【R18】坊ちゃん社長に溺愛されていたようです

1 うちの親がすみません

「先月に亡くなったクソ親父の借金が判明しまして。……ヤクザに借りていたそうで」
　なるべく深刻にならないように軽く告げると、自席にいた社長は、丸い眼鏡のしたで目をまん丸にしてこちらを見上げました。

　最近互いに忙しかったので、真っ正面から顔を見るのは久しぶりですね。
　本当に美形だなぁ。
　癖のある髪は茶色がかっていて子犬のようだけど、顔立ちはずいぶん大人びて整っています。
　わたしはしみじみと見惚れました。あの小学生だったおぼっちゃまが、ずいぶん素敵な男性になったものです。あの頃から美少年ではあったけれど、こんなイケメン二十代に育つとは思いませんでした。
　いつのまにか身長も抜かれていましたし。
　ちょいダサ眼鏡とか、目元を隠したぼさぼさの髪型は、色気隠しなのをわたしは知っています。

「……借金？　また？」
「です、です。で、ヤクザがそのカタにわたしをフーゾクに――」
　ガッターンと、椅子を倒して社長は立ち上がりました。休日出勤で他のスタッフがいなくて、本当に良かったです。
「ふっ」
「ふ？」
「ふざけるなっ、何だそりゃあっ。お前の家族親戚はおまえたち姉妹に次から次へと……」
「すみません」
「ちがっ。もう、俺と結婚しろスミレ！」
　へ？
　目を丸くしたわたしの手首を強引な勢いで掴むと、社長――緒方おがた海里カイリさまは叫びました。
「お前の事情にちゃんと巻き込め！　俺の妻になれ！」
　なぜそんなことに……。



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