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2章 ゼルドスの反乱 二つ目の危機
56話 食べて飲んでほとんど踊って 歓迎のパーティー
しおりを挟む「新たなる魔王カイ殿の歓迎と、国王陛下の復活を祝して・・・乾杯!」
「「「 乾杯! 」」」
歓迎されてしまったようだ。
さて、セラファルと国王は無事に長い話し合いを終えた。
結果は魔王国がまとまるまで、条約とかを結ぶのは良くないと判断して保留になった。
それから国王が主催するパーティーが開かれ、王城内には貴族やら聖騎士やらがゾロゾロ集まってきていた。
ちなみにマヤネとウルリルも合流し、パーティーに参加している。
「陛下、一曲踊っていただけませんか?」
「ちょっと、抜けがけはずるいですわよ。陛下、私と踊ってくださいまし!」
「あ、あの、私も一緒に踊っていただきたいです・・・」
魔王だから怖がられると思ったんだが、俺が人間であり、この国の危機を救った人物ということをグイーザ王が伝えてくれたこともあり、すんなり受け入れられてしまった。
もうちょっと怖がってくれてもいいのに。
魔王なんだよ?
まあ、受け入れられすぎてさっきから貴族の令嬢たちが、ひっきりなしに踊ってほしいと誘ってくる。
嬉しい気持ちもある反面、踊ってばかりであんまりパーティーを楽しめてないので残念でもある。
ダンスの方はセラファル先生に手取り足取り教えてもらったため、何とか形になる程度にはなっていたのだが、今ではかなり上達している。
ほんと、何人と踊ったのだろう。一生分踊った気分だ。
「カイ様、私とも踊ってください。オアズケをくらっている犬のような気分です」
「あの、私も踊りたいです。カイさん、ダメでしょうか?」
「拙者は遠慮しとくでござる。残念ながら、拙者は踊ったことがないのでござるよ」
二人追加が入ってしまった。
せっかくの機会だし、今日くらいは別にいいか。
「分かったよ。メルフィナ・・・お嬢様、俺と踊っていただけますか?」
片膝を立てて目線を下げた状態で、手を差し出してみた。
ちょっとやってみたかったことができて、嬉し恥ずかしな気分だ。
「喜んで!」
鼻血でも出しそうなくらい、満面の笑みを浮かべてくれたメルフィナ。
踊ってみると、意外と上手だったことに驚いた。
「昔、姉さんと一緒に練習してたんですよ。好きな人が出来たとき、踊れなかったら嫌ですからね」
そういえばメルフィナって見た目がロリのわりには、結構長く生きてるんだっけか。
魔族の寿命は長いらしいから、そういうのは当たり前らしいけどな。
まあつまり、見た目はロリだが中身は・・・。
「カイ様、なんか年齢のことで失礼なこと考えましたか? 怒っちゃいますよ、このやろぅ。愛してるので、許しちゃいますけどね!」
女の異常なまでの勘の鋭さに、軽く戦慄しつつも踊りに集中する。
ちょっと気を抜いただけで、間違えそうだからな。
そして曲が終わり、パートナーをウルリルに変える。
「えっと、社交ダンスはちょっとレッスンしたことがあるだけなので、間違ったらごめんなさい」
「大丈夫だよ、とりあえず俺がリードするから」
少し力を入れただけで壊れてしまいそうな柔らかい手を、優しく握りしめて踊り始めた。
踊っていて気づいたが、ウルリルはダンスが下手というわけではない。
ただ、ちょっとしたところで転けそうになったり、たまに俺の足を踏んでしまったりする。
その度にペコペコ謝ってくるのが可愛いので許してしまうのだが、なんかこうギュッと思いっきり抱きしめたくなってしまう。
理性を保とう。我慢我慢。
「あ、ありがとうございました!」
踊り終わった途端、顔を真っ赤に染めて走り去っていくウルリルの後ろを姿を眺めていたら、見覚えのある子に話しかけられた。
「ねぇねぇ、あなたが魔王様だよね? あたしのこと覚えてないかな?」
活発そうなショートヘアーの女の子。
その褐色肌を見て、門番という言葉が頭をよぎった。
「あー、城の門番をしてた兵士だったっけ?」
「そだよー。覚えててくれてありがとね。あ、リスシア様との試合見たよ! めっちゃ強かったじゃん、さっすが魔王様だね! でね、その試合を一緒に見た友達が、あなたとお話がしたいって言ってるんだ。ちょっとでいいから、会ってもらえないかな? お願いします!」
パチンと、顔の前で手を合わせる少女。片目だけ開けてチラチラとこちらの様子を伺ってきている。
俺は畳み掛けるように言われてしまったため、とりあえず「お、おう」と言ってしまった。
元気がありまってる感じで、かなりパワフルだな。
学年に一人はいそうな、人気者でスポーツ万能な女の子みたいだ。
「オッケーだって! ほらほらキルティー、早くこっちに来なよー!」
「ルーネちゃん。あんまり早く喋ってたから、魔王様が困ってるよ~」
白を基調とした清楚なドレスに身を包んだ女の子がちょこちょこと走って寄ってきた。
キルティーと呼ばれたその少女と目が合うと、彼女は気恥ずかしそうに目をシュパッとそらせた。
「ありゃりゃ、また早口になっちゃってた? ごめんね魔王様。ってキルティー、まだ男の人が苦手なの? いい加減慣れなきゃ、彼氏の一人もできないぞー」
「そ、そういうルーネちゃんだって~」
「あたしにはそういうの向かないからいいの。キルティーみたいに可愛くないからねー」
「ルーネちゃんの方が私より断然可愛いから!」
で、俺はいったい何を見せられてるんだ?
「二人とも、仲が良いんだな。俺はもう行っていいかな?」
「あ、ごめんなさい魔王様。ちょっとだけ聞きたいことがあったんです。魔王様はユニークスキルというのはご存知でしょうか?」
ユニークスキル?
ゲームとかでは見たことあるが、もしかしてこの世界にも存在してるのか。
「ユニークスキルは普通のスキルよりも格段に性能がいいスキルなんです。その代わり、全然持っている人がいなくて・・・。魔王様なら、一つは持っていらっしゃるのではないでしょうか?」
はて、セラファルに聞かないとまるで分からない。
この世界の常識的なことは、あとあと勉強しないといけないな。
学校とかあるなら、ちょっと行ってみたい。
「それで、魔王様の強いユニークスキルを、一つだけでいいのでコピーさせていただけないでしょうか! お礼は何でもいたしますので!」
「それは強くなりたいってことか?」
「そうです。正直に言います。強くなって、とある魔族を倒したいんです。私の両親を殺した、あの魔族を・・・」
拳を力強く握りしめ、悔しそうな顔をするキルティー。
彼女の目は、深い闇の中に見える復讐の色に染まっていた。
「仇を討ちたいのか知らないが、あまり協力はしたくないところだな。そいつに復讐するのはいいが、した後になって壊れる人間は多いぞ。俺に止める権利はないから忠告だけはしておく。復讐はやめといた方がいいよ」
「そうですか。やめといた方がいいですか・・・」
彼女の目から、光が少しずつ失われていく。
俺は小さな、しかしもの凄く濃い殺気に反応して、すぐさまバックステップをした。
彼女が服の中に隠し持っていた剣は、カイの目の前を横切った。
つまり回避していなければ、真っ二つになっていてもおかしくなかったということだ。
「それなら、あなたから直接コピーさせてもらいます。死体からでも大丈夫ですので、大人しくしていなければ切り刻んでしまいますよ」
パーティー会場に悲鳴が聞こえ始め、場は騒然となっていく。
そして彼女の剣が、目にも止まらぬ速さでカイに振り下ろされるのだった。
◇あとがき◇
書いてる途中にアプリが落ちると、書いてたやつ消えちゃうんですね。
次からは保存しながら書かないとなー。
2018/8/1 そういえば、アプリが落ちても書いていたやつが消えることが無くなりました。
ちなみに、アプリのレビューの方でこのことを書いたんですが、返答で改善しますという感じのが返ってきていたのを思い出しました。
アルファポリスの運営さんって、優秀なんですね。ダメ元で書いたんですが、改善されるなんて思ってませんでした(*゚∀゚*)
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