に、喜びの声を上げていた。
「うん、うまい」
三人の反応に満足しながら、チロもむしゃむしゃと肉を頬張る。
角ウサギの肉はやはりうまいが、今日の味は格別だった。
とくに味付けや調理法を変えたわけではない。
いつもと同じように、焼いて塩を振っただけだ。
それなのにいつもよりもうまく感じるのは、やはり大人数で食事をしているからだろう。
(自分が作ったものを美味しいって言ってもらえるのって、こんなに嬉しいんだな……)
剛田や、ヒナの笑顔が(キングの表情は変わらないので除外)チロに料理を作る喜びを教えてくれた。
そしてその喜びが、食事の時間を何倍も楽しくさせてくれていた。
「しかし、このでかい水晶みたいのが、全部塩だとはなぁ…………」
「驚いたでしょ。俺も最初はただのインテリアだとしか思ってなかったんですけど、舐めてびっくりですよ」
「塩って、すごいんだね、おいしいんだね」
「あっ、ヒナ、これも食べてみなよ。シトラ草って言うんだけど、さっぱりした甘みがあってうまいんだ」
「たべるっ…………もぐもぐ…………あま、うま………」
「あっ、いいな。俺にもくれ」
「キュアァッ」
「はいはい、ふたりともどうぞ」
会話も弾み、和気あいあいと食事は進んでいった。
そして、食べ終えた頃には全員が微笑みを浮かべ、満足げな息を吐いていた。
「ふ~っ、食った食った。こんなにうまいもの食ったのは、こっちに来てから初めてだな」
「……むふ~、ちょっと、食べすぎた」
「キュアッフ」
「水飲みますか? 口の中の脂が、ちょっとはすっきりしますよ」
「おう、くれ」
「のむ」
「キュア」
チロは制土で湯呑を三つと皿を一枚つくり、湧水を汲んで渡した。
「うまっ! なんだここ、塩があるだけじゃなく水もうまいのか!」
「水、おいしい」
剛田とヒナが、水のうまさに驚きの声を上げる。
「あれ、先輩って、浄水スキル持ってないんですか?」
そうだとしたら、これまで大変だったろうな、と思ってチロは聞いたのだが、
「浄水? スキル? なんだそれ」
「え?」
剛田から返ってきたのは、スキルそのものに対する疑問だった。
「まさか先輩…………自分のステータス見てないんですか?」
「ステータス? …………ステータスって、なんだ?」
どうやら剛田は、そもそもステータスの存在すら、知らないようだった。
剛田が、角ウサギの丸焼きを豪快に齧りながら、そう叫んだ。
「すごく、おいしい……っ」
ヒナもまた、小さく切り分けた角ウサギの肉をもぐもぐと噛み締めながら、目を輝かせてて喜んでいる。
「キュアッ! キュアァッ!」
そしてキングも、ようやくありつけた食事に、喜びの声を上げていた。
「うん、うまい」
三人の反応に満足しながら、チロもむしゃむしゃと肉を頬張る。
角ウサギの肉はやはりうまいが、今日の味は格別だった。
とくに味付けや調理法を変えたわけではない。
いつもと同じように、焼いて塩を振っただけだ。
それなのにいつもよりもうまく感じるのは、やはり大人数で食事をしているからだろう。
(自分が作ったものを美味しいって言ってもらえるのって、こんなに嬉しいんだな……)
剛田や、ヒナの笑顔が(キングの表情は変わらないので除外)チロに料理を作る喜びを教えてくれた。
そしてその喜びが、食事の時間を何倍も楽しくさせてくれていた。
「しかし、このでかい水晶みたいのが、全部塩だとはなぁ…………」
「驚いたでしょ。俺も最初はただのインテリアだとしか思ってなかったんですけど、舐めてびっくりですよ」
「塩って、すごいんだね、おいしいんだね」
「あっ、ヒナ、これも食べてみなよ。シトラ草って言うんだけど、さっぱりした甘みがあってうまいんだ」
「たべるっ…………もぐもぐ…………あま、うま………」
「あっ、いいな。俺にもくれ」
「キュアァッ」
「はいはい、ふたりともどうぞ」
会話も弾み、和気あいあいと食事は進んでいった。
そして、食べ終えた頃には全員が微笑みを浮かべ、満足げな息を吐いていた。
「ふ~っ、食った食った。こんなにうまいもの食ったのは、こっちに来てから初めてだな」
「……むふ~、ちょっと、食べすぎた」
「キュアッフ」
「水飲みますか? 口の中の脂が、ちょっとはすっきりしますよ」
「おう、くれ」
「のむ」
「キュア」
チロは制土で湯呑を三つと皿を一枚つくり、湧水を汲んで渡した。
「うまっ! なんだここ、塩があるだけじゃなく水もうまいのか!」
「水、おいしい」
剛田とヒナが、水のうまさに驚きの声を上げる。
「あれ、先輩って、浄水スキル持ってないんですか?」
そうだとしたら、これまで大変だったろうな、と思ってチロは聞いたのだが、
「浄水? スキル? なんだそれ」
「え?」
剛田から返ってきたのは、スキルそのものに対する疑問だった。
「まさか先輩…………自分のステータス見てないんですか?」
「ステータス? …………ステータスって、なんだ?」
どうやら剛田は、そもそもステータスの存在すら、知らないようだった。
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