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1章 異世界の魔王 一つ目の危機

20話 仕事(戦闘)するぜ 契約魔王

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 さて、魔王としての最初の仕事だな。


 魔王国の内情を知った俺は、ゼルドスさんという魔族に頼まれて魔王になった。

 俺の仕事は、魔王国内の魔族たちを一つにまとめあげることだ。

 簡単に言えば、説得してダメなら武力で国を統一。
 後のこと、つまり内政的なものは全てゼルドスさんに丸投げするつもりだ。


 今回は北の領地で、俺の実力を示すため領主と戦うことになった。
 サクッと勝って、次に行こうと思っている。


 さて、ミッションは相手を殺さず、無力化すること。

 セラファルが作戦を立案してくれたので、あとは俺が実行するだけだ。

 ちなみに、俺が考えた「敵に媚薬を投げつけて、モジモジさせよう作戦」は即座に却下された。

 何がいけなかったんだ。
 無力化するのには、最適なのに・・・。

 まあ下心が、ほんのちょぴっとばかしあったのがいけなかったのかもしれない。

 残念だ、非常に残念だ。


「何ボーッとしてるの? こちらから仕掛けるわよ?」

 あ、ハルティナはこちらのことを気にして、戦闘開始を待っていてくれたみたいだ。

 いつでも攻撃してくれて構わなかったんだが、意外と律儀だな。

 でも媚薬作戦が通っていたら、こいつがモジモジしていたのか。

 あー、なんか罪悪感がすごそうだ。
 やめて正解かも。


「あ、すまん。いつでも来い」

 
 今回の作戦はいたってシンプル。

 『魔法全反射』は使わずに、『物理全カウンター』を使う。
 相手は物理特化だから、カウンターで対応するという戦い方。これがAプランだ。

 ちなみに心配性のセラファルは、Fプランまで考えてくれた。
 Cくらいでやめとけと言ったんだが「マスターに、もしものことがあったらどうするんですか!」と強く言われてしまった。

 Fプランまで覚える方が大変だったよ。


「いくぞぉぉぉぉ!」

 ハルティナが拳を振り上げる。

 それじゃあカウンターといこう。

「えい」

「ブハッ」

 ハルティナが後方に吹き飛んだ。
 だがダメージは少ないはずだ。

「あれ? あんまり痛くない?」

「気のせいじゃないか?」

 俺が持っている剣には刃がついていない。
 つまり殴る用なのだが、それだけではカウンターのダメージを軽減できない。

 そこで、セラファルが(俺の鍛治スキルで)作ったこの剣。


 ててててってれー!

 「タイアーディン」!

 これで殴ったら、ダメージを疲れに変えてしまうという優れもの!

 今ならなんとお値段が・・・悪ふざけはやめよう。


 え? ネーミングセンスが皆無?
 気にするところではない。け、決して俺が名付けたわけでは・・・。


 こほん。
 
 つまり、殴れば相手が疲れる。

 ただそれだけだ。ホントそれだけなんだ。


 というわけで、カウンターで相手を疲れさせて勝利するという作戦だ。


「とりゃとりゃとりゃとりゃぁぁぁ!」

 ハルティナが俺に猛攻する。

 必死になっているが、全て弾き返してあげよう。

 30分が経過して、ハルティナの攻撃の手が止まった。

「ハァハァ。なんで、効かないのよー」

 よしよし。ハルティナは、かなり疲れが溜まってきたようだ。

 息を切らしている姿がなんか艶めかしい。

 おっと、戦闘中に何を考えているんだ。煩悩は払わないと。

「そろそろ降参したらどうだ? これ以上やっても無駄だろ?」

「こうなったら、早いけどあれを使うしかないわね」

 何だ? 奥の手でもあるのか?

「ファーストレベルアップ!」


 は? レベルアップ?

 急いで神眼で相手を確認する。


個体名 ハルティナ・フィーストン
レベル 4080
タイプ 魔法戦闘超特化型
スキル 火属性魔法超特化
    魔法防御無効化
    レベルダブルアップ(1st)
    常時オールステータス5倍
状態  疲労(軽微)


 レベルが3000上がっていた。

 さらになぜか魔法特化の能力に変わっている。

 まさかあれなのか?
 第二形態セカンドフォルムというやつか?


「お前それはせこいだろ! 第二形態とか、お前はラスボスの魔王かよ!?」

「魔王はあんたでしょ!」

 あ、そうだった。


 さて、どうしよう。魔法戦になるとは思ってなかったな。
 これで「物理全カウンターで相手を疲れさせよう作戦」はできなくなってしまった。

 プランを変更するしかないか・・・。


 カイが悩んでいるうちに、ハルティナは高火力の魔法を完成させていた。

 そして隙だらけのカイに向かって、慈悲も容赦もなく魔法を撃ち込んだ。

 魔法は真っ直ぐとカイへと向かっていき・・・。


「ちょ、待って! それはやばいって!」


 巨大な炎の嵐が、カイの全身を包み込んだ。



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