どこまでも醜い私は、ある日黒髪の少年を手に入れた

布施鉱平

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第三章

彼女たちと少年(アレックス)2

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 ────そして数日後。

 アレックスは、朝からそわそわと気もそぞろであった。

 普段であれば、大好きな少年に思い切り甘えられるという喜びしかないのだが、今日ばかりはそれを上回るほどの戸惑いに心が支配されている。

「うぅぅ……」

 低い唸りを漏らし、アレックスは部屋の中を意味もなくうろうろと彷徨うろつき回った。

 性的な知識が皆無であったアレックスにとって、数日前に知った『排泄する器官アナルでも性行為セックスする』という事実はかなりショッキングな内容であり、それを今も引きずっているのだ。

 少年とセックスする時に、その部分を舐められたり、指で触れられたりしたことは確かにある。
 しかしそれは、あくまでも入り口付近を軽く愛撫されただけにすぎない。
  
 内側にまで指や舌を入れられたりしたことなど無いし、ましてやそこ・・にチンポが挿入されるなど、考えたこともなかった。

 なんなら今でも『また、ルナに騙されたのではないか』という疑念が完全には消え去ってはいないくらいなのだが、真面目なリディアや、自分より遥かに頭のいいミゼルにまでその話を肯定されては、どれだけ疑わしく思っていても認めざるを得なかった。

「う、うぅぅ…………」

 そして結局、覚悟は決まらぬままに、今日という日が来てしまったのだ。

 尻尾を力なく地面に垂らしながら、アレックスは部屋を出る。

 気づけば、もう前日の担当者であるルナが少年をリビングに連れてくる時間になってしまっていた。

 今日は自分が少年の世話係なのだから、嬉しいことは嬉しい。
 ものすごく嬉しい。

 しかし、どのような顔をして少年に会えばいいのか、アレックスには分からなかった。

 ルナに「やってやる」と宣言してしまった以上、夜にはあの天使のような少年に、アナルセックスなどという変態的な行為をおねだりしなければならないのだ。



 ◇

 
「……くるるるるるっ♡」
「□△&#$」

 リビングに、アレックスの甘える声と、少年の包み込むような優しい声が響く。

 時刻は昼食後の昼下がり。
 天窓から降り注ぐ暖かい日差しを浴びながら、アレックスは少年の膝の上に頭を乗せ、幸せそうな顔で喉を鳴らしていた。

 そこに、朝のような戸惑いや恥じらいは微塵みじんも感じられない。

 ただただ、自分の全てを受け入れてくれる『優しい父親』のような少年に全てをゆだね切った、ひとりの少女退行した女ファザコンが存在するだけだった。
 
「やはり、あれはあれでうらやましいな」
「そうねぇ」
「……ずるい」
「普段は勇ましいアレックスさんが、まるで子猫のようですね」

 リビングにいた他の四人が、その光景に羨ましそうな視線を向ける。
 
 本来であれば、この時間は『教育の時間』だ。
 料理や文字、絵画や歴史など、それぞれに自分の得意とすることを少年に教えつつ、その役得としていちゃいちゃする時間なのである。

 だが、アレックスはどう見ても少年に何かを教えているようには見えない。
 ただ少年に甘え、甘やかされ、いちゃいちゃしているだけだ。

「…………だがまあ、こうでもしないと不公平だからな」

 ふぅ、とリディアが小さく息を吐きながら、幸せそうな顔で喉を鳴らし続けるアレックスを見つめた。

 これは、アレックスが教育係をサボっている────という訳ではないのだ。

 はぐれ者たちマーヴェリックスの全員が集まり、今後の方針を決め、それぞれ少年に何を教えるかという話し合いになった際。
 
 リディアは料理、ミゼルは文字、ルナは日替わりで色々なこと、マリアベルは歴史の紙芝居と、自分の得意分野があるだけに、アレックスを除いた四人は、特に時間もかからずに教えることがすぐに決まった。

 しかし、生粋の戦士であり、戦闘能力だけ・・に特化したアレックスには、少年に教えられるような特技がなにもなかったのである。 

 当番制であった食事係ですら、肉を焼いて塩を振ることくらいしかできないため、最近になってから免除されたアレックスなのだ。(少年の健康状態を考慮した結果そうなった)

 その不器用さは、最も長い時間をともに過ごしたルナの折り紙つきであり、どれだけ時間をかけて話し合おうと、結局『アレックスが少年に教えられることは何一つとしてない』という結論に帰着せざるを得なかった。

 だが、教えることがないからといって、アレックスだけ順番を飛ばす、などということはできない。
 五人はもう家族であり、全員が平等に少年の妻なのだから。

 なので、

「くるるるるるるっ♡」

 こうなったのである。

 アレックスが教育係の代わりとして割り当てられたのは、いわゆる『休憩時間』だった。

 少年のスケジュールは実際それなりに多忙で、週七日のうち五日間は家事手伝いをしつつ誰かの教育を受け、さらに夜は日替わりでその日の世話係とねやを共にしている。

 残り二日は五人が平等に少年を愛でる日であるが、教育の時間がない分、日も高いうちから誰かといい雰囲気になってに及んだり、時には複数人同時に相手をすることも珍しくはなかった。

 もちろんこれはリディアたちが強制していることではなく、少年の自主的な行動の結果なのだが、結局のところ、休みと言えるような休みを少年はとっていないのである。
 
 そのため、『日々頑張ってくれている少年を癒す』────という強引な理由のこじつけによって、なんとかアレックスは少年との時間を確保したのだ。

 当初はアレックスのように大柄な獣人がじゃれついたところで、はたして少年の癒しになるのか? という当然の疑問も浮かび上がったこの『休憩時間』であるが、実際にやってみると、不思議なくらいに少年はアレックスのことを可愛がり、そして少年自身も癒されているように見えた。

 未だに謎多き少年の、更なる謎な一面である。

「くるるるるっ♡ くるるるるっ♡ なぉう♡ にゃぁん♡」

 少年を癒し、少年に癒され、仲間たちに生暖かい目で見守られながら、アレックスの至福の時間は過ぎていく。



 ────その先に待っているものを、完全に忘れたまま。



 ◇

  
 そして、夜が来た。

 昼間は少年に甘えまくっていたおかげで、何もかも忘却の彼方に置き去っていたアレックスも、さすがにこの時間が来れば全てを思い出していた。
 
 これから、自分が少年になにをおねだりしなければならないのか。
 そして、それが叶えられた場合、自分は少年とどういう行為・・をすることになるのか、ということを。

「あ、あの、その…………あたし…………」

 ベッドに腰掛けたまま大きな体を縮こまらせ、アレックスはもじもじと指をこすり合わせた。

 少年に甘えることにはもう慣れたアレックスだったが、さすがに今回ばかりは次元レベルが違う。

 これから彼女がおねだりしようとしているのは、『肛門による性行為アナルセックス』という、自分でも未だ信じがたいような変態行為なのだ。

「あ、あう、あうぅ……」

 湯気が出るほど顔を真っ赤にし、アレックスは言葉を詰まらせた。

 言えない。
 
 というか、できない。

 ミゼルに習っているとはいえ、まだ少年は簡単な単語くらいしか理解できないので、それ・・をおねだりするためには行為で伝えなければならないのだ。
 
 それはつまり、『ここにいれて欲しい』と自らの手で肛門を割り開き、少年の前に晒さなければいけないということである。

 毎日ミゼルやマリアベルに〈清浄化クリンネス〉で清潔にしてもらってはいるが、本来の用途を考えれば、その穴の中を少年に見せつけるなど、とてもじゃないが恥ずかしすぎた。

「……×△&#$」
「あっ……」

 羞恥に固まるアレックスを落ち着けようとしてくれたのか、ベッドに登ってきた少年がアレックスの頭に手を乗せ、そのまま優しく撫でてくれた。 

 少年の手が触れた部分から、じんわりと心地よい暖かさが広がる。
 その暖かさはアレックスの緊張を解きほぐし、こわばっていた体の硬直を和らげていった。

 少年の優しさに、そのままいつも通り自分の全てを委ねてしまいたいという欲求が湧き上がる。

 …………が、 

「……っ、えぇい!」
「□○&×!?」
 
 アレックスは自分を奮い立たせるように気合を発すると、少年をベッドの上に押し倒した。
 
 そして素早い動きで少年の股間に顔をうずめ、まだ柔らかいままのチンポに舌を這わせていく。

「×&□%……」

 アレックスの少しざらついた舌の感触に、少年が呻くような声を上げた。
 
 勢いよく硬度を増していくチンポの裏スジに舌を這わせながら、アレックスは鼻から大きく息を吸い込む。

「……にゃぁ♡」
 
 目眩がするほど濃厚な雄の匂いが、胸いっぱいに広がった。
 腰のあたりに甘い痺れが走り、すでに孕ませてもらった子宮が疼く。

 そこからさらに、深呼吸でもするかのようにその匂いを嗅ぎ続けていると、脳内に分泌された幸せ物質の効果によってか、アレックスはしだいに夢の中にでもいるような、陶然とうぜんとした精神状態になっていった。

 最後の最後まで羞恥を捨てられなかったアレックスは、もうこうなったら自分でも訳が分からなくなるくらいに蕩けてしまい、その勢いでおねだりするしかないと思ったのだ。 

「……くるるるるっ♡ こっちぃ♡ 今日はこっちぃ♡」

 その作戦は、成功した。

 アレックスは完全にそそり立った少年のチンポから顔を上げて後ろを向くと、アナルを指で左右に広げ、甘えるような声でおねだりをすることができたのである。

「□△%×#……」

 ふらりと、少年が起き上がる気配がした。

 アレックスの引き締まった尻に少年の小さな手が添えられ、その両手にぐっと力が込められる。

 そして────

「っ!? にゃぁぁあああああああああっ!!♡♡」

 アレックスが最初に感じたのは、熱。
 全身の血液が沸騰したかのようにカッと熱くなり、体のいたるところから汗が噴き出した。

 その次に感じたのは、痺れ。
 腰のあたりから発生した感電にも似た感覚は、またたくよりも早く全身を駆け巡り、手足の指先までもをビリビリと痺れさせた。 

 そして直後に訪れる、快楽の爆発。

 陶然としていた意識を一瞬で引き戻されたアレックスは、激しい絶頂によってまたすぐさま思考を白く塗りつぶされてしまう。

「うにゃぁ……♡ こんな……♡ にゃんで……♡」

 呂律ろれつの回らぬ口調で、アレックスは疑問を口にした。

 たった一度、突かれただけなのだ。

 それも、膣をえぐられたわけでも、子宮を叩かれた訳でもない。
  
 アナルに挿入されただけだ。

 それなのに、かつて感じたことのないほどの快楽が、アレックスを襲っていた。

「%$○&□……!」
「にゃっ!?♡ まっれ、まら……うにゃぁぁあああああああっ!!♡♡」

 絶頂の余韻に震えるアレックスの腸内を、少年のチンポが容赦なくかき回す。

 当然だ。
 少年はまだ挿れただけで、射精すらしていない。

 エラの張ったカリが腸壁を引っかきながら引き抜かれ、

「ぐっ……! うぅぅぅぅっ!」

 太い竿が肛門を巻き込みながら挿入される。

「ひっ、ひぅっ…………かはっ!」

 抜かれる時の開放感も、挿される時の息苦しさも、信じられないほど気持ちがいい。

 だが、そんなものとは比較にならないほど深い快楽をアレックスに与えるのが…………

「うにゃぁぁああああああああああっ!!♡♡」

 ちょうど尻尾の生えている裏側あたりを、チンポに擦られた時だった。

「にゃ、にゃぁん♡ なぉぅ♡ んぁう♡ …………にゃぁぁあああああああっ!!♡♡」

 少年が大きく腰を使うたびに、ちょうどその部分を押し上げるように亀頭が擦るので、そのつどアレックスは絶頂した。

 何度でも絶頂させられた。

 その回数は敏感体質であるルナにも引けを取らず、アナルセックス開始から一時間が経過した頃には、尋常ではない体力を誇るアレックスですらベッドに四肢を投げ出し、ぐったりと脱力してしまうほどだった。

「……なぉぅ♡ おとうしゃん、おとうしゃぁん…………♡」

 開ききったアナルからとろりと精液を溢れさせながら、アレックスは無意識に少年を呼び続けた。

 それが更なる快楽を求めての誘いなのか、それともこれ以上は無理だという懇願なのか…………

 どちらにせよ、たった一時間の性交で、少年のチンポが萎えることなどない。

 夜はまだ始まったばかりであり、アレックスの初アナルも、これからが本当の本番だった。
 
 













 ────こうしてこの日、アレックスは自らの弱点を知ることになった。

 ただの一撃で無力化されてしまう、致命的な弱点だ。

 それは戦士としても、女としても恥ずかしく、情けないことであるはずなのだが…………

 それを知るのは後にも先にもアレックスと少年だけであり、二人だけの秘密ができたようで、少しだけ嬉しくもあるアレックスなのだった。
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