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1章 異世界の魔王 一つ目の危機
14話 会議するぜ 反乱開始?
しおりを挟む銀髪のケモ耳美女と目があった。
彼女の名はカーラ。
銀狼族という亜人種の魔族だ。
現在、ゼルドス領では反乱の兆しがある。
その中心となっているのが、他でもなく彼女だ。
「ゼルドス様。話は早く終わらせてください。私たちは忙しいですから」
スカートとスピーチは短い方がいい。
それには賛成だ。
難しい話を延々とされても、頭に入ってこないからな。右から左だ。
「まぁ急かすな、カーラ。皆に集まってもらったのは、この魔族統一国家の危機を救う手段を考えたからだ」
「そんなもの、あるわけないでしょ」
「カーラ! ゼルドス様に無礼じゃぞ。ゼルドス様に意見を申すなら敬語を使うのじゃ」
場の空気が重いなー。
この中でも既に、敵味方が存在する。
出席している亜人種の幹部は11名。
ゼルドス派が4名。
カーラ派が4名。
中立派が3名だと聞いている。
勢力だけ見ると拮抗しているようだが、中立派がどう転ぶかで明日が決まる危ない状況だ。
「皆も分かっておろう。この事態は魔王様が死んでしまったから起きていることだ。つまり、別の魔王が国を纏め上げればいいのだ!」
一瞬、周囲が騒つく。
つまり誰かを魔王にしようと提案しているようなものだ。
俺もこの案に賛成だ。
絶対の君主の存在は大きい。
魔王がいれば、この国はまとまりやすくなるだろう。
「魔王に相応しい者は、魔王を討ちとった者。つまり、ここにおられるカイ様こそ、魔王となるべき人物だ!」
え? 俺?
いやいやいや!
俺は人間だから! 魔族じゃないから!
というかそんな話、聞いてないぞ!
てっきり俺のことは、戦力の駒として雇ってくれるんじゃないか、くらいに思っていた。
それくらいなら魔族を纏め上げるのに手を貸そうかなと考えていたが、魔王だと?
「ゼルドスさん、俺は人間ですから魔王なんて無理ですよ! 誰か代理を立てるべきじゃないですか? 国をもう一度統一するなら、協力しますから・・・」
まあ、あの巨人のせいで魔王国全体がボロボロになってしまったという事実がある以上、俺も責任を感じてしまう。
罪滅ぼしならしようかと思うが、いくらなんでも人間を魔王にするのはどうかと思う。
「カイ様。この国を救えるのは、貴方様しかいらっしゃいません。前魔王を倒したという功績は、それほどに大きいものです」
確かに魔王は倒した。召喚した巨人が、だが。
でも、それだけで魔王になれるか?
魔族の国を束ねないといけない国王、それが魔王だ。
「実力は大事かもしれませんが、一国の王に必要な器が、そもそも俺にはありませんよ」
「では、期限付きならどうでしょう? 魔族が一丸となるまでの間、その実力で国を統一していただく。その後の内政は、誰かに任せるというのは?」
期間限定のお飾り魔王か。
お菓子みたいだな。
「でも反対する魔族は多いんじゃないですか?」
と言って、俺は周囲を見回す。
「反対です! 人間の魔王など考えられません。人間よ、魔族の尊厳を踏み躙る気か?」
「待てカーラよ。ゼルドス様の案、かけてみる価値はあると思うがのう」
それからゼルドス派とカーラ派が言い争って、一つの結論に至った。
「ゼルドス様。その人間を魔王にしたいなら好きにするといいわ。私たちは新たに国を作る、そして私たちがこの国を統一するから!」
あちゃー、ついに分裂しちゃったか。
まあ、反乱分子を残しておくよりか、居なくなってくれた方がマシかな。
「ゼルドス様、私はカーラと共に新たな国を築こうと思います」
「ゼルドス様、今までお世話になりました。人間風情を魔王にすること、頑張ってくださいね」
一人、また一人と会議室を去っていく。
「ゼルドス様。儂も人間を魔王にするのは困難かと思います。儂はカーラのような者に付いて行き、若いもんを教え導こうと思います」
そしてゼルドス派の一人も、離れて行ったのだった。
「残ったのは3名か。中立派まで居なくなるとはな」
ゼルドス派4名の中の3名。
会議室に残ったのはその人たちだけだった。
「カイ様。見苦しいところをお見せしましたな。お許しください」
「いえ、頭をあげてくださいよ。でも、これからどうするんですか?」
「それでは本題に入りましょうか。反対する者は皆、居なくなりました。カイ様、魔王になっていただけますかな?」
へ? いや、確かにいなくなったけど。
ま、まだ、心の準備が。
「ではこれより、戴冠式を執り行います」
「え、ちょ、俺オッケーって言ってな・・・」
「ではこちらにどうぞ」
強引に連れて行かれたてしまった。
引っ張られているとき、ウルリルと目が合ったが、期待に満ちたキラキラした目をしていた。
あーもう、なりますよ魔王。
なってやりますよ!
ただし、期間限定だぞ!
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