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◆婚約式の騒動◆
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ゆったりした音楽のもとローザは従兄のヴィクトルと踊る。
彼も上位貴族の嫡男とあってとても上手ではあるのだけど、相手に合わせるのは苦手なようだ。手足が長いぶん合わせるのが少し大変だった。
しかしそれは、慣れの問題も大きいのかもしれない。
何度も身体を重ねて気心が知れた婚約者たちと違って、彼とはあまり交流していないのだ。
幼い頃は、押しが強くてわがままなローザからヴィクトルは逃げ回っていたし、ローザが前世に目覚めてからは、なんとなくローザのほうが避けていたのだから。
「もう、お嬢ちゃんだなんて呼べないな」
踊りながらそっと耳元に唇を寄せてくる。
バリトンの甘い声。
前世の乙女ゲームで、彼がリリィに告げたのと同じ言葉だ。と、ローザは気が付いた。
「お嬢ちゃんじゃないな……ローザ。君は美しい女性になった。まるで蝶のようだ。――願わくばこの俺を、四番目の婚約者にしてくれねぇか?」
「!」
驚くローザに視線を合わせて、ヴィクトルは微笑んだ。本来の自分の好みとは異なっているはずの、野性味のある笑顔だった。
身体の奥底にある、前世が目覚める前のローザの心臓がトクリと鳴った。
◆ ◆ ◆
彼も上位貴族の嫡男とあってとても上手ではあるのだけど、相手に合わせるのは苦手なようだ。手足が長いぶん合わせるのが少し大変だった。
しかしそれは、慣れの問題も大きいのかもしれない。
何度も身体を重ねて気心が知れた婚約者たちと違って、彼とはあまり交流していないのだ。
幼い頃は、押しが強くてわがままなローザからヴィクトルは逃げ回っていたし、ローザが前世に目覚めてからは、なんとなくローザのほうが避けていたのだから。
「もう、お嬢ちゃんだなんて呼べないな」
踊りながらそっと耳元に唇を寄せてくる。
バリトンの甘い声。
前世の乙女ゲームで、彼がリリィに告げたのと同じ言葉だ。と、ローザは気が付いた。
「お嬢ちゃんじゃないな……ローザ。君は美しい女性になった。まるで蝶のようだ。――願わくばこの俺を、四番目の婚約者にしてくれねぇか?」
「!」
驚くローザに視線を合わせて、ヴィクトルは微笑んだ。本来の自分の好みとは異なっているはずの、野性味のある笑顔だった。
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