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異世界の勇者
第十七話、新たなる標的
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その日、ユウはギルドからの依頼をこなした後、家で待つ二人へのお土産に何か買って帰ろうと市場に寄っていた。
ドーマ王国の交易拠点であるベリアの市場には、食料品だけではなく、異国の珍しい生活雑貨や衣服、装飾品、愛玩用の動物など、ありとあらゆるものが揃っている。
(この前メイには、細部までよく見える魔法のメガネを買ってあげたし(鏡に写しながらプレイするとき用)、スーにはユニコーンの角を削って作った置物を買ってあげたんだったな(現在アナルを拡張中)。
さて、今日は何を────)
などと卑猥なことを考えつつ、ユウが露店をチラ見しながら歩いていると、
「あの、もしかして冒険者のナイト様ではありませんか?」
そんなユウに、声をかけてきた女性がいた。
「ん?」
ユウが振り返り、女性に視線を合わせる。
そこに立っていたのは、腰まである長い金色の髪に整った顔立ち、そしてモデルのようにスレンダーな体型をした美しい女性だった。
「私スワンといいます。以前からナイト様にお声をお掛けしようと思っていたのですが、なかなか勇気が湧かなくて……あの、もしよろしければ、これから少しだけ私にお付き合いいただけませんか?」
スワンと名乗ったその女性は、顔を赤らめながらも笑顔でそんなことを聞いてきた。
それに対しユウは────
「いえ、お断りします」
端的にそう答えると、すぐに視線を露店の商品に戻した。
そして商品にめぼしいものがないと分かると、振り返ることもなくその場を後にするのだった。
◇
その後────
「ねぇ、お兄ちゃん♡ わたしと遊んでよぉ♡」
そう言いながらまとわり付いてくる少女を無視し、
「あの、助けていただいてありがとうございます。わたくしの家がすぐ近くにありますので……」
暴漢に襲われていたところを助けた胸の大きな女性の誘いを断り、
「ナ、ナイト様? あの、少しでいいのでお話を……」
もう一度現れたモデル体型の女性を華麗にスルーしながら、ユウはウィンドウショッピングを続けていた。
…………もちろん、ユウには全て分かっているのだ。
彼女たちが、王国から派遣された暗部の一員であるということが。
なぜかと理由を言ってしまえば身も蓋もないのだが、ユウには相手の心を読むことができる〈念話〉のスキルがあるからである。
つまり彼女たちの思惑も、作戦の全貌も、ユウに接触したその瞬間から全てバレていたということなのだ。
だからユウは、今この瞬間にもメイたちを残してきた館が襲撃されていることを知っている。
知っていて、それでもなお戻ろうとしないのには、理由があった。
それは────
(……クロウちゃん、か)
ユウを遠巻きに尾行しているもうひとりの人物、クロウの存在だ。
半径数キロにも及ぶ〈索敵〉能力を持つユウに対し、少々距離を開けた程度の尾行など意味を成さない。
そして〈念話〉〈索敵〉〈遠視〉の能力を複合的に使用することでクロウの姿を確認した瞬間、ユウは決めたのである。
────自分好みの外見と内面を持つクロウも、ハーレムの一員に加えてしまおうと。
(さて、それじゃあそろそろ、クロウちゃんをいただきに行こうかな)
ユウはその秀麗な顔にうっすらと笑みを浮かべると、自分の後をつけているクロウを誘い込むべく、薄暗い路地へと入り込んでいくのだった。
…………ちなみに、ユウがメイたちを助けに戻らないのは、もちろんクロウを手に入れたいという理由からだけではない。
屋敷にはすでに完璧な対策が成されているため、戻る必要がないからだ。
ユウはどんな手段を取ろうとも、手に入れた女性は守りぬくと決めているのである。
例えそれが、遠く離れた故郷にいる相手だったとしても…………
ドーマ王国の交易拠点であるベリアの市場には、食料品だけではなく、異国の珍しい生活雑貨や衣服、装飾品、愛玩用の動物など、ありとあらゆるものが揃っている。
(この前メイには、細部までよく見える魔法のメガネを買ってあげたし(鏡に写しながらプレイするとき用)、スーにはユニコーンの角を削って作った置物を買ってあげたんだったな(現在アナルを拡張中)。
さて、今日は何を────)
などと卑猥なことを考えつつ、ユウが露店をチラ見しながら歩いていると、
「あの、もしかして冒険者のナイト様ではありませんか?」
そんなユウに、声をかけてきた女性がいた。
「ん?」
ユウが振り返り、女性に視線を合わせる。
そこに立っていたのは、腰まである長い金色の髪に整った顔立ち、そしてモデルのようにスレンダーな体型をした美しい女性だった。
「私スワンといいます。以前からナイト様にお声をお掛けしようと思っていたのですが、なかなか勇気が湧かなくて……あの、もしよろしければ、これから少しだけ私にお付き合いいただけませんか?」
スワンと名乗ったその女性は、顔を赤らめながらも笑顔でそんなことを聞いてきた。
それに対しユウは────
「いえ、お断りします」
端的にそう答えると、すぐに視線を露店の商品に戻した。
そして商品にめぼしいものがないと分かると、振り返ることもなくその場を後にするのだった。
◇
その後────
「ねぇ、お兄ちゃん♡ わたしと遊んでよぉ♡」
そう言いながらまとわり付いてくる少女を無視し、
「あの、助けていただいてありがとうございます。わたくしの家がすぐ近くにありますので……」
暴漢に襲われていたところを助けた胸の大きな女性の誘いを断り、
「ナ、ナイト様? あの、少しでいいのでお話を……」
もう一度現れたモデル体型の女性を華麗にスルーしながら、ユウはウィンドウショッピングを続けていた。
…………もちろん、ユウには全て分かっているのだ。
彼女たちが、王国から派遣された暗部の一員であるということが。
なぜかと理由を言ってしまえば身も蓋もないのだが、ユウには相手の心を読むことができる〈念話〉のスキルがあるからである。
つまり彼女たちの思惑も、作戦の全貌も、ユウに接触したその瞬間から全てバレていたということなのだ。
だからユウは、今この瞬間にもメイたちを残してきた館が襲撃されていることを知っている。
知っていて、それでもなお戻ろうとしないのには、理由があった。
それは────
(……クロウちゃん、か)
ユウを遠巻きに尾行しているもうひとりの人物、クロウの存在だ。
半径数キロにも及ぶ〈索敵〉能力を持つユウに対し、少々距離を開けた程度の尾行など意味を成さない。
そして〈念話〉〈索敵〉〈遠視〉の能力を複合的に使用することでクロウの姿を確認した瞬間、ユウは決めたのである。
────自分好みの外見と内面を持つクロウも、ハーレムの一員に加えてしまおうと。
(さて、それじゃあそろそろ、クロウちゃんをいただきに行こうかな)
ユウはその秀麗な顔にうっすらと笑みを浮かべると、自分の後をつけているクロウを誘い込むべく、薄暗い路地へと入り込んでいくのだった。
…………ちなみに、ユウがメイたちを助けに戻らないのは、もちろんクロウを手に入れたいという理由からだけではない。
屋敷にはすでに完璧な対策が成されているため、戻る必要がないからだ。
ユウはどんな手段を取ろうとも、手に入れた女性は守りぬくと決めているのである。
例えそれが、遠く離れた故郷にいる相手だったとしても…………
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