【R18】溺愛×悪役令嬢 reboot

月極まろん

文字の大きさ
上 下
39 / 50
◆婚約式の騒動◆

1

しおりを挟む
 さすが公爵令嬢だ。
 婚約式は華やかだった。

 ひとりめの婚約者がこの国の第二王子ということもあって、城の大広間の中でもいちばん広くて豪華なホールを借りている。


 主役であるローザ・ロゼ嬢は、真っ白なドレスだ。彼女の美しい肌とプロポーションを引き立てる豪奢なデザインで、あちこちに髪と同じ色をした紅薔薇のモチーフと真珠の粒が縫いつけてある。
 もともと華やかな美女ではあるが、笑顔は柔らかく、今夜は光り輝くようだった。

 最初に彼女と踊ったのは、第一婚約者であるエドアルド・イ・ペオニア殿下。
 黄金をつむいだような鮮やかな髪と、アイスブルーの双眸の美丈夫で、まるで教本のように完璧なダンスだった。
 礼服は、最初の婚約者であることを見せつけるようにローザと揃いの白い生地に金と紅薔薇色をアクセントにしたもので、絵本の王子のように凛々しかった。

 次に踊ったのは、第二婚約者であるチェリオ・ジラソーレ。侯爵の息子で、まだ学生でありながら騎士の資格も持っている。
 オレンジの長い癖っ毛と深い緑の瞳の伊達男で、女性人気も高い。ダンスは遊び心のあるもので、ときおり楽しそうにローザを振り回すようにするものの、優雅にリードした。
 礼服は、ローザの瞳を思わせる鮮やかな緑で、彼の髪との相性も良かった。

 最後に踊ったのが、三番目の婚約者となったカルミネ・カモミール。
 富豪の長男であり、祖父の代からの準貴族ながらもそのへんの貴族より貴族らしい繊細な貴公子っぷりだ。
 まっすぐなグリーンの髪は珍しいもので、眼鏡に隠された目は灰色だ。ダンスはきちんとした生真面目なもので、複雑なステップすらもこなしてみせた。
 こちらの礼服は灰色に白い縁取りで、胸にローザのドレスのものと同じ紅薔薇の飾りを付けている。


  ◆ ◆ ◆


 カルミネと踊り終わったローザのもとに、ふたりの婚約者が寄り添った。
 音楽が切り替わり、拍手していた人々もフロアへと進み出て踊り始めた。

 ローザは、エドアルドが差し出した飲み物で喉を潤す。
「紅薔薇のお嬢ちゃん、素晴らしいダンスだったよ」
 進み出てきたのは従兄であるヴィクトル・ディスティルだ。短く刈り込んだ赤煉瓦色の髪に、ラピスラズリの瞳。長身のたくましい肉体を紺色の礼服に包んでいる。
「ありがとうございます、ヴィク兄さま。みなさまのリードが巧みだったからですわ」
 ついにこの日が来たのだ。準備がとても大変だったし、婚約者たちをお披露目できるのも嬉しい。
 わずかに浮かれているため、いつもは少し苦手にしている従兄にも、穏やかに返すことができる。
「次は俺と踊ってくれるかな?」
「喜んで」
 従兄であり、南方に広い領地を持つ別の公爵家の嫡男だ。ローザが婚約者とのあとに踊るのにはちょうどいい相手だ。
 それに、悪い人ではないのだ。
 顔立ちは整っているし、性格も朗らかで明るく面倒見が良い。昔の――前世に目覚める前の悪役令嬢ローザが憧れていたのも無理はない。

 ローザはヴィクトルが差し出した手にするりと片手を滑り込ませた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです

斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。 思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。 さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。 彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。 そんなの絶対に嫌! というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい! 私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。 ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの? ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ? この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった? なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。 なんか……幼馴染、ヤンデる…………? 「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...