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本編
さんじゅーよん*
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先輩の部屋に居候し始めてそろそろ一月。夏休みももう目前。
夏休みまで寮に引きこもってるのは流石に先輩にも悪いとは思うんだけど、ヒキコモリはどうしようもないみたい。
ただ、今までとは比べ物にならないくらい順調に克服していってると思う。
まだ寮の入り口まで来て外を見ると、やっぱり足がすくんじゃうんだけどねー。
「今日はここまでにしような」
「うん。ごめんね、宗ちゃん」
「気にすんなって。このハードルが高いのはよくわかるし」
宗ちゃんはニカッと笑いながら、エレベーターのボタンを押した。
先輩が委員会に行ってる時はこうして宗ちゃんが来て、僕の面倒を見てくれる。
気にすんなっていつも言ってくれるけど、先輩に頼まれて渋々引き受けてくれたんだと思う。部活もあるはずなのに、ホント申し訳ない。
大和先輩とは何度か外に出るの挑戦してるけど、結局一歩外に出た途端に発作が起きてその度に迷惑かけちゃってさ…。はぁ、溜息しか出ないよね。
「梓ちゃーん」
「いたいたー」
談話室のソファーに座ってる僕達に話しかけて来たのは、放送委員と保健委員のトップ二人。
大和先輩と寮内をウロウロして少しずつ慣らしていたのを何人かに目撃されて以来、委員長副委員長の皆様方が五階によく顔を出すようになった。皆珍しいもの好きだねー。
こうして話しかけてくれるんだけど、皮を被らなくなった今、人との付き合いが苦手過ぎて、曖昧に頷いたり、愛想笑いしたりしかできないんだよね。それに押しの強い人ばっかりで、若干怖かったりする…。いい人なんだけどね。
大和先輩が付いててくれるから、僕は黙って横から話を聞いたりしてるだけの事が多いんだけどさ。
「今日は瀧元だけじゃん。ラッキー」
「瀧元は向こう行ってろよ」
「いやです! 先輩ら、昨日も来てたじゃないですか!」
「おまえも昨日いただろー。お互い様じゃん」
「う…」
「大和がいない時は梓ちゃんは皆のモンなの」
大和先輩がいない時は宗ちゃんが傍にいてくれるけど、やっぱり先輩方には逆らえないっていうか太刀打ちできないって言うか。
宗ちゃんはしぶしぶ僕の横から向かいのソファーに移動しながらも、先輩方をしっかり監視してる。少し話すぐらいは問題ないと思うんだけど。
それに発作が起きた時用に先輩直通のGPS機能付き防犯アラームを渡されてるしね。
ま、ひきこもりで大和先輩のヒモ状態の僕に興味があるだけだろうし、そろそろ飽きてくるんじゃないかな。
「梓ちゃんって、総慎学園に行ってたんだっけ?」
うわー、そんなことまで知ってるの…?
まあ、知られて困るものでもないし、いいんだけど。ただ嫌な思い出が多すぎて、それが頭に蘇ってくるのが辛い。
「先輩! 槙野関係の話は辞めてください!」
宗ちゃん…。宗ちゃんって色んな意味ですごいよね。真面目で誠実なのに抜けてるって言うか…。バッチリ槙野って言ってるの宗ちゃんだし…。
「槙野の話しても問題ないだろ? 梓ちゃんと槙野はもう何の関係もないって、学内では周知の事実だしよ」
「そそ。俺たちは梓ちゃんと仲良く学園生活を楽しみたいだけなわけ。槙野になんて一切気がないから、わざわざ避けるようなこともしたくないんだよな。避ける方が気にしてるってことだろ」
「気を使われる方が反対に辛い時もあったりするんだよ。こういう時は楽しいことに塗り替えて行った方が良いってことよ」
うんうんと先輩は二人で納得して頷いていた。
先輩たちが言うことも一理あるよね。気を使われてるのが分かると申し訳なくなって凹んでくるし。
「宗ちゃん、大丈夫だって。もう初等部の事だし、ヘーキ」
ホントか?、って宗ちゃんは疑い深い表情で僕を見てくる。大和先輩といい、宗ちゃんといい僕の言う事基本的に信じてくれないよねー。
「マジで総慎にいたの?」
宗ちゃんとのやり取りをほぼ無視する形で「惜っしー」と言ったのは、保健委員長。
「はい。初等部だけですけど…」
「なんでこっち来なかったんだよー」
僕もそう思うー。
こっちに来てたら、もっと先輩と早く会えてたってことだし。……でも、あの事件がなかったら、先輩と関わることなんてなかったよね。僕なんてその他大勢の一人に過ぎないモブだしさ。
「ここに初等部から入っといてくれてたら、大和に独り占めなんてさせなかったのになー」
「だなー。――あ、初等部時代の大和みたら驚くだろーなー。梓ちゃんもホント惜しいことしたって!」
「初等部の時の大和先輩?」
「そー。超絶可愛いから」
え、可愛い? あの大和先輩が? かっこいいんじゃなくて?
全然想像つかないんだけど。
「あ、俺、写真持ってる」
「マジかよ。おまえもしかしてファンクラブ会員?」
「もう退会した。さすがに今の大和には萌えないだろ」
「って会員だったんかい!」
「え、なんすかそのファンクラブって」
「あれ、瀧元、知らない? ま、俺らが初等部ん時、高等部の先輩が作ったやつだったしな。大和ちゃんを愛でる会ってな」
「大和ちゃんを愛でる会!?」
なにそれ、めちゃくちゃ興味ある!
「そー。これこれ。梓ちゃんもこれは知っとくべきだわ。これ見て自分の容姿に自信失くすのは全員共通することだから、気にすんな」
そういいながら、手帳の中にしまってある写真を一枚僕に手渡してくる先輩。
そこに写ってたのは、緩く天パの入ったブロンドの髪に零れ落ちそうなほど大きくクリっとした目の女の子にも見えるなんとも可愛らしい出で立ちの少年。
その子がこちらを見てにっこりと笑顔を浮かべていて、その表情に惹きつけられる。
な、なに、この可愛さ。
胸がキュンキュンする。今すぐ抱きしめてキスしたいっていう変態的な欲求が疼いちゃう。ショタコンに目覚めそうな勢いだよ…。
え、で、これが先輩? ホントのホントに?
衝撃が顔に出てたらしい。
委員長二人がケタケタと笑って、「そうなるよなー」ってお腹を抱えてた。
僕の反応に宗ちゃんも興味津々で写真を見て、過去の記憶が蘇ったらしく、「あー、こんなんだったよな…」と苦笑い。
「正真正銘、都賀大和な」
「んで、奥にいるのが万里」
ピントがぼけてるけど、確かにその少年の向こうにもう一人金髪の男の子がいる。
あれ? 金髪?
そうだよ。先輩って黒髪なんだけど。
「この時の容姿が大和にとってコンプレックスなんだよなー。高学年になってから武道に励んで脱ショタ。中学入ってからはその勢いが増して、髪も染めて、ニョキニョキ背も伸びてあっという間に今の大和になってさ」
あ、そういう事なんだ…。先輩、髪染めてたんだ。金髪の先輩も見たかったりするなぁ。
「残念過ぎるよな。素直に成長してたら、万里みたいな感じになったんだろうけどなぁ」
「大和も今は正当な方向でモテてるから、本人としては良いんじゃね?」
「――何がいいんだ?」
若干不機嫌に聞こえる声に全員が談話室の入り口を振り返った。
そこにはやっぱり先輩。
ヤバ、と放送委員長が僕の手から写真を奪うように取って、そそくさと手帳にしまい、大和先輩に誤魔化すような笑みを送ってた。なんせコンプレックスだからね。
がっつり眉間にシワが入ってる。写真見られてないはずだし、嫌なことがあったのかもしれない。
「センパイ、おかーえり。今日何かあった?」
「……いや。何でもない」
先輩はなんともいえない複雑な顔をしながらも、駆け寄った僕の腰を引き寄せて、額にキスしてくれた。
身長低いの結構嫌だったけど、この高さで良かったって今なら思えるよねー。
まあ、人前ですると恥ずかしいけど、先輩は全然気にしてなさそうだから、僕も慣れてきた…。閑さんとエレナさんも堂々とラブラブしてるし、それ見て育つと平気なのかも。
「ったく、熱い熱い。ごっそーさん」
「毎回見せつけなくてもいいって」
「見たくなければ、帰れ。それに毎日来るな」
「昨日、大和がいて梓ちゃんと話せなかったんだからしかたないだろ」
「あのな、それよりも委員会に顔を出せ。おまえらがアズサに構ってることで、委員会の仕事に支障が出れば、アズサが問題視されるんだからな」
「わかっておりますとも、風紀委員長様。そうならないようにキチンと手配しておりますから」
委員長さん二人はへらりと笑って、ピリピリすんなよ、と大和先輩を宥めた。
「いいから、帰れ。今日は面会終了だ」
先輩は追い出すように委員長さんたちをエレベーターに詰め込んで深ーい溜息を吐いた。うーん、イライラしてるよね? やっぱり何かあったのかなぁ?
その後、宗ちゃんを晩御飯に誘ったんだけど、遠慮します!、って逃げるみたいに帰って行っちゃった。原因は先輩の機嫌の悪さだと思うけど。
珍しいよね、こんな思いっきり外に感情が出てるのも。
部屋に戻った途端、背後からぎゅーって抱きしめられて、唇が首筋をなぞった。背中にぞくぞくって電気が走って声が出そうになるのを抑えて、顔だけ振り向くと、顎を取られてキス。
「…ん、……ぅ、ん…」
先輩?
珍しく荒っぽいキス。口の中で蠢く舌に翻弄されて、体が跳ねる。
「悪い」
余韻を味わうようにゆっくりと離れた先輩が呟くようにそう言った。何についての謝罪なのかは、シャツの裾から入って来た先輩の手で分かった。
わき腹をなぞり、僕のちっちゃい胸の突起を撫で、指で挟むように愛撫してくる。最近開発されちゃったから、抓られただけで腰砕けになっちゃう。
「…あっ…、センパイっ……ん、ぁあっ…」
僕は目の前にあったダイニングテーブルに手を付いて、快感に震える体を支えた。
もう完全にスイッチ入っちゃったし、久しぶりに強引なセックスできるとか超興奮! ちょっとSっ気のある先輩も好きなんだからしょーがないよねー。
ずっと優しいセックスだったからね。物足りないわけじゃないけど、激しく欲情されてると思うと、嬉しいもん。
テーブルに押し付けられて、背中を先輩の手と唇が這う。こそばいのと気持ちいいのが混ざって、ゾクゾクする。
いつの間にかズボンが脱がされて、秘密の場所に先輩のローションを纏った指が侵入。わざと音たててるのかっていうぐらいクチュクチュ聞こえて、厭らしすぎるよ…。
それに完全に前立腺狙ってきてるから、もう声が抑えられない。
「ぁ…あ、…んぁっ…」
「…アズサ」
「……や、ぁ――っ!」
中解されてしこりグイグイ刺激されてる上、乳首弄られながら、耳齧って吐息混じりの声聞かされたら、無事なわけがないよね。目の前がフラッシュたいたみたいにチカチカして、意志に反して体がビクビク跳ねる。
気持ちよすぎるよぉ…。
エッチスタートしてから最短でイッたかも。
しかも息が上がりっぱなしの僕の後ろに早々に宛がわれる先輩の巨根。先輩がどれだけ優しくても、この大きさだけは優しくない。
人が勃起してるのって、他にあのピアス男たちのしか見たことないけど、センパイのってね…――うん、デカいの。改めて思い出してみて、なんか笑えてきちゃってさ。
今度あんなふうにされるようなことがあれば、この貧弱!って罵ってやろーとか考えられるようになったのは、やっぱり先輩のおかげ。
一番太い傘の部分が中に入っちゃえば、もう後は楽勝。――でもなかったりする。僕にとっては快感の波が止まないオーガズムタイム。
だって、隅々まで行き届く感じなんだもん…。
「あぁぁ…、はぁ…っ…ん…」
ゆっくりゆっくり奥まで到達して、じわりじわり引き抜く。中にいる先輩の熱を否が応でも感じさせられる動きがエロくて堪らない。
「これ好きだろ」
「…ン、ぁっ……す、き…」
大好き。
先輩の意地悪な声も大好き。
「ギュウギュウ締め付けてくるもんな」
そう言った先輩にお尻の割れ目を広げられて…、な、何すんの! 恥ずかしすぎるよ…。先輩のを飲み込んでる穴をまじまじと見られてる視線を感じて、全身がかぁーって熱くなる。
やっぱ先輩、ノリノリ?
「くそっ」
あれ?
なんか前も聞いたことある。エッチしながらの「くそっ」。
そう思った瞬間、先輩が何か想いをぶつけるように、ガンガン激しく突いてくる。
「ひ、あっ、ン、はっ、や、ぁ」
テーブルに突っ伏したまま、後ろから……た、立バックってやつだよ!
角度が良すぎて、ずっとイイトコ当たりっぱなし。気持ちよすぎて頭おかしくなりそう。頭の中、快感に埋め尽くされて、テーブルクロスを必死で掴んでアンアン言うしかできない。クロスも色んな汁で悲惨なことになってるよねー。主に僕のだけど…。
突かれるたびにテーブルがずれるのが、激しさを物語ってて、興奮度MAX。
「あァ、ああっ……ン、ああ、あああァ――っ!」
「アズサ、アズサっ」
頭真っ白で体をガクガク痙攣させてる僕の最奥に押し込むように射精した後、背中に覆いかぶさってくる先輩。
首筋に先輩のはぁはぁと荒い吐息があたって、ビクビク体が跳ねる。全部の刺激が快感に切り替わって辛い。ゾクゾクするよぉ…。
少し息が整ってきたと思えば、また中で主張してくる先輩の剛直。しかもそのまま動こうとする先輩。この角度ホントにヤバいからダメ。それに先輩のエロい顔見たい。
「…セン、パイ…、まって…、上向い――」
僕が言い終わらない内にテーブルの上でくるっと仰向けにされて、脚をぐいっと押し曲げられた途端に押し当てられ、ヤラシイぬめりの所為で抵抗もなく入ってくるソレ。
「んんぁっ! あ、あっ」
激しいよぉ!
ああ! こっちもダメだった!
前立腺にぐりぐり当たるよぉ!!
「アズサっ」
噛みつくみたいなキスをされて、先輩の舌が口内で暴れまわる。焼き切れそうな快感。わけわかんない。
先輩の舌に自分のを絡めて、もっともっとってキスをねだってしまう。
しがみ付いて、汗だくになって、それでもまだ止まらない旋律。
先輩の体力には流石に敵わず、何回目かの絶頂で僕の意識はぶっ飛んだ。
先輩の絶倫度合いをイヤというほど思い知った日だった。
……あの可愛い少年からは想像もできないよねぇ…。
夏休みまで寮に引きこもってるのは流石に先輩にも悪いとは思うんだけど、ヒキコモリはどうしようもないみたい。
ただ、今までとは比べ物にならないくらい順調に克服していってると思う。
まだ寮の入り口まで来て外を見ると、やっぱり足がすくんじゃうんだけどねー。
「今日はここまでにしような」
「うん。ごめんね、宗ちゃん」
「気にすんなって。このハードルが高いのはよくわかるし」
宗ちゃんはニカッと笑いながら、エレベーターのボタンを押した。
先輩が委員会に行ってる時はこうして宗ちゃんが来て、僕の面倒を見てくれる。
気にすんなっていつも言ってくれるけど、先輩に頼まれて渋々引き受けてくれたんだと思う。部活もあるはずなのに、ホント申し訳ない。
大和先輩とは何度か外に出るの挑戦してるけど、結局一歩外に出た途端に発作が起きてその度に迷惑かけちゃってさ…。はぁ、溜息しか出ないよね。
「梓ちゃーん」
「いたいたー」
談話室のソファーに座ってる僕達に話しかけて来たのは、放送委員と保健委員のトップ二人。
大和先輩と寮内をウロウロして少しずつ慣らしていたのを何人かに目撃されて以来、委員長副委員長の皆様方が五階によく顔を出すようになった。皆珍しいもの好きだねー。
こうして話しかけてくれるんだけど、皮を被らなくなった今、人との付き合いが苦手過ぎて、曖昧に頷いたり、愛想笑いしたりしかできないんだよね。それに押しの強い人ばっかりで、若干怖かったりする…。いい人なんだけどね。
大和先輩が付いててくれるから、僕は黙って横から話を聞いたりしてるだけの事が多いんだけどさ。
「今日は瀧元だけじゃん。ラッキー」
「瀧元は向こう行ってろよ」
「いやです! 先輩ら、昨日も来てたじゃないですか!」
「おまえも昨日いただろー。お互い様じゃん」
「う…」
「大和がいない時は梓ちゃんは皆のモンなの」
大和先輩がいない時は宗ちゃんが傍にいてくれるけど、やっぱり先輩方には逆らえないっていうか太刀打ちできないって言うか。
宗ちゃんはしぶしぶ僕の横から向かいのソファーに移動しながらも、先輩方をしっかり監視してる。少し話すぐらいは問題ないと思うんだけど。
それに発作が起きた時用に先輩直通のGPS機能付き防犯アラームを渡されてるしね。
ま、ひきこもりで大和先輩のヒモ状態の僕に興味があるだけだろうし、そろそろ飽きてくるんじゃないかな。
「梓ちゃんって、総慎学園に行ってたんだっけ?」
うわー、そんなことまで知ってるの…?
まあ、知られて困るものでもないし、いいんだけど。ただ嫌な思い出が多すぎて、それが頭に蘇ってくるのが辛い。
「先輩! 槙野関係の話は辞めてください!」
宗ちゃん…。宗ちゃんって色んな意味ですごいよね。真面目で誠実なのに抜けてるって言うか…。バッチリ槙野って言ってるの宗ちゃんだし…。
「槙野の話しても問題ないだろ? 梓ちゃんと槙野はもう何の関係もないって、学内では周知の事実だしよ」
「そそ。俺たちは梓ちゃんと仲良く学園生活を楽しみたいだけなわけ。槙野になんて一切気がないから、わざわざ避けるようなこともしたくないんだよな。避ける方が気にしてるってことだろ」
「気を使われる方が反対に辛い時もあったりするんだよ。こういう時は楽しいことに塗り替えて行った方が良いってことよ」
うんうんと先輩は二人で納得して頷いていた。
先輩たちが言うことも一理あるよね。気を使われてるのが分かると申し訳なくなって凹んでくるし。
「宗ちゃん、大丈夫だって。もう初等部の事だし、ヘーキ」
ホントか?、って宗ちゃんは疑い深い表情で僕を見てくる。大和先輩といい、宗ちゃんといい僕の言う事基本的に信じてくれないよねー。
「マジで総慎にいたの?」
宗ちゃんとのやり取りをほぼ無視する形で「惜っしー」と言ったのは、保健委員長。
「はい。初等部だけですけど…」
「なんでこっち来なかったんだよー」
僕もそう思うー。
こっちに来てたら、もっと先輩と早く会えてたってことだし。……でも、あの事件がなかったら、先輩と関わることなんてなかったよね。僕なんてその他大勢の一人に過ぎないモブだしさ。
「ここに初等部から入っといてくれてたら、大和に独り占めなんてさせなかったのになー」
「だなー。――あ、初等部時代の大和みたら驚くだろーなー。梓ちゃんもホント惜しいことしたって!」
「初等部の時の大和先輩?」
「そー。超絶可愛いから」
え、可愛い? あの大和先輩が? かっこいいんじゃなくて?
全然想像つかないんだけど。
「あ、俺、写真持ってる」
「マジかよ。おまえもしかしてファンクラブ会員?」
「もう退会した。さすがに今の大和には萌えないだろ」
「って会員だったんかい!」
「え、なんすかそのファンクラブって」
「あれ、瀧元、知らない? ま、俺らが初等部ん時、高等部の先輩が作ったやつだったしな。大和ちゃんを愛でる会ってな」
「大和ちゃんを愛でる会!?」
なにそれ、めちゃくちゃ興味ある!
「そー。これこれ。梓ちゃんもこれは知っとくべきだわ。これ見て自分の容姿に自信失くすのは全員共通することだから、気にすんな」
そういいながら、手帳の中にしまってある写真を一枚僕に手渡してくる先輩。
そこに写ってたのは、緩く天パの入ったブロンドの髪に零れ落ちそうなほど大きくクリっとした目の女の子にも見えるなんとも可愛らしい出で立ちの少年。
その子がこちらを見てにっこりと笑顔を浮かべていて、その表情に惹きつけられる。
な、なに、この可愛さ。
胸がキュンキュンする。今すぐ抱きしめてキスしたいっていう変態的な欲求が疼いちゃう。ショタコンに目覚めそうな勢いだよ…。
え、で、これが先輩? ホントのホントに?
衝撃が顔に出てたらしい。
委員長二人がケタケタと笑って、「そうなるよなー」ってお腹を抱えてた。
僕の反応に宗ちゃんも興味津々で写真を見て、過去の記憶が蘇ったらしく、「あー、こんなんだったよな…」と苦笑い。
「正真正銘、都賀大和な」
「んで、奥にいるのが万里」
ピントがぼけてるけど、確かにその少年の向こうにもう一人金髪の男の子がいる。
あれ? 金髪?
そうだよ。先輩って黒髪なんだけど。
「この時の容姿が大和にとってコンプレックスなんだよなー。高学年になってから武道に励んで脱ショタ。中学入ってからはその勢いが増して、髪も染めて、ニョキニョキ背も伸びてあっという間に今の大和になってさ」
あ、そういう事なんだ…。先輩、髪染めてたんだ。金髪の先輩も見たかったりするなぁ。
「残念過ぎるよな。素直に成長してたら、万里みたいな感じになったんだろうけどなぁ」
「大和も今は正当な方向でモテてるから、本人としては良いんじゃね?」
「――何がいいんだ?」
若干不機嫌に聞こえる声に全員が談話室の入り口を振り返った。
そこにはやっぱり先輩。
ヤバ、と放送委員長が僕の手から写真を奪うように取って、そそくさと手帳にしまい、大和先輩に誤魔化すような笑みを送ってた。なんせコンプレックスだからね。
がっつり眉間にシワが入ってる。写真見られてないはずだし、嫌なことがあったのかもしれない。
「センパイ、おかーえり。今日何かあった?」
「……いや。何でもない」
先輩はなんともいえない複雑な顔をしながらも、駆け寄った僕の腰を引き寄せて、額にキスしてくれた。
身長低いの結構嫌だったけど、この高さで良かったって今なら思えるよねー。
まあ、人前ですると恥ずかしいけど、先輩は全然気にしてなさそうだから、僕も慣れてきた…。閑さんとエレナさんも堂々とラブラブしてるし、それ見て育つと平気なのかも。
「ったく、熱い熱い。ごっそーさん」
「毎回見せつけなくてもいいって」
「見たくなければ、帰れ。それに毎日来るな」
「昨日、大和がいて梓ちゃんと話せなかったんだからしかたないだろ」
「あのな、それよりも委員会に顔を出せ。おまえらがアズサに構ってることで、委員会の仕事に支障が出れば、アズサが問題視されるんだからな」
「わかっておりますとも、風紀委員長様。そうならないようにキチンと手配しておりますから」
委員長さん二人はへらりと笑って、ピリピリすんなよ、と大和先輩を宥めた。
「いいから、帰れ。今日は面会終了だ」
先輩は追い出すように委員長さんたちをエレベーターに詰め込んで深ーい溜息を吐いた。うーん、イライラしてるよね? やっぱり何かあったのかなぁ?
その後、宗ちゃんを晩御飯に誘ったんだけど、遠慮します!、って逃げるみたいに帰って行っちゃった。原因は先輩の機嫌の悪さだと思うけど。
珍しいよね、こんな思いっきり外に感情が出てるのも。
部屋に戻った途端、背後からぎゅーって抱きしめられて、唇が首筋をなぞった。背中にぞくぞくって電気が走って声が出そうになるのを抑えて、顔だけ振り向くと、顎を取られてキス。
「…ん、……ぅ、ん…」
先輩?
珍しく荒っぽいキス。口の中で蠢く舌に翻弄されて、体が跳ねる。
「悪い」
余韻を味わうようにゆっくりと離れた先輩が呟くようにそう言った。何についての謝罪なのかは、シャツの裾から入って来た先輩の手で分かった。
わき腹をなぞり、僕のちっちゃい胸の突起を撫で、指で挟むように愛撫してくる。最近開発されちゃったから、抓られただけで腰砕けになっちゃう。
「…あっ…、センパイっ……ん、ぁあっ…」
僕は目の前にあったダイニングテーブルに手を付いて、快感に震える体を支えた。
もう完全にスイッチ入っちゃったし、久しぶりに強引なセックスできるとか超興奮! ちょっとSっ気のある先輩も好きなんだからしょーがないよねー。
ずっと優しいセックスだったからね。物足りないわけじゃないけど、激しく欲情されてると思うと、嬉しいもん。
テーブルに押し付けられて、背中を先輩の手と唇が這う。こそばいのと気持ちいいのが混ざって、ゾクゾクする。
いつの間にかズボンが脱がされて、秘密の場所に先輩のローションを纏った指が侵入。わざと音たててるのかっていうぐらいクチュクチュ聞こえて、厭らしすぎるよ…。
それに完全に前立腺狙ってきてるから、もう声が抑えられない。
「ぁ…あ、…んぁっ…」
「…アズサ」
「……や、ぁ――っ!」
中解されてしこりグイグイ刺激されてる上、乳首弄られながら、耳齧って吐息混じりの声聞かされたら、無事なわけがないよね。目の前がフラッシュたいたみたいにチカチカして、意志に反して体がビクビク跳ねる。
気持ちよすぎるよぉ…。
エッチスタートしてから最短でイッたかも。
しかも息が上がりっぱなしの僕の後ろに早々に宛がわれる先輩の巨根。先輩がどれだけ優しくても、この大きさだけは優しくない。
人が勃起してるのって、他にあのピアス男たちのしか見たことないけど、センパイのってね…――うん、デカいの。改めて思い出してみて、なんか笑えてきちゃってさ。
今度あんなふうにされるようなことがあれば、この貧弱!って罵ってやろーとか考えられるようになったのは、やっぱり先輩のおかげ。
一番太い傘の部分が中に入っちゃえば、もう後は楽勝。――でもなかったりする。僕にとっては快感の波が止まないオーガズムタイム。
だって、隅々まで行き届く感じなんだもん…。
「あぁぁ…、はぁ…っ…ん…」
ゆっくりゆっくり奥まで到達して、じわりじわり引き抜く。中にいる先輩の熱を否が応でも感じさせられる動きがエロくて堪らない。
「これ好きだろ」
「…ン、ぁっ……す、き…」
大好き。
先輩の意地悪な声も大好き。
「ギュウギュウ締め付けてくるもんな」
そう言った先輩にお尻の割れ目を広げられて…、な、何すんの! 恥ずかしすぎるよ…。先輩のを飲み込んでる穴をまじまじと見られてる視線を感じて、全身がかぁーって熱くなる。
やっぱ先輩、ノリノリ?
「くそっ」
あれ?
なんか前も聞いたことある。エッチしながらの「くそっ」。
そう思った瞬間、先輩が何か想いをぶつけるように、ガンガン激しく突いてくる。
「ひ、あっ、ン、はっ、や、ぁ」
テーブルに突っ伏したまま、後ろから……た、立バックってやつだよ!
角度が良すぎて、ずっとイイトコ当たりっぱなし。気持ちよすぎて頭おかしくなりそう。頭の中、快感に埋め尽くされて、テーブルクロスを必死で掴んでアンアン言うしかできない。クロスも色んな汁で悲惨なことになってるよねー。主に僕のだけど…。
突かれるたびにテーブルがずれるのが、激しさを物語ってて、興奮度MAX。
「あァ、ああっ……ン、ああ、あああァ――っ!」
「アズサ、アズサっ」
頭真っ白で体をガクガク痙攣させてる僕の最奥に押し込むように射精した後、背中に覆いかぶさってくる先輩。
首筋に先輩のはぁはぁと荒い吐息があたって、ビクビク体が跳ねる。全部の刺激が快感に切り替わって辛い。ゾクゾクするよぉ…。
少し息が整ってきたと思えば、また中で主張してくる先輩の剛直。しかもそのまま動こうとする先輩。この角度ホントにヤバいからダメ。それに先輩のエロい顔見たい。
「…セン、パイ…、まって…、上向い――」
僕が言い終わらない内にテーブルの上でくるっと仰向けにされて、脚をぐいっと押し曲げられた途端に押し当てられ、ヤラシイぬめりの所為で抵抗もなく入ってくるソレ。
「んんぁっ! あ、あっ」
激しいよぉ!
ああ! こっちもダメだった!
前立腺にぐりぐり当たるよぉ!!
「アズサっ」
噛みつくみたいなキスをされて、先輩の舌が口内で暴れまわる。焼き切れそうな快感。わけわかんない。
先輩の舌に自分のを絡めて、もっともっとってキスをねだってしまう。
しがみ付いて、汗だくになって、それでもまだ止まらない旋律。
先輩の体力には流石に敵わず、何回目かの絶頂で僕の意識はぶっ飛んだ。
先輩の絶倫度合いをイヤというほど思い知った日だった。
……あの可愛い少年からは想像もできないよねぇ…。
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※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
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灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
王道学園なのに会長だけなんか違くない?
ばなな
BL
※更新遅め
この学園。柵野下学園の生徒会はよくある王道的なも
のだった。
…だが会長は違ったーー
この作品は王道の俺様会長では無い面倒くさがりな主人公とその周りの話です。
ちなみに会長総受け…になる予定?です。
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αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
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山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
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