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少年期・学園編

2-20 魔王様、ダンジョンに潜る

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「来てしまった」
「エルリック様、来ちゃいましたね」
「ご主人様、いよいよです」

 今俺は、プリュムとリラシャと三人で、大きな扉の前に立っていた。

 ダンジョンの入り口ではなく、ダンジョンの最深部の扉だ。つまりこの先にダンジョンボスがいると思われる。

 いや、ここまでイージーモード過ぎてすんなり来てしまったのだ。
 というのも上層部に出てくる敵はそこそこ強いのだが、プリュムが一撃で倒せるレベルだったことで文字通り雑魚敵だったのだ。

 ついでにリラシャが想像以上に強かった。
 試しに召喚して一緒にレベル上げでもしようと思って戦わせたら、かなりの戦力増強になってしまったのだ。

 もはや俺の出る幕は無かった。
 途中の階層ボスさえも、プリュムとリラシャ無双だったのだ。

 だがダンジョンボスともなると、強力な敵が多いため俺の出番が来ることだろう。
 いや、途中で二人ともレベルが上がって更に強くなっているから、もはや俺いらない説まであるのだがな。

 現在時刻は夕方を迎えて18時過ぎなので、時間的にボスを倒す余裕がある。
 一日でダンジョン攻略とかストイックな気もするが、サクサクプレイの為せるわざだな。


「よし、開けるぞ」

「「 はいっ! 」」

 ゴゴゴというにぶい音を立てながら大きな扉が開くと、100体くらいのゴーレムが両脇に鎮座していた。

 俺たちが足を踏み入れた瞬間にゴーレムがジロリと目線をこちらに向けたのだが、襲って来る様子は無い。
 というよりも、一斉に片膝をつくものだからプリュムもリラシャもビクッとしてしまった。流石に100体ものゴーレムが一斉に膝をつく瞬間は圧巻だなー。


「お待ちしておりました。まお・・・どういうことですか! 早速女を二人も作って!」

 ゴーレムが両脇に並んだ道の奥から、怒りが込められた声が響いてきた。
 聞き覚えのある声と自分の状況の二つを照らし合わせ、俺はボソッと「あ、まずい」と言葉をこぼした。

 そう、奥には見覚えのあるオッドアイでツインテールの貧乳少女がいたのだ。
 この瞬間プリュムとリラシャを連れていたことを後悔してしまった。

「デスゴーレム100体起動。駆逐対象は魔王様の隣にいる女二名。魔王様には手を出すな。かかれ」

「ちょ、ちょっと待った!」

 俺の叫びも虚しく左右のゴーレムがピキーンと謎の効果音を出して、目を赤く光らせてから動き始めた。
 妙に演出に凝っているなぁと感心してしまった。

「エルリック様、デスゴーレムってAランクモンスターですよね? 流石に私とリラシャさんだけでは無理かもしれません」
「ご主人様には指一本触れさせません!」

 うん、こんな緊迫した状況下で感心してる場合じゃないよな。

「プリュムとリラシャは右側のゴーレムを抑えてくれ! 俺はサクッと左側を倒して合流する!」

「スキル『罠激増』『落とし穴』を使用」

「フライ」

 そう言えば相手は召喚師な上に罠師でもあったと思い出したエルリック。

 だからダンジョンという冒険者ホイホイを作れたのか。

 まあ、ホイホイ釣られたのは俺なんだが。

 空中を移動することで罠を回避し、自分の背丈の10倍以上はあるゴーレムを次々と叩き潰すエルリック。
 半分はすぐに片付け終わり、残りのプリュムとリラシャの方に向かいゴーレムを壊滅させた。

「エルリック様、瞬殺ですね。あっという間でした」
「ご主人様の実力にこのリラシャ、改めて感服致しました」

「圧倒的な殲滅。スピードもさることながら一撃一撃の破壊力も凄まじい。この程度のゴーレムでは手も足も出ず完全敗北。では、もう少し足掻くとします。ディザスターゴーレム10体起動。ネビュラゴーレム起動」

「ちょっと待った! 話し合おう! なっ?」

 災厄級の中でも非常に強力なモンスターを起動しようとした貧乳少女を、必死に止めに入る元魔王エルリック。
 災厄級モンスターは最低でもAランクモンスターとされている。

 町崩壊クラス、都市崩壊クラス、国家崩壊クラス、連合国家(複数国家)崩壊クラス、大陸崩壊クラス、世界崩壊クラスがあるのだが、彼女が起動させようとしているのは都市崩壊と連合国家崩壊クラスなのだ。

 つまり、ダンジョンごとレクレイスター王都を潰されかねない。

「話し合いの提案に乗ります。私も話したいことがいっぱいあります」

「ありがとな。助かった」

 起動しかけていたゴーレムが、キューンと謎の機械音を立てて停止した。
 ちなみにゴーレムは機械では無く人工の魔導生物である。機械要素は無いはずなんだが、俺が演出にこだわっていたことで彼女もこだわるようになったっぽいな。

「質問です。彼女たちとの関係をお答え願います」

 彼女が一番気になるのはそこだろうな。
 さて、魔王としての威厳を保ちながらどうやって説明したものか。

「このメイドはプリュム。まあ、関係は我が暮らす家で雇われているメイドだ。もう一人は擬態スライムというモンスターだ。生態を研究してみたいと思い、実験用生物として我が所有している。便宜上、使い魔という扱いだ」

 ちょっとリラシャの扱いが酷く聞こえるかもしれないが、実際に酷い扱いはしていない。だが俺が物扱いするとリラシャは恍惚な表情をするんだが、何故なんだろうか。

「メイド、家のメイドなら仕方ないです。使い魔に関しては所有物。男女の関係は無いと予想します。メイドとはそういった関係ではありませんね?」

「勿論だ。男女の関係は無い。そもそも我はまだ五歳。性欲云々は無い」

「安心しました。偉大なる魔王様と再びお会いできて光栄です。私エルビナは絶対の忠誠をお誓い致します」

 プリュムとリラシャを連れてきてしまったことで誤解を招いてしまったが、納得してくれたようでよかった。

 彼女は元俺の部下、四天王で「孤独のエルビナ」と言われている。
 罠師で召喚魔術師、錬成魔術や薬学にも精通している引きこもり少女だ。

「では魔王様、魔王城に戻りましょう。他の四天王にもすぐに連絡致します」

「すまない、魔王城には戻れぬ。我は既に人の身。住む場所が変わったのだ」

 驚愕の表情を見せるエルビナ。この反応を見るに、俺が帰ってくると信じていたようだな。

「・・・そうですか。魔王様、お約束いただいたことを覚えていらっしゃいますか? 私との約束を」

 え、俺何か約束した?
 あの頃の俺がした約束なんて全然覚えてないぞ。

「世の中の誰もが怖くて引きこもっている私に、魔王様は何度も何度も温かい言葉をかけてくれました。魔王様が『エルビナの孤独は全て我が埋めてやろう』と言って下さった時に『私は一生、魔王様に依存しても良いのですか?』とお聞きしました。今でもあの答えは変わっていませんか?」

 うわっ、何か魔王かこの俺、女の子に対して凄いこと言っちゃってるじゃん。めっちゃ恥ずかしい。

 これは「おう、依存してもいいぞー」とか軽く答えてそう。
 マジで全く覚えてないぞ。クーリングオフしたい。できないか。

「そ、そうだな。変わってないかな、と思うぞ」

 もはや変わっていないと言うしかないじゃないか。

「魔王様にあの時と同じ言葉をかけていただきたいのですが・・・」

 いやいやいや、それは無理だって。
 サッパリ覚えてないから答えようがない。

「いや、その、まあ何というか・・・」

 転生したら記憶が吹き飛んじゃったとか言って誤魔化そうか?
 いや、それは矛盾してるよなー。細かい記憶限定で忘却したとかはどうだろうか。

「なるほど、理解しました。やはりそこの女共が原因。魔王様を返していただきます」

「え、エルビナ、何を言っているんだ?」

 どことなく冷酷な語調となったエルビナ。
 その顔に勃然と浮き上がる怒りの感情を見て、焦ってしまうエルリック。

「ディザスターゴーレム10体起動。ネビュラゴーレム起動。女二人を殺せ・・

「いくらなんでも、それは許せぬぞ」

 エルビナが明確に殺意をこめてゴーレムへの命令を下した。
 エルリックは彼女に対し憤りを感じるとともに、急いで召喚していたリラシャを帰らせ、プリュムに思いつく限りの防御魔法をほどこした。

 ゴーレムたちは対象を一人見失うも、すぐにプリュムに攻撃を開始したが、エルリックに素手で次々と撃破されていく。

「ビーム発射」

「うおっ!?」

 最後に残ったゴーレムが虹色に輝く巨大な熱光線を放射し、辺り一面がボロボロと崩れ始めた。

 忘れてたけど、ここは塔になっているダンジョンだ。
 今の一撃だけで上層の一部分は消滅してしまったんだろうな。
 せっかくのダンジョンなのにもったいない。だが、中層まで被害は及んでないようだ。

 さすがは災厄級のモンスター。
 やることがド派手で強力だな。

 あれを王都に撃たれていれば、二、三発でレクレイスター王都は地図上から消滅するだろう。おー、怖い怖い。

「外しましたか」

「あ、あ、当たってましたよ!」

 へたり込んで涙目になっているプリュム。
 あのビームを正面から見ちゃったんだな。可哀想に。

 俺が何重にも防御魔法をかけたので無傷ではあるが、あんな巨大なビームが一直線に一瞬で迫ってきたら、恐怖という感情からは逃れられないだろうな。
 彼女の名誉のためにも、床が濡れていることは指摘しないであげよう。

「直撃して無傷ということは防御魔法。先ほど魔王様がかけていたもの。なるほど、それほどまでにただのメイドを大切に扱っているということ。ご説明願いたいですね」

「これでいくらやってもプリュムを傷つけられないということは、分かってくれたな? これ以上戦う気があるなら容赦しない」

「魔王様! こんな女のどこがいいんですか! 魔王様はおっぱいが大きな女性が好きじゃないんですか!」

 え、ちょ、何を言ってるんだね?

「あれ、私の胸が小さいと言われているような。あはは、そうですよ。私は小さいですよ! ぺったぺたですよー! あははは」

 プリュムまで取り乱さないでくれ。

「エルビナ。先ほども申した通り、我とプリュムの関係はメイドとその主人だ」

「では魔王様、胸の小さい女性でも好きですか? その質問に答えてくださるだけで、私は一切の抵抗をやめます」

「んー、大きいのも小さいのも、それぞれ良さがあると思うぞ。女性の魅力を胸だけで語ることなんぞできまい」

 当たり障りない解答になってしまったが、大丈夫だろうか。

「そうですか。どうやら私は酷い思い違いをしていたようです。魔王様に対する先ほどからのご無礼、深く謝罪申し上げます」

 良かった、分かってくれたようだ。

 エルビナは次にプリュムに向き合って頭を下げた。

「プリュムさんでしたか、攻撃してしまい申し訳ありませんでした。これからは貧乳同士、仲良くしましょう」

 お、あの人見知りで引き篭もりだったエルビナが自分から仲良くしようと言うだなんて、なんか涙が出ててくる。
 立派に成長したんだな。感動的だ。

「はは、そうですね。私なんて、どうせ貧乳ですよー」

 乾いた笑いをあげながら、プリュムはいじけてしまった。
 一度こうなったら機嫌が直るまで時間がかかるんだよな。

「魔王様、これから私はどうすればよろしいでしょうか? もう魔王様と離れたくありません。一緒にいれないと寂し過ぎて死んじゃいます」

 今までどうしてたんだと頭の中でツッコミを入れる俺だったが、一人にしてしまって悪くも思っている。
 加えて、エルビナも一度死なせてしまったという事実がある。俺の罪滅ぼしというのもあるし、彼女の望みを叶えてあげたいところだ。

「分かった。これからは一緒に暮らそう。ただ、プリュムとリラシャを攻撃し、こんな場所にダンジョンを建てたことに関しては少しばかり罰を与えないといけないな。覚悟はできているか?」

「エッチな罰というやつですか!? その、まだ心の準備が・・・でも、魔王様になら私の身も心も全て捧げられます」

「いや、そうではないんだが。まあ良い、いくぞ」

「できれば優しくして下さいね」

変化へんげの呪縛」

「みゅん?」


 この日の夜、エルリックはマクシュガル家に帰り、新たなに拾ってきたペットを家族に紹介することになるのであった。




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