僕って一途だから

珈琲きの子

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本編

しち*

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「うーん」

僕は唸った。
だってさー。ジャージズボンにスリットがいっぱい入ってるだもん。
なにも教室に持ってこないようにしてたんだけど、体育だったし着替え持ってきたら、案の定この通り。いつの間にやってるんだか…。
パンチラもストリップもする趣味はないから、取りに戻るしかないよね。
ま、何着か替えがあるし、購買行けば即買えるし、大丈夫。Sサイズって残ってるんだよ、買う人少ないから。

「どした? 一ノ瀬」
「えっとね。ジャージ間違えたみたい。寮に取りに戻ってくるから、センセェに言っておいて欲しいなぁ」 
「予備あるし、貸すけど?」
「……よこやまくーん? それは僕に対する嫌味? 足の長さ違うからね?」
「裾折れば穿けるだろ。それに時間ないし、ほら使えよ。樋野がいれば丁度良かったんだけど」
「そういえば、どこ行ったの?」
「なんか忙しいんだって」
「あー、例のアレ?」
「そ」

ヒノちゃんは唯人と生徒会の皆様がつるんでるのを見るのが楽しいんだって。自由だね、この学校。
なんか昨日から唯人が生徒会に入るとか、入らないとか揉めてるって言ってたし、その件かなぁ。唯人、あのイケメン集団にチヤホヤされて、ニヤニヤしてるんだろうな。昔からそうだったもん。僕の周りにいる人、全部……はぁ、忘れよ忘れよ。

結局、ズボンを横山君に借りることにした。ダボダボだけど、ありがたやありがたや。裾、三つ折りにしたけど、見てないことにする。
ヒノちゃんに同じく、横山君もイイ奴だよ、ホント。

「今朝、転校生の生徒会入りが決まったんだって」
「え、そうなの? 来て四日だよね?」
「うん、役員全員が推薦したって」
「ふーん…」

全員? 万里王子もリュージ様も、唯人が生徒会に入るのオッケーしたってこと?
…そうなんだ。
なんかモヤモヤするけど、生徒会とか別次元の話だし、関係ないよね。うんうん。

「大変なことになってたからな。転校して来てから毎日、生徒会室に入り浸ってて、そのせいで親衛隊がかなり制裁しまくってさ。風紀もかり出されたとか」 

最近、全然大和先輩から連絡ないなって思ってたら、風紀の仕事が忙しかったんだ。結構連絡ないって寂しいんだよねー。学内ですれ違う事なんて、ないに等しいからね。
大和先輩がエッチへたくそでも、やっぱり嬉しいもん。二人で部屋にいるだけでも、同じ空気吸ってるとか考えるとさ、ムフフ。
はぁ、大和先輩の肌が恋しい。
ま、触れてるのはアソコの皮膚だけなんだけどさ。あと手のひら。腰掴まれるともうね、キュンキュンする。うう…大和先輩、会いたいよぉ…。

はっ、いかんいかん。大和スイッチオフにしとかないと、ストーカー生活に戻っちゃう。

でも、風紀委員が必要になる制裁って、僕が受けてるものとは、質が違うのかな。僕のは教科書類の紛失と今のジャージの切り裂き、昨日はバケツの水掛けられそうになった。ちゃんと避けたけどね。他にどんなのがあるんだろ。制裁制裁って聞くけど、実際中身知らないって言うね。
やっぱ最悪、暴力とか? 大和先輩大丈夫かな。

「風紀委員って危ない目にあったりするんじゃないの?」
「大丈夫大丈夫。委員長と副委員長は最強だから。それに、生徒会入れば、親衛隊も手が出せなくなるし、制裁は収まるはず。ただ、親衛隊の方にかなり鬱憤溜まると思うんだよな…。俺もこんなこと初めてだし、どうなるか、サッパリ――」
「あれ? アズ、なんでそんなブカブカの着てんの?」

着替え終わった宗ちゃんがやってきて、僕の脚を指さした。
やっぱそう来るよねー。
横山君に借りたことを話しながら、体育館に向かった。この学校無駄に広いから、更衣室から体育館も遠い。教室移動ももたもたしてられないんだよねー。やだやだ。

最近よく見る万里王子とリュージ様が、小さな中庭の向こうにある渡り廊下を並んで歩いてた。遠くからでも風格が漂ってるのわかる。
あの二人、なんだかんだで仲いいよね。すっごい笑顔で何か話してるし。
ふと、万里王子がこっちを見て、ばっちり目が合った。リュージ様もつられて、こっちを見て、

――そのまま、二人に目を逸らされた。

…………。
えっと……。
どうしようか。この上げかけた手。ま、いっか。

「どうかした?」
「ん? 何でもない」

僕は数歩置いてきぼりを食らった距離を駆け足で詰めて、ちらって振り返った。
丁度その角度から、二人の間に黒髪のカツラを被った唯人がいるのが見えて…。
唯人は僕を嗤うように一瞥を投げてきて、何もなかったみたいに、両側を歩く二人に笑いかけた。

うん。やっぱり。
なんか、そんな気がしてた。はぁ、ヤになるよねー、ホント。

「アズ? やっぱりなんかあった?」
「ううん、スマホ探してただけ。教室に置いてきちゃったみたい」
「そっか。今日な、バスケするって言ってたから、アズの事、ビシバシ鍛えてやるよ」
「えー、ヤダ、いらなーい」
「そんなこと言うなって」
「そうだよ、一ノ瀬もっと鍛えた方が良いって」
「うーん、でもね、このくらい筋肉ない方がイイんだ。抱かれるのには」
「アズ?」
「横山君に隠す必要ないでしょ。ネコだと柔らかくて可愛い方が受けがいいし、鍛えるのはちょっとね」
「えっと…、一ノ瀬って、結構抵抗ない方なんだ」
「うん。横山君もしたくなったら言って? 横山君だったら、いつで――むぅっ…」

宗ちゃんにギュってされた。話せないように、胸に押し付けられた。 

「やっぱおかしいお前。潤、今の聞かなかったことにして」
「ああ。俺別に気にしないから」

なにもおかしくないし。いつもと変わらないし。
離してよ。

「……もう! 大丈夫だって。苦しいからやめてよね、宗ちゃん」
「アズ…」
「授業遅刻するって。ほら早く行こ」

僕は二人を置いて歩き出した。まあ、すぐ追い付かれたけどねー。
心配そうにしてる宗ちゃんにいつもの笑顔で返しておいた。
大丈夫大丈夫。気にしない気にしない。




  ◇ ◇ ◇



 
一週間ぶりぐらい?
大和先輩からメールがあって二度見した。

『夜七時、保健室横の休憩室』

この一行だったけど、もうテンション上がりまくり! 
だってぇ、あれから本当に万里王子もリュージ様も、一言も話しかけてくれなくなったんだもん。そのおかげか制裁はなくなったけど、ちょっと暇だったんだぁ。
ちゃーんとアドレス帳から消去しといたよ。未練がましいのって、ヤでしょ?

 で、指定された場所に行って、久しぶりの大和先輩の顔見て、かっこよすぎて眩暈起こしそうだった。

「…ぁああっ…はぁ、せんぱ…」

先輩の性器が中に入ってるだけで燃えるし萌える。ちょっと痛いけど。
ちょっと今日は先輩も気が昂ってるみたいで、入れたすぐからガンガン腰使って来た。強引な先輩大好物。
それにねー、やっぱりねー、腰掴んでる先輩の厚くて硬い手が好きすぎる。はぁ、全身撫でて欲しい。別に変態じゃないよ。普通の性的欲求だよ。

「あっ、もっとぐりぐりしてぇっ…ァア、いいっ…いい、そこっ…」

喘ぎ声どんなのが良いか忘れちゃった。自然にできてるかなぁ。またAV見て研究しないと、単調になると先輩も飽きちゃうもんね。
僕は腰を先輩のリズムに合わせながら振って、いそいそと前を扱いた。
先輩の動きも早くなってきて、多分もうすぐイク。いつもより早い気がするけど。

「…あ、ああん、せんぱいっ、もう、イクっ、あああっ」
「くっ…」

え、
ずりって先輩の抜かれて、何か背中に掛かった。温い何か。まあ、あれしかないけど。

「センパイ?」
「…風呂がないだろ、ここ」
「あ、そっかぁ。僕の事考えてくれたんだ。嬉しー」

ああ、って先輩は生返事して、自分のムスコさんだけ拭いて、さっさとズボンの中にしまった。 

「ね、先輩。背中届かないから、拭いて欲しいんだけど、いーい?」

無言でベッド横に置いてあるティッシュを取って拭いてくれる。
結構お願い聞いてくれるんだ。やだ、僕、先輩に拭かれてる。なにこれ天国?
そのセンパイの触ったティッシュ持って帰ろっか――いやいや、ちょっとアブノーマルな道に入っちゃうし、先輩のセーエキついてるしね! でもそれがイイ……、って何考えてんの、ホント…。

「風紀委員、忙しいって聞いたよ?」
「…ああ、一時期よりは落ち着いた」
「あの新しく入った生徒会の人、大変だったんだってね」
「……当分連絡しない」
「えっと、なぁに?」
「時間が取れそうにない。当分これはなしだ」

先輩との貴重な逢瀬が減るってこと? えええー、ショックぅ。
でも、時間がないのに、こうやって呼んでくれたんだ。そこらへん真面目だよねー。

「えぇ、そうなの? はぁ、先輩とできないとか寂しいなぁ」
「他の奴に慰めてもらえ」
「そーするー。早く終わらせて、先輩のコレ早くチョーダイね?」

先輩のアレをズボン越しにツンツンすると、ハァって盛大に溜息吐かれた。
僕も吐きたいよ、ホント。
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