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番外編◆お日さま曜日に公園で
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「おねえちゃん、ありがとう! 天使さまみたいだ!」
大きな木から飛び降りたリリィから風船を受け取って、こどもたちが歓声をあげた。
たしかに、真っ直ぐでサラサラの銀の髪に華奢な美貌のリリィは、天使のようだ。白と水色のワンピースがとてもよく似合っている。ゲームの中でもよく天使に例えられているし。
こどもたちはリリィに何ごとか囁かれて、少し離れたところに佇むローザを見た。
今日のローザは薔薇色のワンピース姿で、日傘をさしていた。
「女神さま、ありがとう!」
……めがみさま?
「風船が引っかかってるのに気付いたのは、ローザさまじゃないですか」
こどもたちに手を振って戻ってきたリリィが笑う。
「だから『あの女神さまが、あなたたちが困っているのに気がついたんだよ』って、教えてあげたんですよ」
「わたくしは、何もしてませんわ」
そもそも、リリィのように助けられない。
公園で散歩をしていたら、こどもたちが木に登ろうとしては失敗するのが見えて、その木の高い枝に風船が引っかかっているのに気付いたのだ。
足を止めて、どうやって風船を取ってあげようかと思案していたら、一緒にいたリリィがすぐにこどもたちに駆け寄って、あっというまに木に登って助けたのだ。
背中に白い翼が生えているかのようだった。
というか。
このゲームは他のキャラクターとの交流のほかに、ヒロインを育成するターンがある。
そこで、スポーツや勉強、ファッションセンスを磨くのだ。
攻略したいキャラに合わせて時間を振り分けるけれど、どれかひとつだけに絞ると、結局は進学が出来なくなってしまう。
だけどリリィは、勉強もそこそこちゃんと出来るのに、運動能力のほうはカンストしている。いや、ゲームの中ですべてのパラメーターをスポーツに振り分けた時よりもスポーツが得意な気がする。
さっきのようなすごいシーンはゲームに出てきた記憶がないし、なにより、なぜこちらのリリィは生徒会の書記ではなく、運動部の代表になっているのか……。
確かに彼女の実家は荒事にも慣れた特殊な環境という設定だったけれど、基本的には頭脳派ヒロインだったはずなのに……。
大きな木から飛び降りたリリィから風船を受け取って、こどもたちが歓声をあげた。
たしかに、真っ直ぐでサラサラの銀の髪に華奢な美貌のリリィは、天使のようだ。白と水色のワンピースがとてもよく似合っている。ゲームの中でもよく天使に例えられているし。
こどもたちはリリィに何ごとか囁かれて、少し離れたところに佇むローザを見た。
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「女神さま、ありがとう!」
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「わたくしは、何もしてませんわ」
そもそも、リリィのように助けられない。
公園で散歩をしていたら、こどもたちが木に登ろうとしては失敗するのが見えて、その木の高い枝に風船が引っかかっているのに気付いたのだ。
足を止めて、どうやって風船を取ってあげようかと思案していたら、一緒にいたリリィがすぐにこどもたちに駆け寄って、あっというまに木に登って助けたのだ。
背中に白い翼が生えているかのようだった。
というか。
このゲームは他のキャラクターとの交流のほかに、ヒロインを育成するターンがある。
そこで、スポーツや勉強、ファッションセンスを磨くのだ。
攻略したいキャラに合わせて時間を振り分けるけれど、どれかひとつだけに絞ると、結局は進学が出来なくなってしまう。
だけどリリィは、勉強もそこそこちゃんと出来るのに、運動能力のほうはカンストしている。いや、ゲームの中ですべてのパラメーターをスポーツに振り分けた時よりもスポーツが得意な気がする。
さっきのようなすごいシーンはゲームに出てきた記憶がないし、なにより、なぜこちらのリリィは生徒会の書記ではなく、運動部の代表になっているのか……。
確かに彼女の実家は荒事にも慣れた特殊な環境という設定だったけれど、基本的には頭脳派ヒロインだったはずなのに……。
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