4 / 89
1章 異世界の魔王 一つ目の危機
3話 脱出するぜ 魔王城
しおりを挟むどこからか爆音が響く。
「ど、どど、どうなってるの!?」
隣にいるリーサが思わず声をあげた。
ここは魔王城の牢屋。
俺は魔王軍の四天王サリエルに捕らえられたが、とりあえず牢からの脱出を試みている。
どうやら、スキル『モンスター召喚』によって召喚されたモンスターが、外で暴れているようだ。
爆音も、恐らくそいつが何かをやった音だろうな。
「カイ、見て!牢の格子が崩れ始めたわ!」
碧魔石で作られていた格子が崩れ落ちた。
ちなみに碧魔石は、魔法を打ち消す強力な石らしい。ファンタジー鉱石か何かだ。
〈召喚したモンスターが、この牢を作った者を無事に倒したようです。マスター、今が好機ですので脱出しましょう〉
なるほど。とりあえず今はここを出よう。
「リーサ、出るぞ!」
「わ、分かったわ!」
外に出ると、そこには目を覆いたくなる光景が広がっていた。
遠くには山よりも大きな巨人がゆっくりとこちらに向かって歩いている。
その足下には、夥しい数の魔物。
魔物たちは巨人に攻撃をしているようだが、そんなものなど気にも止めずに歩き続ける巨人。
魔物たちは悲鳴を上げる。巨人は蟻でも踏んでいるかのように、何も気にせず歩いているようだ。
巨人は、一歩、また一歩、魔王城に近づいている。
「な、何なのよ、あの化け物。それに魔王城が大変なことになってるじゃない。なんなのよ、何が起きてるのよ・・・」
魔王城の3分の1は溶けて、地面がガラス状になっている。
まさか、巨人の攻撃でこうなったのか?
〈その通りです。牢屋を作った術者を狙い、一撃だけ魔法を撃たせました。うまくいったようで一安心です〉
そうなのか。距離はかなりあるのに、大したもんだな。
「臆するな! 敵はデカイだけでノロマな巨人。総力でかかれ!」
あ、サリエルだ。
頑張れー。
「ちょっとカイ、見つからないうちに逃げるわよ。あんなやばいの、私たちじゃ一瞬で殺されちゃうわ!」
一応聞くけど、巨人って俺を攻撃しないよな?
〈はい。巨人の攻撃はマスターに直接当たることはありませんが、間接的に被害が出る可能性はあります〉
つまり?
〈例を挙げると、巨人が魔王城を崩してしまったとき、降り注ぐ瓦礫の下にマスターがいる場合は、少しばかり被害を受けます〉
よし、さっさとここから逃げよう。
「ちょ~~っと待つのだよ。あれをやったのは君かね?」
逃げようとしたら、壮年だけど良い男感あふれるやつが登場した。
ハンサムというか、ダンディーというか、中世の英国で上流階級にいそうだな。
こいつ、俺を犯人だと思っているのか。
だが、真犯人は別にいる。
それは俺の中の・・・あれ、そういえばお前って誰?
〈自己紹介が遅れました。大天使のセラファルと申します。転生神ペリッサ様の御下命により、これから井瀬海様のサポートをさせていただきます。宜しくお願い申し上げます〉
お、おう。
お前、天使だったのか。
自己紹介遅れすぎだな。
まあ、こちらこそ宜しく。
「あれは流石の私でもヤバイのだよ。責任を取って、この子を頼むのだよ」
あ、ダンディなおじさんのこと忘れてたな。
で、こいつは何を言ってるんだ?
「ほいっ」
「なっ!?」
女の子を投げてきやがった。
間一髪キャッチには成功したが、小学生くらいの女の子を投げるなんて、こいつは悪魔か?
「それは吾輩の娘だよ。名をウルリルと言うが、気に入らなければ名前など適当につけてやってくれたまえ。それでは、あとは任せたのだよ」
へ? 任せた?
「何を言ってるかサッパリ分からない」
「それではこうしよう。それを母親の元まで連れていってくれたまえ。それの母はユニカレア王国のセシーラ女王だよ。後は君に託したよ。殺さなければ、好きに扱ってくれて構わない。では、娘を宜しく頼んだのだよ」
「ちょ、待て! どういうことだ!?」
自分勝手なことばかり言った挙句、娘を残して巨人の方へと飛んで行ってしまった。
あのおじさん、何者なんだよ。
〈先ほどの魔族は魔王ヴァイファールです〉
それを早く教えて欲しかった。
って、スキル使って確認すれば良かったのか。慣れないなぁ。
ということはこの子は魔王の娘なのか。
で、どうしたらいいんだ?
〈マスターの御心のままに〉
それって都合の良い丸投げセリフじゃないか?
マジでどうしようか。
「ま、ままま、魔王なんて、大したことなかったわね! ち、チビってなんかないんだからね! はははは、は、はは」
何を強がってるんだ、リーサ。
さて、ひとまずは魔王城から逃げようか。
「この子は・・・ほっとくわけには、いかないよな」
腕の中の幸せそうな表情で眠る女の子に目を向け、軽く溜め息をついてしまった。
0
お気に入りに追加
1,154
あなたにおすすめの小説
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
よろしくお願いいたします。
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる