やりすぎハイスペックな俺が行く 異世界チートな旅路

とやっき

文字の大きさ
上 下
51 / 89
2章 ゼルドスの反乱 二つ目の危機

45話 少女は魔剣を愛でて 殺戮の幕開け

しおりを挟む


「あのー、カイ様? セラファルさんと良い感じの雰囲気になって、ラーグルさんと手を握り合って、完全に私のこと忘れてないですか? 見せつけられて、私は放置プレイですか? 興奮しちゃいますけど」

 あ、いや、忘れていたわけでは・・・ちょっと忘れてたな。

「とりあえず方針が決まったのでしたら、皆さんを呼んできますね。カイ様は怪我してるんですから、大人しく待っていてください。動いちゃダメですからね」

 軽くおでこにツンとされ、そのままメルフィナがパタパタと走っていくのを眺めていた。

 メルフィナって、こういうときは本当にいい女だよな、と、カイはしみじみと感じていた。





 セラファル説明の元、仲間たちに現状が伝えられた。

 それぞれの反応はあったものの、とりあえず和解したことを伝えたので、騒ぎにはならなかった。

「なるほど、ラーグルさんがねー。仲直りしたなら、私は何も言わないけど」
「カイさんは今、能力が使えないんですね。うぅ、心配です」
「そうなってくると、私たちだけであの軍勢を倒さないといけませんね。これはカイ様からとびっきりのご褒美を用意していただかないと・・・」
「うう。拙者は殿が窮地のとき、お側にいなかったとは。かくなる上は切腹を!」
「ご主人様弱ってるの? エミュは全然分からないの。ご主人様の魔力はいつも通りビンビンなの!」

 魔力はビンビン?

 つまり魔力は失われていないということか。

「セラファル。俺を魔力タンクにするとかどうだ? リーサとエミュは魔力を使って戦ってるから、俺さえいれば魔法撃ち放題だろ?」

 セラファルはコクッと頷くと、みんなを見渡してそれぞれの役割分担を決め始めた。

「マスター、とても良い案です。ではリーサさんとエミュは、マスターの護衛をしつつ、魔法で敵を攻撃してください。マヤネさんとメルフィナさんは、今まで通りでお願いします。私は敵が来る前に罠を仕掛けましょう。ウルリルさん、手伝っていただけますか?」

「あ、えっと、その・・・」

 モジモジして何か言いたげなウルリル。

 恐らくこの戦いが怖くなったのだろう。

 敵は多いし、罠を仕掛けるだけといっても危険なときはある。

 まだまだ子供なウルリルにとっては、今回の戦いはキツイかもしれないな。

「ウルリル。無理しなくていい。安全そうな場所に避難しててもいいぞ?」

「あ、カイさん。違うんです。私も戦いたいんです! 皆さんが一所懸命に戦っているとき、私だけ戦えなくて、それが悔しくて。だから、私もやれるだけのことをしたいんです」

 ウルリルも戦いたかったのか。

 でもウルリルが魔法を使ったら、自爆しちゃうからなー。

 魔法以外に何か特技とかがあるのだろうか?


「私、魔剣を操るのが得意なんです。今は一本も持ってないですが、もしかしたらこの王都のどこかに、魔剣を売ってるお店があるかもしれません。魔剣さえ手に入れば、私もちょっとは戦うことができるんですよ!」

 肩の高さでキュッと小さく両拳を握り、やる気をアピールするウルリル。

 真剣な目をしているのだが何分上目遣いのため、子供がおもちゃをおねだりしているように見えてしまう。


「分かった、じゃあ魔剣を手に入れようか。武器屋とかにあるのかな?」

「マスター。魔剣ならインベントリ内にいくつか所持していますが、お出ししましょうか?」

 なんで俺、魔剣なんて物騒なものを持ってるんだ?

 買った覚えなんてないんだが、いつの間に・・・。

「魔王城にあったものはドロップアイテムと認識されて、自動回収しています」

 なるほど。そういえば前にセラファルたちと一緒に寝たテントとかも、魔王城のものだったっけ。


「それじゃあ、とりあえず全部出してもらえるか? ウルリルが使いやすいのもあるだろうからな」

「合計24本です。ウルリルさん、どうぞ」

 セラファルは空間の裂け目から、剣を次々に取り出し始めた。
 インベントリってどういう仕組みなのだろうか。
 今度調べてみたいところだ。

「これって私が没収された・・・じゃなくて、前に使っていた剛魔剣ごうまけんガトゥラン。あ、こっちもそうです。空魔剣くうまけんメリノーラ。竜魔剣りゅうまけんフラドラークに、聖魔剣せいまけんティトランタって・・・8本全部揃ってる!」


 興奮して鼻をスンスン鳴らせながら、ウルリルは魔剣を1本ずつ手に取って、ウットリした顔で撫でている。

 そんな様子を苦笑いしながら見ているカイの元に、ラーグルが近づいてきて耳元で囁く。


「魔王様。ウルリル様に魔剣持たせるのは、ちぃとヤバイですぜ。あの方は剣の扱いは凄いんだが、一度剣を使うと最後に何かやらかすって、噂を聞いたことがあんですよ」

「ちなみに、前に何をやらかしたと?」

「魔王城の庭の植物が一つ残らず刈り取られたとか、魔王城の東の見張り塔が斬り倒されてたとか、魔王城近辺に生息する大量のモンスターの皮が剥ぎ取られてたとか。毎回毎回、アワアワしてるウルリル様が目を背けてたたずんでたんで、犯人が分かったらしいんですよ」

 ウルリルはそんな危険人物だったのか。

 ただの可愛い女の子にしか見えないのにな。

 だが話を聞く限り、彼女に剣を持たせたのは失敗だったかもしれない。


「カイさん、この子たちを使ってもいいんですよね! ありがとうございます!」

 目をキラキラと輝かせながら、満面の笑みでお礼を述べるウルリル。

 子犬を拾ってきた少女が、飼っていいわよとお母さんに許可をもらったときのような表情を見せている。

 もはや彼女から剣を取り上げることなど誰ができようか。
 そう、誰もできやしないのだ。

 というか、魔剣をこの子たち呼ばわりとは驚いたな。
 剣に対する愛情なのかは分からんが、心配になってくる。

 もしかすると剣の名前は、ウルリルが自分で付けたのかもしれない。そうであって欲しくないが。


「あー、ウルリル。剣は危ないからな。取り扱いには、十二分に気をつけてな」

「はい! 手入れもちゃんとできますよ!」

 分かってくれたよな? 大丈夫だよな?


「カイさん! 早速この子たちを動かしてあげますね!」

「いやー、ちょっと待ってもいいんじゃないかな?」
「そうですぜウルリル様。敵が来るまで力を温存しときましょうぜ」

 俺とラーグルが必死の説得を試みる。

 だが、その程度では彼女を止められない。
 ウルリルに魔剣を渡したことで、すでにアウトだったのだ。

「大丈夫ですよカイさん、ラーグルさん。遠くに見えてる敵さんたちなら、いっぱい斬ってもいいですよね? 早速、試し斬りしてみないといけません!」

 言うや否や、8本の魔剣全てを敵の方向に飛ばしたウルリル。

「あのー、ウルリル? 許可とかしてないんだけど?」

「カイさんはまったりと休んでいてください! 私もできる女の子だと証明してみせますから! ついにカイさんのお役に立てます・・・えへへ」

 これまでにない張り切り具合を見せるウルリルに、かける言葉が見つからなかった。

 ツッコミたいことはいくつがあるが、もうウジウジ言っても仕方がない状況だ。


「敵が少しでも減ればいいか・・・」


 カイの呟きは、魔剣が飛んでいった方角の空に消えていくのだった。





 1人の魔族が偶然空を見上げた際に、こちらに飛んでくる何かを発見した。

 彼は亜人族で構成された、魔王討伐部隊の伝令兵であった。


「な、何だありゃ? 剣か? 剣が飛んでくるのか?」

 投擲された剣にしては、おかしな軌道で向かってくる。
 操っているにしては近くにそれらしい魔力反応はない。

 次第に近づいてきた剣を見て、彼は少しずつ焦りの色を見せるようになった。

 剣には明らかに魔力が込められている。
 つまり、誰かが操っていることになる。

 しかし近くに魔力を操るものは見当たらない。


「こんなことができるやつは、この大陸で一人しかいない。やべぇ! みんな逃げろ! 八剣之悪魔ヤマタノオロチが出たぞ!」


 彼の叫び声が終わるよりも早く、1人の魔族が断末魔の悲鳴を上げた。

 その声を皮切りに、次から次へと痛々しい悲鳴が上がっていく。


 あどけない少女が贈る、殺戮という名の蹂躙劇が幕を開けた瞬間であった。





◇あとがき◇
漢字を変更しました。八剣舞踏ヤマタノオロチ八剣之悪魔ヤマタノオロチ
加えて37話も修正します。

最近投稿があまりできず、すみません(´・ω・`)

あ、次話は、ほんのちょぴっとだけえっちぃかも。お気をつけください。
しおりを挟む
感想 95

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...