僕って一途だから

珈琲きの子

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本編

ごー

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生徒会の二人に巻き込まれたから、教室に着くのがちょっと遅くなっちゃった。
朝練に行ってた宗ちゃんの方が早く席に着いてたよ。

僕のクラスは1-D。AからEがあって成績順にクラス分けされてるんだ。だから僕は頭悪い方。ちなみにDクラスは運動部員が多いんだ。勉強する時間が少ないって言うのもあるしね。

「アズー。遅かったな」
「うん、ちょっとね」

僕が最後列にある席に座ると、宗ちゃんが友達らしき人を二人引き連れて飛んできた。万里王子とリュージ様に会ったことは言わない方が良いよね。

「そ、こいつら。紹介するって言ってただろ」

二ヶ月も同じ教室にいたのに紹介っておかしいよね。けどね、今まで、教室に入るのは始業ベルがなる直前だったし、休み時間もすぐに外に出てたし、全くクラスの人と関わり合いがなかったんだー。
どう考えても僕、変人だし、皆関わりたいとは思わないよね、普通。
なにしてたかって? えっとぉ、それはぁ、ストーカー的な? 犯罪はしてないよ。大和先輩ウォッチングしてただけだもん。

後ろにいる二人が宗ちゃんの背中から顔を出して、宗ちゃん、眼鏡君、男の娘?の三人の頭が階段状に並んだ。

「こっちはクラス委員の横山で、こっちが樋野な」
「一ノ瀬梓だよ。よろしくー」
「うん、よろしく、俺は横山潤一な」

横山君はノンフレームの眼鏡をかけた、穏やかな感じの子。面倒見が良さそうだし、頼まれたら断れなさそう。クラス委員も頼まれたっぽいよねー。

「僕は樋野千秋。僕もアズって呼んでもいい?」

どう考えても君付けで呼ぶのが似合わないから、ヒノちゃん。目はクリクリだし、髪もボブだし、女の子みたい。下付いてんのか、不安になるぐらい。

「何でも大丈夫だよぉ」

僕がそう答えると、ヒノちゃんが僕の顔を見上げながら、「ねーねー」って目をキラキラさせて、身を乗り出してきた。かわいいなぁ、ホント。これ、免疫ない人って結構コロっていっちゃう感じだよね。

「アズってさ、可愛いよね」

ん? あんたに言われたくないよ。
でも、言われて嫌じゃない、というか嬉しいよねー。一番欲しい人からはもらえないけどねー。

「…そぉ? ありがと。ヒノちゃんもすっごくかわいいよー」
「はっ! そ、そんな笑顔を僕に…!!? …宗君を嫉妬させて……部屋に戻れば、あんなことやそんなこと………ぐふふ」

ぐふふ? って聞こえたけど気のせい? 
僕に背を向けて、なんかぶつぶつ言い始めた。ヒノちゃんの顔の筋肉が緩んでるけど、なんかあった?

「ヒノちゃん?」
「あー、っと気にしなくていいから。こいつこうなると当分戻ってこないから」
「……そうなんだ。放置でオッケーってこと?」
「そうそう、一ノ瀬は飲み込みが早くて助かるなー」

宗ちゃんと横山君は呆れ半分。
ホントにいっつもこんな感じなんだ。りょうかーい。

「一ノ瀬って、今まで休みの時間何してたの? 声かける暇もなく教室から出てただろ」
「えーっと、……追っかけ?」
「「追っかけ?」」

あ、宗ちゃんも知らなかったんだっけ。

「うん。片想いの相手、追っかけてたの」
「え!? アズ、片想いってホントの話だったのか!?」
「そーだよー」
「だだだだだ誰!?」

あ、ヒノちゃん復活ー。そこ興味あるんだ。コイバナが好きなのかなぁ。
でもでも、

「それは秘密かなぁ。言って迷惑掛かっちゃうと困るし」
「だよなぁ」
「き、気になるぅ!」

二人から「こら」って言われてチョップされてるヒノちゃん。
うん、仲いいねぇ。こういうの憧れる。

横山君は宗ちゃんと一緒のバスケ部で、ヒノちゃんはバスケ部のマネジャーしてるんだって。ネタの宝庫らしい。何のネタかは知らないけどねー。聞かない方が良い気がする。

昼休み。
ヒノちゃんに強引に食堂に連れて行かれた。ま、行くつもりだったからいいんだけどさ。ちなみに後の二人は昼錬。
食堂で絶対外せないイベントがあるらしいんだよね。
うーん。興味なし。ご飯ゆっくり食べたい。

僕はいつもの観葉植物横の特等席じゃなくて、なんかカツラ被って、眼鏡かけてる人がいるテーブルの二つ隣のテーブルに座らされた。時季外れの転校生らしい。ヒノちゃんは、「予想と違う」ってぶつくさ言ってたけど。
もじゃもじゃじゃなくてサラサラだったんだって。瓶底じゃなーい、とも言ってた。

この子、闇が深そう…。

そのカツラ君はふっつーの平凡な人って感じだけど、ヒノちゃんはその人を見に来たらしい。よくわかんね。

「アズは目立つから、できるだけ存在消してね」

ごめーん。明るいもんね、髪。
そう言われた瞬間、食堂が黄色い声に包まれた。耳痛いんだけど。
誰かが食堂に入って来たらしくって、僕はちらっとそっちを見た。…別に興味ないけど、やっぱり気になるしさぁ。

そしたらね、スポットライト浴びてるみたいに輝いてる集団がいた。
きらきらイケメン集団。
その中に万里王子とリュージ様がいたから、生徒会のメンバーって言うのはわかった。皆ハイレベルな顔してるよねー。ま、大和先輩には負けるけど?

「アズって生徒会の人達知ってるの?」
「……えっとね、獅々田先輩と五条先輩は顔だけ。あと、百瀬様も。それ以外全然知らない」
「滅多と会わないもんね。獅々田様は会計で、五条様は会長、百瀬様は庶務ね」

万里王子は何となく合ってる気がするけど、リュージ様、会長だったんだ…。知らない方が良かったかも。

「あのスラっとした眼鏡かけた方が副会長の月城つきしろ様。一番背の高い無表情な方が書記の不破野ふわの様」

七三インテリが副会長で、天パの大型わんこが書記ね。オッケー。
ちなみに、百瀬様は切れ長の目で艶っぽいビスクドール、って感じかな。超絶きれいかわいい。
って、あれ? 百瀬様が分裂してる? ブリンク唱えた?
え、双子? もしかして僕のライバルが一人増えたってこと?
うぐぐ。

「アズ、どうしたの?」
「百瀬様、二人並んでるの初めて見たからさぁ、なんか変な感じ」
「あのレベルの高さの双子ってすごいよね。僕も初めて見た時、二度見したよ」

その六人の集団がズンズンと、ヒノちゃんの予言通り、そのカツラ君に向かってる。
……ヒノちゃん!? この子、何者!? 予知夢見るとか!?

インテリ副会長が興奮気味にそのカツラ君に話しかけて、周りの四人も興味を向けてる。カツラ君も満更じゃないみたい。カツラ君の友達が役員を威嚇してるみたいだけど。

「しろきすしろきすしろきすしろきすしろきすしろきすしろ…」

ヒノちゃんが黒いオーラ出して、呪文唱え始めたけど、聞かなかったことにするねー。
この子、可愛いの台無しなんだけどぉ、ホント。 

ま、どうでもいいので、僕はグラタン食べまーす。
チーズの焦げ具合がサイコー! ホワイトソースの硬さも絶妙! ここの食堂のシェフに感謝感激!
ソースのトロトロとマカロニのモチっとした弾力のハーモニー癖になるぜ!
でも、やっぱ一押しはパフェかなぁ。
はぁ、大和先輩とパフェつつき合いたいよねー。
それで、一口ずつ食べさせ合ったりして。ちょっと照れながら、あーんって先輩も口開け………アリエナイナ。
睨まれる未来しか見えなかったよ、ぐすん。
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