僕って一途だから

珈琲きの子

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本編

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「なんでこいつがここにいる」

 忌々しそうな声を出した五条が、部屋の隅で体育座りをしながらズーンと重黒い空気を背負っている瀧元を睨みつけた。

「僕が連れてきたんだー。アズちゃんに一番近い人間だったし、なんかの役には立つかなって」
「……使い物にならなさそうだな」
「だねー。アズちゃんに告ったばっかりだったんだってー。それで部屋変えたら、アズちゃん絶対ショック受けてるよね。勝手に告白しときながら、何も言わずに勝手に部屋移動するとか、人間としてクズだよねー。って言ったらこうなっちゃった」
「俺たちも人の事言えないけどな…」
「うん。だから頑張るしかないんだって、信用を回復するために」

 そうだな、と五条はもう一度瀧元を見遣ってからメモリーカードを取り出し、獅々田に手渡した。

「あ、もしかして、これ…」
「おまえの欲しがってたやつだよ」
「さっすがー、リュウ」
「屋敷にある画像データは全て処分した。息子がポルノの合成写真を脅しに使ってるって、一言掛けたら大慌てでかき集めてくれたな。今年政界に打って出ようとしてる槙野にはちょっとした不祥事でもキツいだろうからなぁ」
「タイミングがよかったんだ。後はあいつが管理してるデータの場所、だよね」
「ああ。本人から吐かせるしかないけどな」
「だね。――じゃ、さっそく見てみよっかなぁ」

 クリック音が響き、机の上に置かれたノートパソコンのモニタに映像が映される。そこには車内の様子が映されていて、獅々田は食い入るようにしてその映像を見ていた。

「間違いないね。連れ込まれるところから……ってこれ、かなり幼くない? えっと…」
「三年前の五月だ。俺たちが中二の時だな」
「じゃあ、あいつが中一…。あー…これ結構、くるね。見てて面白いものじゃないや…」

 獅々田は停止ボタンを押し、画面から目を逸らす。

「これを梓が企てたとは思いたくない…。――おまえはどう思う?」
「んー、本物だとして、今あいつ眼鏡かけてるし、顔も前髪であんまり見えないし、映ってるこの子と同じかどうかは判別難しいと思う。ただ、似てることは似てるよねー」

 苦そうに停止画面を見ていた獅々田は「あっそうだ」とタブレットを取り出して、ロッキングチェアを左右に揺らしながら、あるファイルを開けた。

「そう、ちょっと面白いことみつけちゃって。あー、内容的にはあんまり面白くないけど」

 見てみて、とそのタブレットを五条に差し出した。五条は受け取って、それを上から順に目でなぞっていく。獅々田は五条の様子を眺め、のちに起こる反応を楽しそうに待っていた。
 そして、ぎょっとしたように五条の目が見開かれ、タブレットの画面から目を外し、獅々田を仰いだ。

「おい…、これ」

 獅々田は五条の反応に対して満足そうに「うん」と微笑んだ。

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