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新米魔女の試練
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金の狼に向かってワインのボトルが降ってきました。
「!?」
飲み口にハンカチが詰め込まれ燃え上がっているそれを彼らが視認するのと同時に、瓶は爆発します。小さなボトルと思えないほど激しい火花が、狩人が手にする魔法の猟銃を超える威力と殺意で広範囲へと飛び散ります。
狼の周囲にいた魔物たちが、魔力を込められた高熱に悲鳴をあげて消滅していきました。
「なんだっ!?」
「おばあさまが、この森にお前のようなモノの存在を許しているということは――」
火炎瓶をかろうじて避けた黄金の狼の背後に降り立ったのは、林檎色のマントの少女。ほっそりとした片手には空っぽになったバスケット。編まれた小麦色の髪が、二本の鞭のようにしなやかに跳ねます。
「――お前を倒すことも、わたしたち新米魔女の試練だということ」
金の狼は爪を振るい、赤ずきんの腹にその先端を突き立てました。
「ざんねん。それはわたしの肉であるパン」
耳元で囁いたのは別の赤ずきん。爪先に貫かれた少女は焼きたてのパンにかわります。
狼は歯を噛み鳴らし、振り向きざまに赤ずきんの喉笛に牙を突き立ててました。
「ざんねん。それはわたしの血であるワイン」
最後のワインのボトルが狼の口内で砕けて、またもや炎を吹き出しました。獣の喉から野太い罵り声があがります。
しかし、本物の赤ずきんがバスケットを振り下ろすと、金の狼は消えました。
「!?」
そのバスケットは檻となって魔物を捕らえるはずでしたが、その寸前に消えたのです。花畑の中に転がっているのは、手足が欠けたうつろな魔女の身体ばかりでした。
「――?」
頭上を警戒した赤ずきんの足が掴まれます。いま、命を失ったばかりの、幼い黒髪の魔女によって。
赤ずきんは仰向けにひっくり返されながら悲鳴をあげました。片足と片目が無い魔女の髪が金色に輝き、爪が伸びた手足が太くたくましく変化し、背が倍ほどにも伸び、穴が空いた片目はいま浴びた火炎の火傷の痕となり、いやらしい黄金の狼へと変わりました。
金狼の特技は変身能力なのです。
「へえっ、今まででいちばん育った魔女だな。弱っちいガキどもには飽き飽きしてたんだ」
軽々と逆さ吊りにされた赤ずきんの白い首筋から乳房まで舐めあげると、長いブーツを乱暴に引き抜いて捨て、華奢な足を、肉の匂いがする熱い舌でしゃぶりまわします。
「俺とのまぐわいで生き延びられたなら、使い魔になってやるよ。魔女と契約すれば俺は潜在能力がすべて使える本当の姿になれるし、お前は俺様の能力に守護されるんだろう?」
「っあ!」
「――まぁ、生き延びられたら、だがな」
赤ずきんの両手を後ろ手に縛ったのは狼の毛でした。彼女の手首に巻き付くやいなや金色の手錠に変化します。
狼の舌は少女の足の指の間をぬめぬめとこすり、膝の裏を唾液でぐしょぐしょにして、幼く柔らかな尻を後ろから味わいます。
「! そこっだめっ」
きゅっと締まった蕾に舌先がたどり着き、ほじるように突き立てます。
赤ずきんは悲鳴をあげて頭を降りました。両側の三つ編みが勢いよく跳ねます。
「こんなに優しくしてやってるのに、何が不満なんだ?」
あざ笑った金の狼は両手で赤ずきんの両足をおもちゃのように掴み、蕾を舐めあげながら、さらに前にある襞の隙間に鼻先を突っ込みました。まだ濡れてはいませんでしたが、これから露をこぼすであろう少女のいやらしいスリットの匂いを吸い込みます。
「いいね、お前は魔力に溢れた匂いがする」
狼の舌は少女の襞をじっくりと嬲り、その端にある小さな実に夢中で吸い付きます。
嫌がる赤ずきんが大きく仰け反りました。
巻き起こったのは風。
赤と黒の風。
獲物に気を取られていた金の狼に背中から激突したのは、真っ黒な狼でした。
「だから無茶だって言ったのに!」
悲鳴のように叫んだ黒狼に、波打つ小麦色の髪を乱した赤ずきんが叫び返します。
「飼い慣らすつもりじゃなかったもの!」
「……っ、てめぇ何しに来た!」
地面に転がり、いつもうろちょろしている鬱陶しい相手に怒鳴った金の狼は、自分の手の中に何も無いことに気が付きました。いえ、それどころか彼の足は、いつのまにか林檎色のリボンに拘束されていたのです。
赤ずきんの三つ編みは、ほどけていました。
魔女は後ろ手に縛られながらも、愛撫を嫌がるそぶりで髪を揺らし、最後の武器であるリボンをその手にしていたのでした。
黒狼が金狼を突き飛ばしたのは、そのタイミングです。
「逃げるよ!」
魚を網ですくい上げるかのように少女を抱き上げ、黒狼は背を向けて駆け出します。
すぐに金狼は魔女のリボンを引き千切りましたが、逃げ足が早い黒狼の背すらも見えませんでした。
「!?」
飲み口にハンカチが詰め込まれ燃え上がっているそれを彼らが視認するのと同時に、瓶は爆発します。小さなボトルと思えないほど激しい火花が、狩人が手にする魔法の猟銃を超える威力と殺意で広範囲へと飛び散ります。
狼の周囲にいた魔物たちが、魔力を込められた高熱に悲鳴をあげて消滅していきました。
「なんだっ!?」
「おばあさまが、この森にお前のようなモノの存在を許しているということは――」
火炎瓶をかろうじて避けた黄金の狼の背後に降り立ったのは、林檎色のマントの少女。ほっそりとした片手には空っぽになったバスケット。編まれた小麦色の髪が、二本の鞭のようにしなやかに跳ねます。
「――お前を倒すことも、わたしたち新米魔女の試練だということ」
金の狼は爪を振るい、赤ずきんの腹にその先端を突き立てました。
「ざんねん。それはわたしの肉であるパン」
耳元で囁いたのは別の赤ずきん。爪先に貫かれた少女は焼きたてのパンにかわります。
狼は歯を噛み鳴らし、振り向きざまに赤ずきんの喉笛に牙を突き立ててました。
「ざんねん。それはわたしの血であるワイン」
最後のワインのボトルが狼の口内で砕けて、またもや炎を吹き出しました。獣の喉から野太い罵り声があがります。
しかし、本物の赤ずきんがバスケットを振り下ろすと、金の狼は消えました。
「!?」
そのバスケットは檻となって魔物を捕らえるはずでしたが、その寸前に消えたのです。花畑の中に転がっているのは、手足が欠けたうつろな魔女の身体ばかりでした。
「――?」
頭上を警戒した赤ずきんの足が掴まれます。いま、命を失ったばかりの、幼い黒髪の魔女によって。
赤ずきんは仰向けにひっくり返されながら悲鳴をあげました。片足と片目が無い魔女の髪が金色に輝き、爪が伸びた手足が太くたくましく変化し、背が倍ほどにも伸び、穴が空いた片目はいま浴びた火炎の火傷の痕となり、いやらしい黄金の狼へと変わりました。
金狼の特技は変身能力なのです。
「へえっ、今まででいちばん育った魔女だな。弱っちいガキどもには飽き飽きしてたんだ」
軽々と逆さ吊りにされた赤ずきんの白い首筋から乳房まで舐めあげると、長いブーツを乱暴に引き抜いて捨て、華奢な足を、肉の匂いがする熱い舌でしゃぶりまわします。
「俺とのまぐわいで生き延びられたなら、使い魔になってやるよ。魔女と契約すれば俺は潜在能力がすべて使える本当の姿になれるし、お前は俺様の能力に守護されるんだろう?」
「っあ!」
「――まぁ、生き延びられたら、だがな」
赤ずきんの両手を後ろ手に縛ったのは狼の毛でした。彼女の手首に巻き付くやいなや金色の手錠に変化します。
狼の舌は少女の足の指の間をぬめぬめとこすり、膝の裏を唾液でぐしょぐしょにして、幼く柔らかな尻を後ろから味わいます。
「! そこっだめっ」
きゅっと締まった蕾に舌先がたどり着き、ほじるように突き立てます。
赤ずきんは悲鳴をあげて頭を降りました。両側の三つ編みが勢いよく跳ねます。
「こんなに優しくしてやってるのに、何が不満なんだ?」
あざ笑った金の狼は両手で赤ずきんの両足をおもちゃのように掴み、蕾を舐めあげながら、さらに前にある襞の隙間に鼻先を突っ込みました。まだ濡れてはいませんでしたが、これから露をこぼすであろう少女のいやらしいスリットの匂いを吸い込みます。
「いいね、お前は魔力に溢れた匂いがする」
狼の舌は少女の襞をじっくりと嬲り、その端にある小さな実に夢中で吸い付きます。
嫌がる赤ずきんが大きく仰け反りました。
巻き起こったのは風。
赤と黒の風。
獲物に気を取られていた金の狼に背中から激突したのは、真っ黒な狼でした。
「だから無茶だって言ったのに!」
悲鳴のように叫んだ黒狼に、波打つ小麦色の髪を乱した赤ずきんが叫び返します。
「飼い慣らすつもりじゃなかったもの!」
「……っ、てめぇ何しに来た!」
地面に転がり、いつもうろちょろしている鬱陶しい相手に怒鳴った金の狼は、自分の手の中に何も無いことに気が付きました。いえ、それどころか彼の足は、いつのまにか林檎色のリボンに拘束されていたのです。
赤ずきんの三つ編みは、ほどけていました。
魔女は後ろ手に縛られながらも、愛撫を嫌がるそぶりで髪を揺らし、最後の武器であるリボンをその手にしていたのでした。
黒狼が金狼を突き飛ばしたのは、そのタイミングです。
「逃げるよ!」
魚を網ですくい上げるかのように少女を抱き上げ、黒狼は背を向けて駆け出します。
すぐに金狼は魔女のリボンを引き千切りましたが、逃げ足が早い黒狼の背すらも見えませんでした。
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