【R18】溺愛×悪役令嬢 reboot

月極まろん

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◆悪役令嬢と花の王◆

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 大人気の乙女ゲーム、『アイウォーラ ~百の花々は学園で咲き誇る~』(通称百花園)。
 ここがその世界だと気が付いたのは七歳になった誕生日だった。

「おめでとうローザ」

 大きな花束を差し出してきたのは、柔らかそうな黄金の髪とアイスブルーの瞳の愛らしい少年。自分が我が儘を言ってほぼ無理矢理に婚約したばかりの第二王子だ。その整った顔に浮かんだ完璧な愛想笑いは天使のようで、元の自分ならば本当に好かれているのだと勘違いしただろう。
 ……元の自分?

 ああ。彼は前世から大好きなゲームのヒーローのひとり、エドアルド王子の幼い姿だ。
 そして自分は、ゲームのヒロインであるリリィに意地悪をする赤毛の公爵令嬢ローザ。
 誇り高いけれど、嫉妬深くて頑固で残酷なローザ。平民でありながら主席で入学してきたリリィが気に食わず、ひどい嫌がらせを繰り返してしまう。
 自分ローザの婚約者や義理の弟、あこがれの従兄などが、彼女リリィに心惹かれるのがさらに許せなくて……。

 ローザは知らない。
 銀色のストレートヘアのせいで冷たそうに見えるリリィが、どれほど良い子で、明るくって面白くて可愛いのか。
 そして知らない。リリィが、赤ちゃんのときに誘拐された王弟の娘ーーエドアルド王子と同い年の従姉妹であることを。
 最期は学園の卒業式の日に、城の大広間で弾劾され、鞭打たれて国外追放になるローザ。
 自慢の紅薔薇色の巻き毛も高価なドレスもボロボロになり、明るい緑色の瞳から光が失われた憔悴した顔で、護送用の馬車に乗せられるスチルが彼女のラストシーンだ。
 そんな自分の未来は嫌だった。

 だから、その日から我が儘な言動をあらためたし、十四歳で王立学園に入学してからこの三年間、リリィに話しかけて仲良くした。
 入学せずに逃げる方法もあったのだろうけれども、あらゆるヒロインの中でも一番大好きな推しキャラであるリリィに実際に会ってみたかったし、ゲームの中ではローザのほかにもリリィを虐めるキャラがいたので、守りたかったのだ。
 リリィの強さや優しさに、前世でどれだけ励まされただろう。
 恩返しするチャンスだった。
 暴力や陰口が苦手だから、リリィを虐めようとする周りの令嬢たちをたしなめたり、ゲームをプレイした知識を使ってリリィやほかの人を助けたり、周りの居心地を良くしていった。
 大好きなゲームのキャラクターたちは、とても魅力的で素敵な人たちばかりで、モニタに出なかったエピソードや世界はとても楽しかった。婚約者であるエドアルド王子は、ゲームの中よりもさらに格好良くてドキドキした。……なのに。

 ゲームに出てきたローザが弾劾されるシーンまであと一年。もうすこし--四年生になれば卒業だというのに。
「……なぜ、こんな……、ひどいわ」
 涙がこぼれてしまう。

「なんて、ひどいひとなんだ君は」
「あなたみたいな貴族令嬢なんて、信じられません」

 この言葉を聞きたくなかったのに。ゲームよりも早く、こんなことになるだなんて。
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