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本編
いち*
しおりを挟む「あっ…ぁん…、そこ、もっとぉ…はぁっ、いいよぉ」
僕はわざとらしく嬌声を上げ、四つん這いになりながら、突かれるのに合わせて腰を振った。
「うるさい」
ツキリと胸が痛む。
「やっ、せんぱいの、よすぎ、なのっ…」
けれど苛立った様子の先輩がこっちの事なんかお構いなしに、ガンガン腰を打ち付けてくる。
「ん、ぁ、ぁあ、イク、イっちゃう…っ」
「ほら、イケよ」
「あ、ぁんっ、せんぱい、もっ、イって、イってぇ…」
獣っぽい強引な所は好きだったりするけど…これはダメ。
実はミジンコの毛ほども気持ちよくないし、先輩の大きいから痛い。ある程度解したらごり押しで入ってくるんだもん。
でも感じてるふりしないと、先輩自信失くしちゃうかもしれないし、ひっそりと前を扱いて、後ろに突っ込まれながら自慰。さすがに射精ぐらいしとかないと演技だってバレちゃうもんね。
「イク、イクぅっ……ぁああんっ!」
「…ぅ…く…っ…」
僕は奥に迸るものを感じながら、同時に性器を激しく擦って無理やり放つと、クタリと体の力を抜いた。余韻も何もなく突き刺さってた杭が抜かれて、僕はわざとらしく、あん、と甘い声を出した。
「いい加減、その気持ち悪い喘ぎ声をやめろ」
「えぇ、出ちゃうんだから、しかたないよぉ。先輩の大きくて、イイとこ当たっちゃうし。それに先輩だって僕の中いいんでしょ? いっつも中でイっちゃうんだから」
「…本当にバカだな、お前は。もっと上品な言い方できないのか?」
「もー、それ言っちゃダメだって。僕はただのセフレだし、先輩の好みと違っても仕方ないよねぇ。そんなこと言うんだったらさ、上品で可愛いっていう噂のあの人に早く告白しちゃったら?」
「…お前には関係ないだろ」
そういわれると、言い返せないじゃんか。
少しずらしただけのズボンを引き上げて、ブレザーを整えると、溜息を吐きながら部屋から出て行く先輩。その後姿を僕はただ見送った。
◇ ◇ ◇
「アズー。俺もシャワー早く浴びたいから早く上がってー」
「ちょっと待ってよ。今日、中に出されたから、大変なの」
僕が中のものを掻き出しながら、意外に早く帰って来た同室者の宗ちゃんこと瀧元宗二朗に返事をすると、浴室のドアが勢いよく開いた。
「…え、」
その突飛な行動に、僕は指を秘密の花園に突っ込んだまま、爽やかイケメンの宗ちゃんが浴室に入ってくるのを呆然と見つめた。
「アズ! ホントに何考えてるんだよ! ゴムつけさせろって言ってるだろ」
「……な、なんで入ってきてんの!?」
「手伝ってやるって」
「は? 何言って――ちょ、だめだって!」
腰に巻きついたがっちりした腕に上半身を支えられながら、同室者にお尻に指を突っ込まれ、他人の精液を掻き出されてるとか、もう…。
この腕を剥がせるものなら抵抗したけど、僕にはどう考えても無理っぽい。
「…ァ……ま、って、強くしないで…っ…」
最悪なことに、この不器用な宗ちゃんが前立腺を掠めてくるから、前が反応してきた。さっきまででっかいナニが入ってて、ヒリヒリして敏感になってるのにそんな触り方しないで欲しい。
っていうか、なんで今日に限ってこんなに早く帰ってきてんの? 次からはチェーン掛けて締めだしてやるから!
「前も触る?」
「…ぁ、なに、して…っ……ぁ、…ん…」
前と後ろ同時攻撃とか何? ノンケ童貞のふりして、宗ちゃん経験あったりするの? それともオナニーがうまいの? こんなとこで宗ちゃんのオナニー技術炸裂とかもうやめて!
気持ちよすぎて、浴槽の縁に必死に掴まって、本気で喘いじゃってるし、もう僕何してんの!? 抵抗しなよ!
抵抗するにも、もう腰がガクガクして膝で立つのもやっとなんだけどさ!
「アズ、気持ちいい?」
「あ、…だめ…って…」
宗ちゃんの声が心なしか低くて、焦燥感に溢れてる。しかも背中にぴったり引っ付いてきてる気がするんだけど。
この首筋を這っているモノはナニ!?
っていうかホントもうやめて、あの人以外にイクとこみられたくない! でも、きもちいぃ!
「…も、……もぅ…」
「イキそう?」
「……ぃきそ……ぁ、っ……やめ…っ…!」
◇ ◇ ◇
「ごめん、ホントごめん」
ソファーに身を預ける僕の前で土下座する宗ちゃん。
ふん、許してやんない。僕の体は先輩だけの物なのに勝手に触るなんて!
「ごめん、喘いでるアズが可愛すぎて、ちょっとアクセルとブレーキ踏み間違えた」
「はぁ!?」
「でもさ、ほら俺耐えたし」
「……え…、なにを?」
「もー、言わすなよー、ナニに決まってんじゃん」
「は? 宗ちゃんもしかして、僕に突っ込む気だったの!?」
「アズってノンケ殺しだよな。アズに入れたくて、完全に勃ってたもん」
え、あの後もしかして風呂で…。
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「……そんな顔しなくてもいいだろ…。大丈夫だって。俺、アズと両想いになるまではしないって決めてるから」
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「は? 僕と宗ちゃんが? ばかじゃない? 童貞君が僕を満足させれるわけないでしょ? 大和先輩ぐらい経験ないとさー」
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ネコちゃんたちが群がってきそうな顔してて、高1まで童貞とかありえないんだけどね、ホント。宗ちゃんの親衛隊隊長さん尊敬するなぁ。ま、僕のもチェリー君だから宗ちゃんのこと言えないんだけどさ…。
「大和先輩には本命がいるって言ってるだろ! そういう人とするのやめろって!」
「えー、本命がいるからするんじゃないの? 満たされない想いを傷舐め合って埋め合う、みたいなさ」
「傷の舐め合いなら、俺でもいいだろ」
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「ぐ」
「両想いにならないとできないんでしょ?」
「ぐ」
「言っとくけど、あの大和先輩、だからね? 学園の2トップの一人だよ? 普通は手の届かない人だよ? そんな人とできてるっていうだけで最高だし。確かに、ちょっと強引だけど、それもスパイス? になってエッチも盛り上がっちゃうんだよねー。相性がいいのかなぁ?」
ガッツリ嘘ついてるけど、宗ちゃんを心配させないためと思えば大丈夫。
すっかり騙されてる宗ちゃんは神妙な顔をして僕を見つめてきて、ゴクリと唾を飲んだ。
「……そんなにいいのか?」
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なんて素直に答えられるわけないし…。
「…ぇ、そ、それは…ちょっと大きくて…」
「せ、先輩のってデカいんだ…」
「そ、そう! だから、気持ち良すぎて困るんだー」
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「はぁ、ご飯行こ」
「あ、俺も行くー」
「えー、やだー」
「そんなこと言うなって、アズー」
僕が手早くグレーのカラコンを着けて、ドアノブに手をかけると、犬のように嬉しそうに宗ちゃんが寄ってきた。耳とシッポが見えるよー。忠犬宗ちゃん、なかなかいいかも。
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