1 / 39
第一部 第一章
プロローグ
しおりを挟む
「今日はこいつな。彼女とヤルにも童貞だと恥ずかしいんだとよ」
珍しく声をかけられた。
タカシに連れられてきた男に視線を向けた。そいつは学校で何度か顔を見たことのある同級生。
タカシが立ち去った、無音の俺の部屋。
俺は立ち尽くしているその童貞野郎のベルトに手をかけ前を開けると、緊張で縮こまった性器を持ち上げ、口に含んだ。
『俺と付き合って欲しい』
タカシは言った。
あれほど嬉しいと思った瞬間はなかった。
ずっと誰にも打ち明けられない恋心をタカシに抱いていたから。
何度か体を重ねた。
セックスは痛いものだった。全く気持ちいいものじゃなかった。後ろで気持ちよくなれるなんて幻想だった。
けれど、タカシが俺に突っ込んで息を弾ませて腰を振るのが嬉しかった。中だしされるのは苦痛だったけれど、俺で気持ちよくなってくれたと思うと、幸せだった。
数回の行為の後の怠さと痛さに耐えていると、タカシが部屋に誰かを招き入れた。
その時から、この『遊び』は始まった。
タカシに見られながら、数人の男に犯され、写真とビデオを撮られた。
それ以来、タカシは誰かを連れて来ては、そいつを置いて部屋を去る。
それは無言の命令。
俺は売られてる。
金のやり取りを何度か見たことがある。
断ることなんてできない。
一言でも否定する言葉を発すれば、待っているのは立ち上がれなくなるほどの暴力。
そして、俺の犯されている写真をちらつかせながら、タカシは言う。
『愛してるよ、リョウ』
童貞野郎は本当に三擦り半で終了したため、体が楽だった。今日は晩飯の品数を増やすか、と、そんなことを考えられる程度に。
母子家庭である俺の家では、家事は俺の仕事だ。
携帯が振動し、着信を告げる。
見たことのない電話番号を不審に思いながらも、受話ボタンを押して耳に当てた。
―――なんで、こうなるんだろう。
俺は橋の欄干に座り、足をブラブラと動かした。
もちろん下には昨日の雨の所為で水かさが増した川。
聞かされたのは、母の死。
交通事故だった。即死だった。
飛び込むのはやっぱり怖い。
死にたいと思っても、体が竦む。
ひらりと、目の前に蝶が飛んできた。
ああ、こいつについて行けばいいのか。
俺はそれを追うようにその濁流に身を投げた。
珍しく声をかけられた。
タカシに連れられてきた男に視線を向けた。そいつは学校で何度か顔を見たことのある同級生。
タカシが立ち去った、無音の俺の部屋。
俺は立ち尽くしているその童貞野郎のベルトに手をかけ前を開けると、緊張で縮こまった性器を持ち上げ、口に含んだ。
『俺と付き合って欲しい』
タカシは言った。
あれほど嬉しいと思った瞬間はなかった。
ずっと誰にも打ち明けられない恋心をタカシに抱いていたから。
何度か体を重ねた。
セックスは痛いものだった。全く気持ちいいものじゃなかった。後ろで気持ちよくなれるなんて幻想だった。
けれど、タカシが俺に突っ込んで息を弾ませて腰を振るのが嬉しかった。中だしされるのは苦痛だったけれど、俺で気持ちよくなってくれたと思うと、幸せだった。
数回の行為の後の怠さと痛さに耐えていると、タカシが部屋に誰かを招き入れた。
その時から、この『遊び』は始まった。
タカシに見られながら、数人の男に犯され、写真とビデオを撮られた。
それ以来、タカシは誰かを連れて来ては、そいつを置いて部屋を去る。
それは無言の命令。
俺は売られてる。
金のやり取りを何度か見たことがある。
断ることなんてできない。
一言でも否定する言葉を発すれば、待っているのは立ち上がれなくなるほどの暴力。
そして、俺の犯されている写真をちらつかせながら、タカシは言う。
『愛してるよ、リョウ』
童貞野郎は本当に三擦り半で終了したため、体が楽だった。今日は晩飯の品数を増やすか、と、そんなことを考えられる程度に。
母子家庭である俺の家では、家事は俺の仕事だ。
携帯が振動し、着信を告げる。
見たことのない電話番号を不審に思いながらも、受話ボタンを押して耳に当てた。
―――なんで、こうなるんだろう。
俺は橋の欄干に座り、足をブラブラと動かした。
もちろん下には昨日の雨の所為で水かさが増した川。
聞かされたのは、母の死。
交通事故だった。即死だった。
飛び込むのはやっぱり怖い。
死にたいと思っても、体が竦む。
ひらりと、目の前に蝶が飛んできた。
ああ、こいつについて行けばいいのか。
俺はそれを追うようにその濁流に身を投げた。
3
お気に入りに追加
527
あなたにおすすめの小説
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。


番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる