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◆婚約式の騒動◆
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ヴィク兄さまを、四番目の婚約者に――?
ローザはあっけにとられた。
奇妙なことではない。もしもヴィクトルが最初からローザを選び、幼いローザが従兄を淡い初恋としてあきらめてエドアルドを望まなかったならば、親族のつながりを深めるために結婚することもあり得ただろう。
しかしローザはすでに、この国の第二王子と婚約し、侯爵家の息子や準貴族の豪商とも婚約している。
いまさら従兄妹同士で結婚する意味はない。――普通ならば。
ローザの探るような視線に、ヴィクトルは爽やかな笑顔を返してきた。
「善き返事を期待しているぜ。俺は君から離れるべきじゃなかった……」
ローザの艶やかな巻き毛の先に口付けて、ダンスを終えたヴィクトルは離れていった。
◆ ◆ ◆
呆然と立ち尽くしていたが、
「ミズローザ、次はぼくと踊っていただけますか?」
生徒会で書記の補佐をしているニコが、横合いから声をかけてきた。
癒し系ショタのほんわかした笑顔にほっと和んで、ローザはその手をとる。
まだほとんど同じ身長のためか、それとも彼が上手なためか、踊りやすい。子猫のように愛らしいステップで踊る。女の子とダンスをしているような気持ちになる。
紫のふわふわした髪に合う紅薔薇色の礼服で、とても似合っていた。着こなしが難しい色だけど、白い縁取りや小物でうまく、彼の魅力を引き立てている。さすがは美のパラメーターが高くないと攻略出来ないキャラクターだった。そのセンスをリリィにちょっと分けて欲しい。
くるり、くるりと回ると、ニコと同じ顔をした義弟のロジィが視界に入った。
自分が踊るでもなく、壁際からこちらを見守っている。
攻略キャラなだけあって顔は可愛いし、妾腹とはいえ公爵家のあととりだ。努力家で優しい良い子でもあるのに、浮いた話を聞かない。
こんなときこそ、素敵な女の子と交流すれば良いのに……。
「ミズローザ、ロジィのことが気になりますか?」
笑みを含んだ声に、意識が引き戻される。
「ごめんなさい、ニコ。ちょっと心配で……」
「ロジィは立派な男ですよ? 貴女が母親のように心配していては自立できません」
「……そうね、ごめんなさい」
くるり、くるりと回る。
「貴女にはロジィが男には見えないようですが、ぼくのことはどうですか?」
髪の色だけ義弟と違った少年が、ローザの腰に片手を回して、踊りながら問いかけてくる。
瞳が大きな、少女のような顔立ちの年下の少年が、色香あふれる微笑みを見せた。
ニコ・ヴィオラ。
スミレの花のように可憐で、なおかつ匂い立つような美しさを秘めている。
「愛しています、ミズ・ローザ。ぼくを貴女の四番目のフィアンセにしていただけませんか?」
→次章に続く
ローザはあっけにとられた。
奇妙なことではない。もしもヴィクトルが最初からローザを選び、幼いローザが従兄を淡い初恋としてあきらめてエドアルドを望まなかったならば、親族のつながりを深めるために結婚することもあり得ただろう。
しかしローザはすでに、この国の第二王子と婚約し、侯爵家の息子や準貴族の豪商とも婚約している。
いまさら従兄妹同士で結婚する意味はない。――普通ならば。
ローザの探るような視線に、ヴィクトルは爽やかな笑顔を返してきた。
「善き返事を期待しているぜ。俺は君から離れるべきじゃなかった……」
ローザの艶やかな巻き毛の先に口付けて、ダンスを終えたヴィクトルは離れていった。
◆ ◆ ◆
呆然と立ち尽くしていたが、
「ミズローザ、次はぼくと踊っていただけますか?」
生徒会で書記の補佐をしているニコが、横合いから声をかけてきた。
癒し系ショタのほんわかした笑顔にほっと和んで、ローザはその手をとる。
まだほとんど同じ身長のためか、それとも彼が上手なためか、踊りやすい。子猫のように愛らしいステップで踊る。女の子とダンスをしているような気持ちになる。
紫のふわふわした髪に合う紅薔薇色の礼服で、とても似合っていた。着こなしが難しい色だけど、白い縁取りや小物でうまく、彼の魅力を引き立てている。さすがは美のパラメーターが高くないと攻略出来ないキャラクターだった。そのセンスをリリィにちょっと分けて欲しい。
くるり、くるりと回ると、ニコと同じ顔をした義弟のロジィが視界に入った。
自分が踊るでもなく、壁際からこちらを見守っている。
攻略キャラなだけあって顔は可愛いし、妾腹とはいえ公爵家のあととりだ。努力家で優しい良い子でもあるのに、浮いた話を聞かない。
こんなときこそ、素敵な女の子と交流すれば良いのに……。
「ミズローザ、ロジィのことが気になりますか?」
笑みを含んだ声に、意識が引き戻される。
「ごめんなさい、ニコ。ちょっと心配で……」
「ロジィは立派な男ですよ? 貴女が母親のように心配していては自立できません」
「……そうね、ごめんなさい」
くるり、くるりと回る。
「貴女にはロジィが男には見えないようですが、ぼくのことはどうですか?」
髪の色だけ義弟と違った少年が、ローザの腰に片手を回して、踊りながら問いかけてくる。
瞳が大きな、少女のような顔立ちの年下の少年が、色香あふれる微笑みを見せた。
ニコ・ヴィオラ。
スミレの花のように可憐で、なおかつ匂い立つような美しさを秘めている。
「愛しています、ミズ・ローザ。ぼくを貴女の四番目のフィアンセにしていただけませんか?」
→次章に続く
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