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異世界の勇者

第五話、エーギル十三世

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「むぅぅ…………っ」

 エーギル王国の国王であるエーギル13世は、自室のベッドに横たわりながら唸り声を上げていた。

 その理由は、あえて語るまでもない。
 つい昨日王座の前から消え去った、異世界の勇者『ユウ』に対する怒りからくるものだった。

「あの若造め、このわしに恥をかかせおって…………!」

 本当であれば、娘のコーネリアを娶らせることでこの国に繋ぎ留め、その功績と武力をエーギル王国のものとして役立てるつもりだったのだ。

 それが、娘のことを「好みではない」と侮辱したばかりか、いなくなったところでそれほど文句も言えないような少女をひとり連れ去るだけで姿を消してしまった。
 
 国内の各街には勇者を発見次第報告を上げるよう通達をしているが、未だ何の連絡もない。

 おそらく、もう王国の領土外に出てしまっているのだろう。

 それは、非常に由々しき事態だった。

 勇者の存在は、たった一人で国家間のバランスを崩しかねないほど強大なものだ。

 もし勇者が他の国に定住し、その国のために力を使おうと決意したならば、場合によってはエーギル王国の存亡にも関わりかねない。

「クソッ!」

 悪態をつき、エーギル13世は視線を自分の下半身に向けた。

「ええい! もっと気合を入れてしゃぶらんか!」
「んむっ…………ぷはっ、申し訳ありません、国王様…………」

 エーギル13世のチンポをしゃぶっていたメイド────メイにヤリマンと評されていた先輩メイドのマリスがフェラを中断し、王に謝罪をする。

「ふんっ、もう良い。跨がれ」
「あの…………でもまだ…………」

 命令され、マリスが戸惑いの言葉を上げる。
 
 エーギル13世のチンポが、マリスが二十分以上もしゃぶり続けているにも関わらず、まだふにゃふにゃのままだったからだ。
 
 これも、勇者に与えられたストレスが原因だった。

 昨日を境に、王のチンポはどんなに刺激を与えられてもピクリとも反応しなくなってしまったのだ。

「股を擦りつけろと言っておるのだ! 中に入れろとは言っておらん!」

 自分のEDを棚に上げて、逆ギレするエーギル13世。

「も、申し訳ございません!」

 しかしマリスは素直に謝罪すると、横たわるエーギル13世の上に腰を下ろし、王だけでなく色んな男に散々さんざん使い込まれた中古マンコを擦りつけていった。

 にゅちっ、にゅちっと、マリスの愛液が王のフニャチンに塗りこまれていく。
 
 それでもやはり一向に反応しない愚息に苛立ちながら、エーギル13世は考える。

 どうすれば勇者を見つけることができるのか、そして、どうすれば勇者を懐柔することができるのか。

 そして差し当たって調べるべきは、勇者がなぜあのパッとしないメイドを連れて行ったか、ということだろうと思い至った。

「おい、勇者とともに消えたあのメイド…………名前は何といったか」

 懸命に腰を振るマリスに、王が尋ねた。

「んっ、んっ、勇者様と消えたメイド…………ああ、メイのことでございますか?」

 王の上で下半身をグラインドさせながら、マリスが答える。

「メイ…………メイか。そのメイに、何か変わったこと…………他のメイド達と違うようなことはなかったか?」
「んっ、んっ、メイに、でございますか? …………そうですね、メイドの中で一番地味な容姿をしているということと、あとは一度も国王様の夜伽に呼ばれたことがないこと、くらいでしょうか」
「夜伽に呼んだことがない…………?」

 言われて、エーギル13世は思い返してみる。

 今でこそEDなエーギル13世だが、もともとは並外れて性欲が強い男だ。
 この王城に不必要なほどメイドが多いのも、王が自らの性欲処理の為に集めたからだった。

 だが、今まで抱いてきた無数の女たちの中に、確かにあの地味なメイドは含まれていなかった気がする。

(わざわざ容姿の優れていない娘を連れ出す理由があるとすれば、わしの手つきではない────わしと関わりのない者だったからか?)

 そう考えれば、絶世の美女である娘のコーネリアを、『好みではない』などいう明らかに嘘だと分かる理屈で遠ざけたのにも納得がいった。

 それはつまり、『エーギル13世個人との関係を深めるつもりはない』という意思表示に他ならない。

(わしの思惑は全てお見通しというわけか? クソっさかしらなやつだ!)

 おそらく勇者は、エーギル十三世が自分を利用しようとしていることに気づいたのだろう。

 そして『僕はあなたの考えなど全部お見通しですよ』ということを暗に伝えるため、あの場で最もエーギル十三世と関わりの薄い者を連れ去ったのだ。

(だが、この国と完全に絶縁するつもりなら、わざわざ美人でもない女を連れ去る必要などなはず。
 あやつ一人でどこへでも消えればそれで済む話だ。ならば…………ならば勇者は何をしようとしている? …………っ!? まさか!)

 自分が勇者だったなら、あの娘をどう利用するか。
 その考えを突き詰めていったエーギル13世は、最悪の結論に達してしまった。

(この国を…………わしの国を乗っ取るつもりか!?)

 王の手つきではないメイドを連れ去った…………いや、連れ去ることが出来たということはつまり、勇者はそれだけ王の周辺について調べ上げたということだ。

 そしてそれは、ここにいるメイドの大半が王の命令によって強引に集められ、望まぬ性行為を強いられている少女たちなのだと知られてしまった、ということでもある。

 もしメイがそれを証言すれば、勇者は『非道な王によって虐げられている少女たちを救うため』という正義の旗のもとに、この国を攻める大義名分を得てしまう。

「ぬうぅっ! させん! そんなことはさせんぞ!」
「きゃっ!」

 王が突然の怒声とともに立ち上がり、上に乗っていたマリスが転がり落ちる。

 だが、無様に大股を開いた格好のマリスを気に止めることなく、エーギル13世はさらに大声を上げた。

「オウル! オウルはいるか!」
「…………はっ、ここに」

 呼び声に応え、どこからともなく現れた黒装束の男が王の前に膝をついた。
 
「オウル! 暗部の総力を持って勇者を探し出せ! そして勇者と共にいる女────メイをなんとしても殺すのだ!」

 オウルと呼ばれた男────エーギル王国の汚れ仕事や諜報を引き受ける『暗部』の長は、「…………はっ」とだけ短く答えると、現れた時と同じようにどこへともなく姿を消した。

「勇者…………っ、貴様の思い通りになどさせるものか。このエーギル13世を敵に回したこと、必ず後悔させてくれる! ふふ……ふはは……はぁーっはっはっはっはっは…………!」

 勇者の策謀を見事に見抜いた(と思っている)王が哄笑をあげた。

 しかし、その勝ち誇った態度とは裏腹に、エーギル13世の股間は力を失って項垂れたままなのであった。
 
 
 
 
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