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少年期・学園編
2-3 魔王様、魔法でやらかす
しおりを挟む「それでは試験終了だ。次が魔法実技、最後だな。これまでの試験がダメそうなやつは、ここで実力を見せてやれ!」
「「「 はい! 」」」
みんなが元気よく返事をする中、俺だけは鬱々とした気持ちになっていた。
「はぁ、あれだけ自重しようと思ってたのに、やらかしたなぁ。なんでアイリスが馬鹿にされたとか勘違いしたんだろ。そもそもアイリスが馬鹿にされてたとしても、腹を立てなきゃ良かったのに。はあ、モールさん、いい人だったなぁー」
何度もため息をついている俺の元に、小さい気配が近づいてきていた。
「兄さま! さっきはもうカッコよかったよ! ボクね、兄さまのこと、もっともーっと、好きになっちゃった!」
「ミルシャ。ありがとな」
眩しいほどキラキラした目を向けてくる可愛い妹に、俺は苦笑いしながら返事をした。
ミルシャだけは俺と同じローテーションの班になった。
さっきの武術実技では棄権して見学していたようだが、最初から最後まで俺のことを見ている視線があったので、多分ミルシャだろう。
「えへへ。次はボクがカッコいいとこ、見せるからね! 兄さまに見ていてほしいんだ!」
そうだな。落ち込んではいられない。
最後の魔法実技は俺も楽しみにしている。
なんたって俺は、元魔王だからな。
魔族は人間よりも魔力が高く、魔法の腕も超一流な種族だ。
そんな魔族全体の王だった俺は、魔法だけは自信がある。
今回ばかりはちゃんと威力を抑えるぞ。
だがその分、レパートリーで勝負してやる!
質より量というやつだ。
腕が鳴るぜ!
「ミルシャ、教えたことをしっかりやるんだぞ! お兄ちゃんも頑張るからな!」
「うん! ボクは兄さまの言いなりだよ!」
いやだから、それは間違ってるって。
言う通りにするよ、くらいでいいのに。
いや、言う通りにしているのが言いなりだよな。あれ、間違ってない? あれ?
「どうしたの兄さま?」
「あ、大丈夫だ。ミルシャ、誤解を招くかもしれないから、言いなりって言うのはやめような」
「えっと、ならボクは兄さまの・・・うぅ、恥ずかしいよぉ」
な、何を想像したミルシャ!?
「わ、分かったから。言いなりがマシならそれでいいから! な?」
「うん! ボクはずっと、兄さまの言いなり!」
あーもう、可愛いなこいつぅ!
ミルシャに元気をもらい、万全のコンディションになったエルリック。
魔法実技が行われる試験会場。広いドーム型の闘技場にやってきた。
「あ、見て見て兄さま! プリュムだよ!」
「お、そういえばプリュムはアイリスと同じ班だったな」
まあ、プリュムは座学での合格を目指しているだろうし、魔法実技は受けないだろうが。
「最後は君だね。魔法は使えるかな?」
「はい! いっぱい勉強してきました!」
え、プリュムのやつ、いつの間に魔法の勉強をしていたんだ?
「それじゃあ的が五つあるから、近い的でも遠い的でも好きな魔法で攻撃してみて。攻撃魔法以外が得意なら、別の試験があるから言ってね」
「問題ありません!」
張り切るプリュムの奥に見えるのは、五つの弓矢で射る時の的みたいなものだ。
大きさは統一されていない。
手前には二つの的があり、大きめで一番当てやすそうものと、小さめで少し当てにくそうなものがある。
少し距離をあけて、同じように大きめの的と小さめの的がある。ここまでくると小さめの的に当てるのは難しそうだ。
そしてさらに奥にある大きな大きな的。
恐らくはあれは、全力を出して届くか届かないかを試したり、届いたときの威力はどれくらいかを見る目安にするためにあるのだろう。
手前の四つの的は、魔法の精度が試される。
最後の一つの的は、魔法の威力と飛距離か。
なかなか考えられた作りになっているなー、と一人エルリックは感心していた。
それに加えて、攻撃魔法以外、つまり治癒魔法や支援魔法といったサポート系の魔法や、召喚魔法といった特別な魔法が使える人用の試験もあるみたいだ。
設備も充実しているし、配慮も素晴らしい。
試験に合格したらこんな凄い学園で学べるのかと思ったら、魔法実技をもっと頑張ろうと思えてきたな!
「い、いきます!」
おっと、俺の前にプリュムだ。
まずは火属性の魔法で近くの二つの的を見事に壊した。
うん、威力も精度もなかなか良い。
次に、風属性の魔法で遠くの二つ的に命中させた。だが、破壊するまでには至らなかったようだ。
威力不足だな。大丈夫、あとで俺がプリュムに指導してあげて威力は高めてあげよう。
そして最後の一番遠い的に、プリュムは火と風の混合魔法を使って命中させたようだ。
大きな的に当たった瞬間、ドンと耳に響く音が鳴った。
的が凹むくらいの威力はあったが、こちらも残念。破壊はできなかったみたいだ。
的はすぐに教師やお手伝いと思われる学生が直していた。
プリュムの魔法を鍛えることが俺の中で決定したところで、プリュムがこちらに気づいて駆け寄ってきた。
「エルリック様! 私の魔法はどうだったでしょうか?」
「うん。精度は素晴らしいが、威力不足だな。だが、プリュムが魔法を使えるなんて初めて知ったぞ。こっそり練習してたのか?」
「はい! エルリック様が色々な魔法をお使いになっているのを拝見して、私も使ってみたくなり影で練習していました!」
そうだったのか。
俺が色々な魔法を・・・思い出した。人間になってから使える魔法のレパートリーをもっと増やそうと思って、色々と練習したなー。
それを見てプリュムは魔法に興味を持ってくれたのか。
俺に触発されてくれたことは、何とも嬉しいな。
それなら思う存分、俺が持っている魔法の極意を教えてあげよう。
「そうかそうか。魔法のことなら、俺に任せておけ。プリュムの魔法の威力、鍛えてあげるからな!」
「本当ですか! ありがとうございます!」
プリュムはこのとき、世界最強の魔法の使い手の弟子になることが決定したのだが、そんなことを彼女は知るよしもないし、当のエルリックも自分よりも魔法が得意な者がいないことは、気づいていないのだが。
「兄さま! ボクがんばるから! できたらいい子いい子してね!」
「おう、順番的にミルシャが先だからな。しっかり見ておくぞ。ちゃんとできたら、撫でてあげるからな~」
「うん! ボク、がんばる!」
ミルシャに関しては、もはや心配していない。
実は魔法の才能がゼロに近かったミルシャだが、俺が直接ミルシャの魔法を鍛えたおかげで、今はそこそこの魔法使いになっている。
まだ幼いし、そこそこの魔法使いで十分だろう。
それでももちろん、さっきのプリュムより上の実力だ。
「次は・・・あーん! 何この娘可愛い! お名前をお姉さんに教えてくれる?」
どうやら試験監督の教師に、ミルシャは気に入られたらしい。
「ボク、ミルシャ! まほうできるよ!」
「むはー! たまらないわぁ! あ、鼻血が・・・」
「スィニア先生。しっかり試験監督してください」
「はいはい。分かってるわよ。でもミルシャちゃんが可愛すぎるのも悪いのよ」
「えっと、ボク、いい子にするよ!」
いいから試験を始めてくれ、まったく。
「それじゃあミルシャちゃんが使える魔法を、的に当ててみてね。あ、当たらなくてもすぐに不合格にはならないから安心して。魔法がどれくらい強いかも見るからね」
「だ、だいじょぶ。ちゃんと当たる。ボクならできる・・・」
いざ的を目の前にして緊張し始めたミルシャは、できると自分に言い聞かせていた。
「いきます!」
気合いを入れたミルシャが、次々と魔法を放つ。
ミルシャは水属性の魔法しか適性がなかったので、使えるのは水魔法だけだ。
実は俺、適性というのをミルシャに魔法を教える際に初めて知った。
俺は覚えようと思った魔法は全部覚えることができたため、適性の存在を知らなかったのだ。
ミルシャの水魔法の勢いで、近くの的と遠くの的四つが壊される。
「ミルシャちゃん! 可愛いのに凄いわね!」
「さいごだ!」
ミルシャは自身の体よりも大きな、螺旋状に渦巻く水球を作り出し、一番遠くの大きな的にぶち当てた。
鈍い音が響いたが、的は半壊といったところで壊しきることはできなかった。
それでは、ミルシャの魔法を評価しよう。
まだまだ収束が甘いが、大きさと魔力量はなかなかだ。
あとは発動時の魔力の無駄が多いのでそれを省き、さらに精度を上げれば、最小のコストで最大のパフォーマンスが得られるだろうな。
俺が採点するなら100点満点中、65点くらいだ。身内なんで少し甘めに採点してしまっているけどな。
だがこれは魔法実技の試験だ。65点も取れれば合格だろう。
「うぅ、ダメだった。兄さま、ごめんなさい」
シュンと、うなだれてこちらにやって来るミルシャ。
どうやら満足できない結果だったようだ。
ここはお兄ちゃんが慰めてあげるべき場面だな!
「いやいや、緊張していたにしては上出来だぞ。たしかに全力のミルシャならもう少し良いパフォーマンスができたかもしれないが、これからは本番に強くなるように特訓すれば大丈夫だ!」
「うん! 兄さまととっくんする!」
「よしよし。じゃあ次はお兄ちゃんが頑張るからな。色とりどりの魔法を使って(試験)会場を沸かせてやるから、しっかり見とくんだぞ!」
「兄さま、がんばって! ボク、いっぱいおうえんするよ!」
妹に応援されては、頑張るしかないよな!
それにしても、さっきの俺のセリフ、側から聞いたら演出にこだわってるやつみたいだ。
いや、勉強というのは楽しみながらやるのが一番だし、魔法も見た目にこだわって綺麗なものを使ってもいいよな。
うん、いいよな。
「次の方~、お名前をどうぞ」
「エルリックです!」
「ちょっと待ったぁ! その子も可愛いじゃない! ウチと試験監督変わって!」
「はあ、分かりましたよスィニア先生。ホント、小さい子が好きですねー」
「ふっ、昨年度の孤児院への寄付金額ナンバーワンの座は伊達ではないのよ」
良いことしてる人なんだろうが、孤児院の子供たちが心配になってくるよ。
「えっと、エルリック君ね。攻撃魔法は使える?」
「はい。攻撃魔法でも支援魔法でも何でもできますよ」
「もう、背伸びしちゃって! 可愛いなぁー!」
ちょ、抱きつくな!
さっきミルシャには抱きついてなかっただろ!
俺は事実を言っただけなのに。って、む、胸が顔に、息ができな・・・。
「しまった! 危うく窒息死させるところだった。ごめんね、エルリック君」
ちょっとこの人を的にしたくなってきた。
なんなら即死系の魔法でも撃ってやろうか。
「それじゃあ、攻撃魔法をあの的に当ててみてね。当たらなくても・・・」
「外しません。問題ないです」
被せ気味に言うやいなや、俺は体の周りに計7色の魔法を浮かべた。
火属性の赤色、風属性と木系統の緑色、水属性の青色、土属性の茶色、闇属性と影系統の黒色、光属性の白色、雷系統の黄色。
見栄えを良くするために、一気に発射するか!
「いけ!」
俺の号令と同時に、周りに浮いていた全ての魔法が軌跡を描きながら、あるものは螺旋回転をして、あるものはとにかく直球で、またあるものは変則的な動きで、的に吸い込まれるようにぶち当たる。
闇に囚われた的は、合わせた影魔法の能力で、引きずり込まれて存在そのものが消え去る。
光に包まれた的は、強度が落ちた後、雷によってズタズタに引き裂かれて跡形もなくなる。
土にまみれた的は、魔物のような植物が生えてそれに飲み込まれると同時に植物は枯れる。
火に覆われた的は、勢いよく燃え尽きそうになったところで凄まじい量の水に消化される。
最後の巨大な的は、風により作られた竜巻によって、周りに破片をばら撒きながら壊れた。
色とりどりの鮮やかな魔法。
見る者を楽しませるためだけに、わずかな魔力で最大限のパフォーマンスを披露してみせた俺は、大満足だった。
「どうだ? 綺麗だったろ?」
「どかーんで、キラキラで、ビリビリですごかった! 兄さますごい!」
「そうだろう、そうだろう」
妹に褒められて得意げな表情になっている俺は、顎が外れそうなくらい口を開けている教員たちには気づかずに、試験会場を後にするのであった。
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