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十五、柊さんにしか触られたくない
しおりを挟む「ヨハンナが待っていてくれると思うから頑張ってこれた。でも、それって怠慢だったんだね」
私の肩に頭を乗せてしがみつく。
「俺を捨てないで。……捨てないで、大好き。愛してる」
なんだろう。
本当に捨て犬みたいで。
あぁ、もうしかたない。
彼を愛しいと思う自分がいる。
だけど許してしまっていいの……?
「アルヴィン、離婚の取り消しはしない。それから二人だけで一緒に暮らして上手くいくか試せるのなら。家は買わないで。それでもいい?」
「よくない……でも、我慢する。ヨハンナの信頼がほしいから」
身体を起こして私を見下ろす。
目も鼻も赤くて、今だってまだ唇が震えている。
本当に情けなくて、みじめで……可愛い。
「ヨハンナ、キスしていい? キス、したい」
そんなこと言わずにキスしたらいいのに、と思うけどそれもまた愛おしか思えるなんて。
全部、一つ一つ私が教えてきたんだった。
「いいよ」
「ヨハンナッ!」
強く押しつけた後、唇を食んで吸って、めちゃくちゃなキス。
「んっ……!」
「団長、とは……なんでもない、よね?」
顔を上げて私をじっと見つめる。
どんな表情も見逃さないというような、あんまりにも必死な形相に私が口ごもると、
「言わないで! 全部上書きするから!」
何を言い出すのだろう。
困惑する私の着ていたものを全て脱がせる。
「裸に団長のシャツを着るなんて……! クッソずるい! そんなこと、俺だって、俺だって……」
「してほしかったの?」
同居で人の目があったから、はしたない格好なんてできなかったけれど。
「してほしい。俺のシャツ着てほしい」
「少ない荷物で家を出たから、貸してもらっていただけよ」
「それでもいやだ。……あんな姿で団長の前にいたなんて」
ヤキモチを焼く姿がおかしくて、とうとう吹き出した。
「……どうせ、俺は子どもですよ。でも、伸び代はあると思う、です」
「さっきの格好で団長の前に立ったことはないよ、それに……自分で伸び代があるっていうのは、どうかな」
拗ねる姿も子どもっぽい。
だけど、こんな彼のそばに寄り添うのも悪くないと思う自分がいる。
ただすぐにゆるすと思われたくない。
「……ヨハンナ、これからの俺をみていて。信じてほしい」
真っ直ぐ見つめられてぐっときた。
彼はこれまで私に嘘をついたことがない。
そういうところに惹かれたんだった。
「いいよ、アルヴィン。キスして」
「……っ、ヨハンナ、愛してる!」
噛みつくようなキスに、忙しなく動く彼の手。
なんだかもう、そんな拙いところまで好きになってしまったからしかたない。
彼の手が足のつけ根に触れる。
「ヨハンナ、濡れてる」
「……久しぶり、だから」
身体は正直で、慣れ親しんだアルヴィンを受け入れようとしている。
彼の指を喜んで食い締めているもの。
「そっか」
それを信じて笑う彼が愛おしい。
「団長とは何もなかったんだね。よかった……」
指を引き抜き、すぐさま陰茎を押し当てる。
「ヨハンナ」
なめらかにすべり込んで、私の好きなところにコツンと当たる。
「……んっ」
今日は熱くなるのが早いかも。
声をもらしたくなくて、アルヴィンの首に腕を回し、腰に足を絡めて引き寄せた。
「はぁ……っ。もう二度とこの腕に抱けないかと思ったよ」
私も深く息を吐いた。
「アルヴィン、好きよ」
「ヨハンナ……」
吐息混じりに吐き出された言葉が耳をくすぐる。
少しでも奥に行こうと押しつけてくるから陰核がこすれて身体が張り詰める。
「あっ……!」
思いがけず、絶頂を迎えて私の身体が大きく震えた。
驚いたアルヴィンが苦しそうに何度か呼吸したけど、そのまま私の中に吐精した。
「アルヴィン……? なんで中で出したの?」
「え? だめだった? だってこれからも俺と一緒に」
「いるけど、離婚したでしょ」
みるみるしょんぼりするけど、譲れないものは譲れない。
「ヨハンナ……でも、子どもは……欲しくない?」
「子どもは授かりものだし、もし授かったら結婚しなくても産める。お互いに上手くやれるようだったら、その時はまた話し合おう」
「……わかったよ。色々と片づけないといけない問題もあるからね。……俺、ヨハンナが結婚したいと思ってもらえるような男になるから、だから……!」
アルヴィンがごくりと唾を飲む。
「だから?」
「もう一度、抱かせて!」
子どもを授かったら、私の気も変わると思っているのかな。
わかりやすい、そして単純。
馬鹿な子。
その通りになるかはわからないけど、今くらいすべてを忘れてもいいかも。
言わないけどあさってにも月のものが来る予定だから。
「いいよ。一度だけね」
「好きだ、ヨハンナ!」
アルヴィンがぱぁっと明るい笑顔を浮かべた。
再び大きくなった陰茎が私をかき乱す。
これまでと同じはずなのに、自宅じゃないから気兼ねなく抱き合える。
腰が浮くほど持ち上げられて、深く大きく突き挿れて。
「あっ、はぁ、アル、ヴィンっ!」
彼は嬉しそうな顔で私を見下ろし、勢いよく揺さぶり始めた。
「ヨハンナの声、いっぱい聴きたい」
「や、もう。十分、だからっ、ぁあっ!」
子宮口に当たるように何度も突き込むから目の前が真っ白になる。
「……ああぁぁっ‼︎」
「っ、ヨハンナ、気持ち、いいっ……イきたくないっ!」
私が達して彼の射精を促すように、内壁がうごめく。
しばらく抵抗した彼も、グッと腰を押しつけてかたまった。
温かいものがなかに拡がり、彼が脚を下ろす。
そのまま私を腕の中に閉じ込めて、息が整うと言った。
「大好きだ。死ぬまで離さないから。今日はここに泊まって、二人きりでゆっくりしよう。団長が俺と合わせて休みにしていいって。だから……一週間ずっと一緒にいられるよ」
「え?」
「だから、一緒に住む家を決めよう」
「その前に服と靴がほしい」
「俺が買ってくるから!」
キラキラした目でアルヴィンがまっすぐ愛情を向けてくる。
隣にいて寄り添う、というより手綱を握ったほうがいいのかもしれない。
そんなことを思いながら、私は頷いた。
アルヴィンエンド 終
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