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1章 異世界の魔王 一つ目の危機
9話 倒すぜ サリエル
しおりを挟む魔王軍の四天王サリエルに襲撃された俺は、サリエルの能力「不死」に対抗するためにモンスターを召喚した。
だが、召喚されたのは小さな猫のようなモンスター。
全身の色は淡い水色と真っ白の毛の二色。瞳は大きくクリクリとしてとても可愛らしい。
手も足もフワフワで、お世辞にも強そうには見えないモンスターだ。
特徴的なのは尻尾かな。
二本の尻尾が渦を巻くようにクルクルしている。
愛くるしいけどさ、飼うんじゃなくて戦闘で役立ってもらうために呼んだのに、この子猫はないでしょ。
「ミュ、ミュ」
あ、毛繕い始めた。
ダメだこいつ。使えない。
失敗か、まあ次がある。
今度はもっと強そうなモンスターをイメージすればいいか。
〈マスターを前にこの態度。いいでしょう、このモンスターには教育が必要ですね〉
え、ちょ、何するんだセラファル?
子猫の周りに、神々しい魔力が集まり始めた。
次の瞬間、子猫は急いで駆け寄ってきて、見事なスライディング土下座をしてみせた。
文句無しの10点をつけてあげよう。
「ミュー!」
多分、ごめんなさい、してるんだろう。
ってことで、何をしたか説明してもらおうか。
セラファル?
〈マスターに対して無礼な態度を見せたので、教育をいたしました。それよりマスター、このモンスターをお使いになられるのでしょうか?〉
う、本当にどうしよう。
もっと強そうなのが出ると思ったんだがなー。
こんな小さな猫じゃなぁ・・・。
「なぁ、子猫。あいつの動きを止められるか?」
そもそも、モンスターに言葉が通じるのだろうか。
「ミュ! ミュミュ!」
頭を上下にブンブン振っている。
これは肯定しているのかな?
〈ご主人様にエミュのお力をお見せするの! と、申しております〉
お、通訳ありがと。
天使ってモンスターの言葉が分かるんだな。
〈あ、マスターのスキル『意思疎通』をONにしていませんでした。申し訳ありません、失念しておりました〉
ってことは、俺にも分かるってことか?
〈はい。今、ONにいたしました〉
「だからお願いなの! ミンチにしないで欲しいの!」
おいセラファル。
お前こんな子猫に何てこと言ったんだ。
「分かった。ミンチにはしないから安心しろ。じゃああいつを頼んだぞ」
あれ、さっきから攻撃してこないけど、サリエルは何してるんだ?
「くっ、あとできることはあのスキルで、いや違う。この作戦じゃダメだ」
今まで作戦を考えていたのか!?
何でスキを狙ってこないんだよ。
考えるだけで時間かかりすぎだし。
「それじゃあやるの! グルグルバッシャーン!」
サリエルに向かって、大量の水が襲いかかる。
魔法はサリエルの全身に、渦を巻きながら停滞している。
「敵の動きを止めたの!」
確かに。止まっている。
水から抜け出せないってことかな。
〈あの魔法、敵に継続ダメージを与えつつ、殺すことのないように調整されています。水の渦で動けないだけだと思いきや、かなりの高等魔術です〉
セラファルが感嘆の声をあげた。
〈あれだけの継続ダメージを与えながら、この魔法は攻撃魔法に分類されませんね。マスターの魔法全反射では、防御できないかと思われます。敵にしていたら、厄介だったかもしれません。しかしマスターはダメージを受けませんが〉
マジか!?
この猫、意外と凄いのか?
「運動は苦手だけど魔法は得意なの!」
なるほど。魔法特化タイプなのか。
そういえば、魔法が得意というイメージをしたんだった。
良い即戦力だな。
さて、時間ができた。
今のうちに精神を攻撃する方法を考えよう。
〈このまま10分ほど放置すれば、心は折れるでしょう。心が折れれば、マスターのスキルで精神体を攻撃できます〉
放置するだけでいいんだ。
楽チンだなー。
ときどき聞こえてくる悲鳴を聞きながら、子猫をナデナデして時間の経過を待つ。
「もう悲鳴さえ聞こえなくなったな」
「ミュ~」
子猫はスッカリ俺に懐いてしまった。
ゴロゴロ喉を鳴らしながら、膝の上で気持ち良さそうに目を細めている。
〈そろそろいいでしょう。マスター、お願いします〉
よし、了解。
魔法を消してもらうと、ボロボロになったサリエルが姿を現した。
立っているのがやっとといった状況で、目には生気がない。
一思いにやってあげよう。
「その心を穿ち、魂を昇天させよ。『瞀乱の救済』!」
ユニークスキルを発動させると、サリエルに天から光が降り注いだ。
乱され憔悴しきったサリエルの魂は、救いの光によって浄化されたようだ。
ってことで、中身が抜けた不死の肉体だけが地面に転がった。
よし。これで終わったな。
〈それではマスターのお側でお仕えするために、サリエルの身体に憑依しますね〉
はい?
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