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第二章
25話 迷惑な同居者
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「キュアァ、キュアァ」
「…………」
金色トカゲを見逃してから数日後。
なぜか金色トカゲは、そのまま洞窟に住み着いてしまっていた。
「キュアァ、キュアァ」
「…………」
しかも、朝昼晩と三食きっちり食事をねだる始末である。
チロは無言でシトラ草の葉を摘み取ると、皿の上に乗せて金色トカゲの前に置いた。
「キシャァ、キシャァ」
「…………」
怒られた。
塩をかけろと言っているのである。
金色トカゲは、厄介なことにグルメな舌を持っているのだ。
サツマイモを生で出しては怒られ。
ヒルヒルの炙り焼きを出してみたら皿をひっくり返され。
試しに焼きドリンギを出してみたら手を噛まれた。
そして最終的には、サツマイモの塩ステーキと、シトラ草の塩がけしか食べなくなったのだ。
まったくもって贅沢なトカゲである。
おかげでチロはシトラ草の消費を気にして、ドリンギを多めに食べて腹を満たす生活に逆戻りしなければならなくなった。
「なぁお前、その体格だとまだ子供だろ? いいかげん親のところに戻ったらどうだ?」
「(ぷいす)」
「…………」
何度か出て行くよう説得を試みてはみたが、その効果はまるでなかった。
むしろ最近では、夜になるとチロの腹をベッド替わりにして寝る始末である。
「はぁ…………」
ため息をつき、チロも自分の食事を取ることにした。
今日のメニューはドリンギとサツマイモを串に刺した塩焼き、そしてシトラ草の塩がけ(ごく少量)だ。
「そろそろ、このメニューにもなにか変化が欲しいところだな」
「キュアァ」
固定化しているメニューに飽きたチロがそう呟くと、金色トカゲが同調するような鳴き声を上げた。
どこまでも厚かましいやつである。
「お前もさぁ、異世界の生き物なんだろ? 無駄にキラッキラして色だけはレアモンスターっぽいけど、なんか特殊能力とかないのか? 狩りに役立つようなやつとかさ」
ムシャムシャと串焼きを頬張りながらチロが尋ねると、
「(キランッ)」
金色トカゲは、得意げに瞳を光らせた。
もちろん、なんの効果もない。
「…………はぁっ」
もう一度、ため息を吐き、チロは腰を上げた。
今日は食材を探すため、洞窟の外に探索に出なければならない。
洞窟には豊富な塩があるが、それだけでは生きていけないし、泉の周りの植物を根こそぎ食べてしまう訳にもいかないからだ。
ドリンギの備蓄はそれなりにあるが、食べられるのは『毒耐性』スキルをもつチロだけ。
金色トカゲはなんの貢献もしてくれない厄介者ではあるが、何日も一緒に過ごして情が湧いてしまっているので、自分だけ腹いっぱい食べるのも気が引ける。
それはつまり、金色トカゲの分まで、チロが食料を確保しなければならないということだった。
「前世でもペットなんて飼ったことなかったのに、まさか異世界でペットを……しかも犬猫すっとばして、金色のトカゲを飼うことになるなんてなぁ……」
そうボヤきながらも、独りきりではなくなった洞窟の生活を、内心では少し喜んでいる部分もあるチロであった。
「…………」
金色トカゲを見逃してから数日後。
なぜか金色トカゲは、そのまま洞窟に住み着いてしまっていた。
「キュアァ、キュアァ」
「…………」
しかも、朝昼晩と三食きっちり食事をねだる始末である。
チロは無言でシトラ草の葉を摘み取ると、皿の上に乗せて金色トカゲの前に置いた。
「キシャァ、キシャァ」
「…………」
怒られた。
塩をかけろと言っているのである。
金色トカゲは、厄介なことにグルメな舌を持っているのだ。
サツマイモを生で出しては怒られ。
ヒルヒルの炙り焼きを出してみたら皿をひっくり返され。
試しに焼きドリンギを出してみたら手を噛まれた。
そして最終的には、サツマイモの塩ステーキと、シトラ草の塩がけしか食べなくなったのだ。
まったくもって贅沢なトカゲである。
おかげでチロはシトラ草の消費を気にして、ドリンギを多めに食べて腹を満たす生活に逆戻りしなければならなくなった。
「なぁお前、その体格だとまだ子供だろ? いいかげん親のところに戻ったらどうだ?」
「(ぷいす)」
「…………」
何度か出て行くよう説得を試みてはみたが、その効果はまるでなかった。
むしろ最近では、夜になるとチロの腹をベッド替わりにして寝る始末である。
「はぁ…………」
ため息をつき、チロも自分の食事を取ることにした。
今日のメニューはドリンギとサツマイモを串に刺した塩焼き、そしてシトラ草の塩がけ(ごく少量)だ。
「そろそろ、このメニューにもなにか変化が欲しいところだな」
「キュアァ」
固定化しているメニューに飽きたチロがそう呟くと、金色トカゲが同調するような鳴き声を上げた。
どこまでも厚かましいやつである。
「お前もさぁ、異世界の生き物なんだろ? 無駄にキラッキラして色だけはレアモンスターっぽいけど、なんか特殊能力とかないのか? 狩りに役立つようなやつとかさ」
ムシャムシャと串焼きを頬張りながらチロが尋ねると、
「(キランッ)」
金色トカゲは、得意げに瞳を光らせた。
もちろん、なんの効果もない。
「…………はぁっ」
もう一度、ため息を吐き、チロは腰を上げた。
今日は食材を探すため、洞窟の外に探索に出なければならない。
洞窟には豊富な塩があるが、それだけでは生きていけないし、泉の周りの植物を根こそぎ食べてしまう訳にもいかないからだ。
ドリンギの備蓄はそれなりにあるが、食べられるのは『毒耐性』スキルをもつチロだけ。
金色トカゲはなんの貢献もしてくれない厄介者ではあるが、何日も一緒に過ごして情が湧いてしまっているので、自分だけ腹いっぱい食べるのも気が引ける。
それはつまり、金色トカゲの分まで、チロが食料を確保しなければならないということだった。
「前世でもペットなんて飼ったことなかったのに、まさか異世界でペットを……しかも犬猫すっとばして、金色のトカゲを飼うことになるなんてなぁ……」
そうボヤきながらも、独りきりではなくなった洞窟の生活を、内心では少し喜んでいる部分もあるチロであった。
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