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1章 異世界の魔王 一つ目の危機
10話 顕現したぜ 天使
しおりを挟む〈それでは憑依を始めます〉
いやいや、待てい!
不死の体を持ったサリエルを倒し、一息ついたところでセラファルが変なことを言い出した。
セラファルは俺のサポートをしてくれている天使だ。
そんなセラファルが、魂が抜けたサリエルの不死の肉体に憑依すると言うのだ。
「賛成なの! セラファル様がいれば心強いの!」
この可愛い猫は俺が召喚したモンスターだ。
セラファルに逆らえないから、こう言っているんだろう。
にしても敵の魂が消えて、抜け殻になったとはいえ、それに乗り移るってどうかと思うんだがな。
抵抗ないのか?
〈ご心配には及びません。天使の受肉に耐えられる体なので、便利で都合がいいです。それに、マスターの近くでサポートできますから〉
天使が降りて来ていいのだろうか。
神に怒られるんじゃ?
〈ペリッサ様から全て許可をいただいております〉
神は公認してるのか。
ちなみに、ペリッサというのは転生神で俺を異世界に送ってくれたやつだ。
覚悟は決めないとな。
問題ないならやっていいぞ。
〈有り難きお言葉。早速、憑依いたします〉
「成功しました」
早っ!?
死んだはずのサリエルが立ち上がって、駆け寄ってきた。
しかも、満面の笑みを浮かべながら。
ギャップが凄いな。
声もサリエルのままだ。
「まずは声ですか。あ、ああ。声帯をいじりました。これで大丈夫ですか?」
いつものセラファルの声になった。
声帯をいじって声を変える天使か。
シュールだな。
「セラファルの声になったな。えっと、見た目はいじれるのか?」
「はい。あまりにも元の姿からかけ離れたものは無理ですが、多少は変えられます」
天使って万能だなー。
「翼は白く染めますね。あ、ちゃんと普段は隠しておきます。あと、胸が全然ないので、大きく・・・顔は天使っぽいあどけなさを足してみましょう」
女性がメイクをするがごとく、顔が変わっていく。
そして胸。最初はAにも満たない感じだったが、今はEくらいあるんじゃないだろうか。しかも豊胸した後の胸のような違和感はなく、自然な感じで二つの双丘がそびえ立っている。
うん、素晴らしい。
翼も純白になり、顔も愛嬌があって可愛らしくなった。
形容するなら、まさに天使という言葉がふさわしい。
いや、まあ、天使だけどさ。
「マスターの外見の好みはどんな感じでしょうか? この顔は元の私の顔ですが、マスターの理想に近づくように改造しましょう」
「別にそこまでしなくていいよ。今でもかなりの美人さんだからな」
するとセラファルの顔が火のついたように赤く染まり、瞬時に下を向いてしまった。
頭の中で話すだけだったから、こういう反応は新鮮で面白い。
今回は正直に感想を述べただけだが、次からはもうちょっとオーバーに言ったら面白そうだ。
「もう。からかわないでください!」
モジモジし始めてしまった。
「ご主人様は女ったらしなの!? エミュも気を付けないといけないの!」
お前メスなのか。
まあ話し方から判断するとそうか。
でもエミュ、さすがに猫に手を出すわけないからな。
俺を何だと思ってるんだ。
・・・あれ? エミュって帰らないのか?
「エミュって戻らないのか? もう戦闘は終わったんだぞ?」
「何を言ってるか分からないの。エミュは死ぬまでご主人様の使い魔なの」
え?
「モンスター召喚は莫大な魔力を使用する代わりに、モンスターはその命が尽きるまで主人の命令に従います。ちなみにマスターの魔力は上限がありませんから、ご心配なさらず」
ちょっと待ってくれ。
エミュを使い魔にするのはいい。
だが・・・。
「セラファル。もしあの巨人が生きてたら、俺の側にずっといたってことか?」
「あ、えっと、マスター。あの場は緊急事態だったので、先のことを考える余裕がありませんでした。申し訳ありません」
こいつ、認めやがった。
巨人と一緒に行動してたら、命がいくつあっても足りない。というか、誰にも近寄れない。
不謹慎かもしれんが、やられてくれて助かったかもな。
「まあいい。これからよろしく頼むぞ、エミュ」
「よろしくなの! ご主人様!」
「それでは、リーサさんと、ウルリルさんを出しますね」
リーサはどっかの王国の姫で、魔王城を一緒に脱出した仲だ。
ウルリルは魔王の娘で、魔王から託されて一緒に行動することになった。
二人ともサリエルとの戦闘前に、危ないからセラファルに守ってもらっていた。
「そういえば、二人をどこに匿ったんだ?」
「亜空間に放り込みました」
「すぐに出してあげなさい・・・」
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