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2章 次々増えるね。なんでだろね?

第27話 死霊術師は珍しいそうですね

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「ソウスイ様、お久しぶりです。昨日お引越しなさったそうですね。引越しいわいと再開をしゅくして、今夜お時間をいただけませんか?」

 ミルガッドさんは魔王レグッドの襲来しゅうらいの際、協力して戦ってくれた女性だ。
 レグッドが統治とうちしていた国の宰相さいしょうを務めていたようだが、休暇きゅうかでも取ってきたのだろうか?

「お久しぶりですね、ミルガッドさん。今夜は特に予定は入っていないので、大丈夫ですが、どちらに行く予定ですか?」

「酒場に行きましょう。それとも宿を取って2人きりになりますか?」

 悪戯いたずらな笑みを浮かべるミルガッドさんに、少々ドキッとしてしまう。

「宿はさすがに遠慮しておきますが、飲みに行くのはオッケーです。店が決まっていないのでしたら、探させましょうか?」

 こういうのはセイーフが詳しいはずだ。
 きっといい店を紹介してくれると思う。

「いえ、お店の検討はつけています。そういえば、これから冒険者のお仕事ですか?」

「はい。依頼を受けて行くところです。みんなの修行にもなり、お金も稼げますからね」

 まあ稼がずともいくらでもあるのだが、自分で働いたお金というものは、やっぱり別物だね。
 いまいちこの国の物価とか賃金を把握はあくしてないから、そういうのを知るためにも働いてみるのが一番だ。

「そうでしたか。では、そちらもご一緒させてもらってもいいでしょうか? 少しは腕に自信がありため、足手まといにはならないかと思います」

 たしかに、魔王相手にもひるまず戦うほどだ。
 彼女の実力は、高いほうなのではないだろうか。

 ただ、うちは女性が多い。
 というか、俺以外全員女性な気がする。

 これ以上女性が増えたら、また周りの目が一層キツくなるような気もするんだよな。

「大丈夫ですよ、ソウスイ様。ソウスイ様に敵意を向ける目は、全て潰して差し上げますから」

 あれ?
 言葉に出してないのだが、なぜ考えてることが分かったんだ?

 というか、ちょっと怖いよな。
 さらっと潰すと言って、澄ました顔で堂々としている。
 この人は怒らせたらいけないタイプだ。

「さすがにそこまでしないでくださいね。ミルガッドさんの実力はこの前見せてもらったので、一緒に来ていただいても大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。では、後ろの女の子たちがしびれを切らしそうなのでご挨拶しましょうか」

 ミルガッドさんがミーナたちの前へと歩く。
 みんなは少し緊張した様子に変わっていく。

「私はアンズ・ミルガッド。死霊術師ネクロマンサーで、氷魔法や弱体魔法を得意としています。ソウスイ様には命を助けていただいたも同然どうぜんの恩がありますので、今回こうしてやってきた次第です。皆さまよろしくお願い申し上げます」

 ミルガッドさんが深々と一礼した際、ギルド内から「おー」と、驚嘆きょうたんの声が上がった。

 それから仲間たちが1人ずつ自己紹介を始めたので、俺はその間受付のおばちゃんと駄弁だべっていた。

「挨拶は無事終わりました。ではソウスイ様、参りましょう」

 そう言って腕をからめてくるミルガッドさん。
 いきなりの出来事で、俺の頭はパニックに変わってしまう。

「み、ミルガッドさん? あの、これはどういうことですか?」

「ソウスイ様は手を繋ぐほうがお好きなのですか? それなら変えましょう」

 今度は指を絡めてきて、ぞくに言う恋人繋ぎなるものをしてきた。

「ご主人様から離れてください!」
「私の旦那様から手をどかしてもらえるかしら?」

 すかさずロレナとメティーナのガードが入る。
 ミーナとマルリナは顔を赤く染めて、こちらを見ないようにしている。
 ピニーとマフリュンはニヤニヤした顔付きで、こちらを凝視ぎょうししている。

「あら、ダメでしたか。二人は強敵に認定しておきましょう」

 何やらロレナとメティーナは、物騒ぶっそうなものに認定されてしまったらしい。
 ロレナは俺に近づいてミルガッドさんのことをめ付けて、メティーナは余裕よゆうそうな表情で俺に腕を絡めてきた。

 メティーナの双丘アレが腕を包み込んでくる感触ががが。

 危ない危ない。正気を失うところだ。

 そっと腕を離して、メティーナからは距離を取った。

「とりあえず行こうか。こんなところで時間をかけるのはもったいないからね」

 そそくさとギルドを退散しつつ、みんなが付いてきているのを横目で確認する。

 ギルドの男連中の視線が耐えられなかったとか、そんなことはないのだ・・・。


「ソウスイ様は案外責められると弱いのですね。これから楽しくなりそうです」

 ミルガッドの呟__つぶや__#きはソウスイには聞こえずに、町の中に消えていくのだった。



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