僕って一途だから

珈琲きの子

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本編

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扉に付いたテンキーにコードを入力し、周りを見渡して静かにノブを回す。そして、ゆっくりと音を立てないように扉を押した。できた隙間に身体を滑り込ませるようにすると、また慎重に扉を閉める。それと同時に自動でロックされる音が小さく鳴った。
中には数台のモニタとその周辺機材に埋もれるようにヘッドフォンを付けた人物が一人。その人物に近づくわけでもなく、来訪者は部屋の中心にある丸テーブルへと着いた。

「どうだった?」

声をかけられたモニタを睨んでいた人物はくるりと皮張りのロッキングチェアを回転させて、ヘッドフォンを外すと、丸テーブルに腰かけた。

「解析結果は黒」
「そうか」
「…これが出回れば、嘘か本当かなんて関係ないからね」

テーブルに投げ置かれた一枚の写真がテーブルの上を滑るように移動し、テーブルの上に散乱した数枚の写真にぶつかって動きを止めた。
その写真は、明るい茶髪の少年を中心に撮られたポルノ。どれもが行為の最中のもので、淫らに喘ぐ姿が曝け出されている。

「元データか。途方もないな」
「やるって決めたでしょ」
「当たり前だ。週末には屋敷に乗り込む」

テーブルに直に座っていた人物は胸ポケットから一枚の写真を取り出すと、テーブルにおかれた写真を憎らしげに睨んでいる男へと差し出す。

「これは?」
「荒すぎて分からないし、これだけ異質。多分ビデオのキャプチャ」
「ビデオまであるのか?」
「これ、僕たちに渡す気なかったんじゃないかな、あいつ」
「紛れ込んでたってことか?」
「そう」

写真の細部まで目に焼き付けようと、その男は写真を凝視していた。

「これ、あいつの言ってた件の画像じゃないのか? これが事実なら確実に犯罪だろ」
「僕もそう思う。でもそんな事件過去遡っても見つからないんだよね」
「もみ消した? もみ消された?」
「だと思う。なかったことになってる」
「それで、この襲われてるのがあいつ…」
「そういうこと」
「で、おまえが欲しいのが、この元のビデオってことか」
「うん。乗り込むなら、見つけ出してきてよ」
「ああ。分かった。週末はあいつの相手頼むぞ」
「はいはい。任せといて。もうお出かけの予定きっちり立ててるから」

そうか、と男は立ち上がり、その写真を懐にしまい、入って来たドアへと向かう。すると、ふと思い立ったように「ね、」と声がかかり、振り返った。

「どっちを信じるの?」
「……あ? そんなの決まってるだろ。俺が手に入れたいと思っている方だ」
「だよねー。これからもよろしくね、ライバルさん」
「ああ。すべてはこれが終わってからだ」
「うん。上手くいくように祈っとくね」

その言葉に男は片手を上げて応え、そのまま部屋を出た。その後姿を見送って、テーブルに散らかった写真をまとめながら、

「早く戻りたいなぁ」

と、もう一人の男ははぁ、と深くため息を吐いた。
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