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◆白百合のヒロイン◆
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「すまない、リリィ。頼んだ」
学園の女子寮の、王族しか知らないという秘密の裏口。フード付きのマントに包まれたローザはエドアルドの腕の中から下ろされた。
足腰が立たずによろけたところを、リリィに支えられる。
「ローザさま、大丈夫ですか?」
空はもう、とっくに暗くなっている。
窓明かりを背にしたリリィは、ここまで届けてきた主従ふたりを睨み上げた。
彼女は、自分自身がただの庶民だと思っていた(貴族の隠し子ではないかと疑ってはいたが)頃から、誰が相手でも臆さない。
「おふたりとも、長年の想いがやっと実ったからって、やりすぎです。ローザさまが壊れたらどうするんですか」
エドアルドとチェリオはばつが悪そうに目を見交わした。
真面目な完璧王子とチャラくて怠け者の高位貴族(と、世間では思われている)のくせに、さすが幼なじみ。こういう時は息がぴったりだ。
さきほども息ぴったりでふたりがかりで愛されたことが脳裏によみがえり、ローザはフードの陰で頬を染めた。
リリィの袖をひく。
「わたくしは大丈夫ですわ、リリィ。ちょっと……ちょっと疲れただけですの。それより、早く部屋に戻りたいです」
「そうですねぇ。その前にお風呂をいただきましょう。寮監さまに、ひとつお湯を落とさずに残していただきました」
ローザは喜びに顔を輝かせた。
今日は布で拭くしかないかと諦めきっていたのだ。
「さ、行きましょ。ローザさま」
腕を引かれながらも振り返ると、エドアルドとチェリオが恥ずかしそうに手を振ってくれた。その優しい笑顔に胸が痛くなる。
こんなに素敵な人たちが、どちらも自分の婚約者なのだ……。
これは本当に現実のことだろうか?
おずおずと手を振り返すと、ローザはリリィに導かれて寮へと入っていった。
学園の女子寮の、王族しか知らないという秘密の裏口。フード付きのマントに包まれたローザはエドアルドの腕の中から下ろされた。
足腰が立たずによろけたところを、リリィに支えられる。
「ローザさま、大丈夫ですか?」
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彼女は、自分自身がただの庶民だと思っていた(貴族の隠し子ではないかと疑ってはいたが)頃から、誰が相手でも臆さない。
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エドアルドとチェリオはばつが悪そうに目を見交わした。
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リリィの袖をひく。
「わたくしは大丈夫ですわ、リリィ。ちょっと……ちょっと疲れただけですの。それより、早く部屋に戻りたいです」
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ローザは喜びに顔を輝かせた。
今日は布で拭くしかないかと諦めきっていたのだ。
「さ、行きましょ。ローザさま」
腕を引かれながらも振り返ると、エドアルドとチェリオが恥ずかしそうに手を振ってくれた。その優しい笑顔に胸が痛くなる。
こんなに素敵な人たちが、どちらも自分の婚約者なのだ……。
これは本当に現実のことだろうか?
おずおずと手を振り返すと、ローザはリリィに導かれて寮へと入っていった。
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