僕って一途だから

珈琲きの子

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本編

さんじゅー*

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 僕の気が変わらない内にって、養子になるための諸手続きもあっという間に済まされ、後は審判が下るのを待つだけになった。
 それに僕が不安に思ってた賠償金のこととか、元父のこととかちゃんと話したらしっかりと調べてくれた。その上で、事細かに説明してくれた。

 僕は元父の愛人の子供として認知されてたけど、それがDNA鑑定で無効になったこと。認知されてた間の養育費に関しては僕が返す必要はないこと。元母に対する慰謝料も僕が支払うものではないということ。
 だから僕が負うべきものは何もなくて、まっさらな状態だって、そういってくれた。

 肩の荷が下りたっていうのかな。
 愛人の子って聞いた時には驚いたけど、母さんが僕を毛嫌いするのも当たり前だったんだって、母さんも僕を見るのがきっと辛かったんだろうなって、何となくわかるし…。
 それに、先輩や養父母になってくれる閑さんとエレナさんに迷惑が掛からないんだってわかって、それだけが心配だった僕はホッとしまくった。
 先輩にも過去の心配はしなくていいって、前だけ向いてろって何回も言われて、そうするって決めたから。

 でも、まだ夢見てるみたいだし、大和先輩と法律上兄弟とか…、ホントいいのかな…。

 同じベッドで寝てる先輩の整った顔を見ながら僕は複雑に思う。

「…ん…?」

 僕が起き上がろうとすると、先輩が目を覚まして、僕を腕の中に引っ張り込んでギュッてしてくれる。
 徐々にスキンシップが激しくなってきてるんだよね。ソウイウ関係だったって言うこともあるし、抵抗はないんだけど、前とは違ってすっごくドキドキして恥ずかしく感じる。
 あんなAVみたく「あんあん」言ってたって考えるともう顔から火が出そう。良くあんなことできてたなぁって…。まあ、『一ノ瀬梓』の皮を被れてたってことなんだろうけど。

 あ、もしかして、先輩、欲求不満なのかなぁ。
 いち高校生だもんね。 

 僕も心に余裕が出てきて、先輩のキュッと締まった肉体にギュっとされるとムラムラするから、触られると戸惑っちゃう…。

 だってさ、僕は先輩の事好きで、先輩は僕の事好きって…、両想いってことなんだよね。これってさ、付き合ってるってことなんだよね。しかも寝食共にしてるとか。もう完璧同棲だよね…。
 でも、それをはっきり認識したのってほんのちょっと前なんだ…。
 相当ぼんやりしてたんだと思う。ホント、僕ってバカ。
 好きって言われて、僕もスキって言ってるのに、そこに到達できなかったって言うか、現実味がなさ過ぎて、繋がらなかったって言うか。

 で、付き合ってるなら、やっぱりそういう事ってしたくなる、よね…。

「ね…、先輩、エッチしたかったりする…?」
「………アズサがしたいと思うようになるまではしない」

 ……それって先輩はしたいってことだよね。
 うわぁ…、僕の返答次第ってこと? プレッシャー…。
 ホントは僕もしたかったりするんだけどさ…。こういうのどうやって誘うの?

「ちゃ、ちゃんと心の準備はできてるから、先輩がしたかったら言ってね?」
「…無理、しなくていいんだからな」
「大丈夫! 僕だって先輩としたいって思ってるから」
「そうか…」

 って言いながらも心配そうな顔をして抱き締めてくれる先輩。  

「…アズサ、…以前から、体を売らされたりしてたのか…?」

 体売らされ…。
 確かに売らされたけど…、先輩なんで知ってるの?
 あのピアス男が言ったりしたのかな…。

「ううん。あれが初めてだったし…、それに先輩が助けてくれたから、売ったことないことになるかな」
「本当か? …もう隠す必要はないんだからな」
「ホントにホント!」

 もう、疑い深いんだから…。でも、まあ完全に僕の所為だけど…。
 もしかして病気とか心配してる? 不特定多数とヤってると思ってたら、そりゃ心配になるよね。

「大和先輩以外としたことないし、安心してよ。先輩以外に触られるなんて、気持ち悪くて嫌だし、そうなったら舌噛んでるって」

 あの状況で助けに来てくれた先輩に感謝しかないよ。本当に気持ち悪くて仕方なかったもん…。ホントの所、舌噛んで死ぬなんて覚悟は僕にはないから、先輩が来なかったら、きっとあのまま…。そう考えるだけでゾッとする。

 んっと…、先輩?
 僕の顔凝視してくるんだけど…、なんで?

「セーンパイ?」
「……初めてだったのか?」
「…え? 体売らされたのは初めてだけど…?」
「違う。あれが初めてだったのか? 初めておまえの部屋でやった時が」

 ………ヤバ…。
 僕、さっき何て言った?
 先輩以外とはナントカカントカって…。

「ああ、ウソウソ! 僕が初めてだったら、先輩どう思うかなって――」
「アズサ」

 先輩が真剣な顔をして僕をじっと見つめた。
 全てを見透かしてくるような、強くて真っ直ぐな眼差し。
 この目で見られて、ウソなんて吐けるわけないよ…。この目が好きなのに。真っ直ぐに僕を見てくれるこの目が。

 僕は観念して頷いた。

「……そうか…」

 先輩は呟くようにそういって、大きくため息をついて、額に手を置いたまま沈黙した。
 あ、バージンの奴なんか抱いちゃったって、面倒なことしたなって思ってる?

「…アズサ」

 しばらく先輩はじっと考え込んでたけど、僕に向き直って、僕を抱き寄せた。そして、また大きな溜息。

「何て謝ればいいか分からない…。すまない」

 謝る? なにを?

 眉間にしわを寄せた先輩の顔を首を傾げて見上げると、先輩は僕の頭を引き寄せて、胸に押し当てた。

「初めてだったおまえに痛みを与えることしかできなかった」

 ……そっか。初めてした時確かに痛かったけど、そんなの僕が言わなかったからだし。それに前もその事、謝ってくれたから、全然いいのに。

「大和先輩は悪くないって。僕が誘ったんだし、先輩にお近づきになれただけで良かったから」
「アズサ…」

 はぁ、って先輩はまた溜息。
 そんなに落ち込むことかなぁ…?

「やり直し、させてくれないか…」
「やり直し?」
「…ああ。アズサを、大切に抱きたい」

 先輩の手が僕の頬を撫でる。
 僕を見下ろしてくる先輩の慈悲深い眼差し。

 あぁ、好きだなぁ。ホント好き。うっとり。
 どんなことされてもいい、ってなっちゃう。

 でもなんだか抱いて欲しいっていう意思を伝えるのが恥ずかしくて、僕はほんの小さく小さく頷いた。

 おでこに降りてくる先輩のキス。瞼にそれから頬に。最後に…唇に。
 そのキスがあったかくて、心がジーンって、不思議な感覚。
 前みたいなベロチューじゃなくて、触れてるだけのキスなのに、気持ち良くて、でもそれだけじゃなくて…。

「アズサ」

 ゆっくりと離れた先輩が僕の目尻にまたキス。
 そっと押し倒されて、重なるように先輩が覆い被さってきて、じっと僕の目を見つめてくる。なんだか見つめ合ってるみたいで気恥ずかしい。っていうか、見つめ合ってるんだけどさ、うん…。

 啄むようにキスされて、どんどん息が上がる。キスの合間に名前を呼ばれて、腰がビリビリゾクゾクする。だって…先輩の声、色っぽ過ぎるんだもん。耳の傍で聞かされたら、脳みそまで犯されてるみたいで、頭の芯から蕩けてくカンジ。

「…ぁ、…やまと、せんぱぃ…」
「怖くないか?」

 そっか、先輩、僕が強姦されそうになってたから、そのこと心配しててくれてたんだ…。

「大丈夫だよ。先輩になら、何されたって嬉しいから…」
「……なら、おまえが嫌って言うぐらいとことん甘やかしてやる」

 先輩は一瞬停止した後、僕の髪を撫でながらそういった。 
 ふーんだ。嫌だなんてぜーったい思わないよーだ。



 ――って思ったけど、もうギブ!



「あ、ぁ、もういいからぁっ…、ン、ぁ…はや、く…ぅ…」

 もう、わけわかんない。
 体中キスされて、愛撫されて、快感という快感を引き出されて、全身性感帯みたいになってるんだよ…っ!
 先輩の触れるところから電気が全身に駆け巡って、触らないでって言いたくなるぐらい。

 それなのに先輩は僕の小さくて存在感なんてなかった、今は赤くてプックリ立ってる乳首を指で優しく刺激しながら、僕の後ろをひたすら解してる。
 もう十分なのに、「痛くないか?」って、優しく見下ろしてくる先輩。わざと? わざとなの?

「…ね…っ、もう…もう…」
「もう、入れていいのか?」
「…は、ぁ……」

 僕は全力でガクガク頷いた。焦らされるのがこんなに辛いなんて思わないよぉ。大切に大切に扱われてるのは十二分に伝わってくる。触れるのも力加減も全部優しくて、ワレモノ扱ってるみたいに優しくて。
 でもね、でもね、それが反対に辛い。刺激が足りなくてイキそうなのにイケない状態がずっと続いてるんだよ? もうホント辛い。
 先輩、甘やかす方法なんか間違えてるって…。

 汗でべっとりなった僕の前髪をかきあげて、先輩はそこにキスを落とすと、僕の脚を割って入って、……うん、先輩も準備バッチリだったんだ…。

 先輩の硬い先端が僕のアソコに触れるだけで、次に来る快感への期待に全身が粟立って、おかしくなりそうだった。

「あ、…あ…ぁ…」

 先輩が入ってきてるっていう事実に興奮する。じわじわ侵入してくる先輩の剛直が火傷しそうなくらい熱くて、中が満されていくだけなのに、その行為だけでも快感になる。

「アズサ…」

 耳元で掠れた声で囁かれて、頭の天辺から足の先まで快感に埋め尽くされて、全身がガクガクって痙攣した。

「…ぁ…ぁあ…っ」

 頭真っ白になって、ふわふわする。   
 先輩の手が僕の頬を撫でてるのが見えてるのに、脳の理解が追い付かない。

 はっはっ、って全力疾走したみたいな浅い呼吸しかできなくて、必死に肩で息するけど、なかなか治まらない。
 僕、入れられただけなのにイっちゃったってこと…? ウソ…。僕の下腹部に生温い濡れた感覚があるから間違いないんだけど。
 先輩も僕のソコをしっかり観察してるし、もうジロジロ見ないでよ…。

「……悪い。焦らし過ぎたな…」

 焦らしてたってわかってたの!?

「……せんぱ……の、バカぁ……、はぁ……」
「ああ、そうだな…。でも、おまえには『しすぎる』ぐらいが丁度いいんだ。自分を蔑ろにしがちだからな」

 そういいながら、僕の顔にキスを降らせる先輩。優しくてカッコよくて、こんな時でも胸がキュンってなる。

 僕の息が整ってきたのを見て、先輩が「動いていいか」って聞いてくる。僕が目を逸らしながら頷くと、唇に触れるだけのキス。

 先輩の動きはゆっくりなのに、駆け抜ける刺激は前よりも濃厚に感じた。奥まで突かれる度に深い快感に包まれて、性的にも満たされるけど、それ以上に心満たされるもので…。

「……あ、ァ……ィく…っ…」

 少し中を擦られるだけで、全身を埋め尽くす快感。もうずっとビクビクして、ひたすらイキ続けてるみたい。
 痙攣しながらギューギュー先輩の締め付てるのが自分でも分かる。無意識だけど…。さすがにキツかったのか、先輩もグイグイ奥に押し付けた後に、ウッて唸ってから、色っぽい溜息を吐いた。
 そんな先輩をうっとり見上げると、先輩はちょっと辛そうに眉を寄せてた。汗ばんでて、たまに出る溜息みたいな喘ぎと表情がエロ過ぎるよ…。

 先輩も感じてるのが嬉しい。
 こんなにゆったりとしたセックスでもこんなに気持ちよくなれるんだね…。激しいもの良かったけど、これはすごく幸せな気分になる。

 でも先輩物足りなかったりしないかな?
 もっとガツガツしたいとか思ってない?

「…僕、激しいのもスキ、だよ? 前みたいなのも…」 
「アズサ…」

 先輩はふぅと息を吐いて、目を細くした。

「…それはまた次な。今回は最後まで優しくするって決めたからな。おまえが気持ちいいと感じてるなら、それだけで嬉しい」

 ホント、先輩って実直だよね。
 ホント…僕の事、想ってくれて…。

「大和先輩…好き…。…好き」

 先輩は目を瞠った後、また目を細めた。
 この表情すごく好き…。ちょっと少年ぽいところが垣間見えて。

「俺もだ…」

 先輩は鼻先が触れ合うぐらいに顔を寄せると「アズサ好きだ」って呟いて、僕にキスをした。





 
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