拷問場の気高き乙女

ガイジ

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最終話:拷問場で手を取り合う二人

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処理場によってポストアポカリプスに近い状態にされた水の都の高級飲食店の跡地にて。久々に悪魔全員を集め食事会をしていた。
それにしても本当に良い場所だ。広々としたテーブル、ダマスク柄の壁、煌びやかなシャンデリア。明媚とはこの事か。

「や、やはり破壊神様が作るケーキは美味しいなの!」

処理場は純情な笑顔で私の料理を称賛してくれた。メルヘンなお茶会気分の様だ。

「左様ですこと。破壊神様、私達の為にこの様なお料理を作って下さりありがとうございますわ。美味しいお料理を沢山頂けて幸甚ですわ」

黒く、豪奢なドレス、高貴な血筋の元に生まれたかの様な金髪の髪、その髪にかかった洒落たロールヘヤ。
そんな気品の数々が構成する少女が丁寧に口を動かす様は貴族の様だ。相変わらず支配者は雅やかな印象がある。

「あら、支配者様、お料理を沢山お召しになっているみたいだけれど、体重が増えたのではなくて?」

軍服の様なワンピースの貴婦人はしなやかに短髪ウェーブの髪を弄りながら支配者を侮辱した。折角快い気分だったのにな。

「くっ……!!」

折角の白い歯も食いしばられると台無しだな。支配者や十字架は喧嘩さえしなければ端麗な女性に見えるのに。

「静かにお食事を頂いて欲しいものだね」

「本当だよ。折角の料理が不味く感じるぜ」

破滅札と合成獣は食事の手を止め、やれやれという雰囲気を出している。処理場は周囲に気が向かなくなる程ケーキに夢中の様だがな。

「あ、それはそうと破壊神様、話したい事とはなんだ?気になるぜ」




吸収は完了しておりモアゼルさんとは二度と会えなくなっていました。
また、キャンドルも消滅しています。ですが悲しみに身を委ねていてはいけません。私は策を進める為に使い魔全員にテレパシーである指示を出しました。
……指示を出し終えましたが安息は許されていませんでした。眼前にペガサスに乗った聖騎士が到着している事に気付きます。尚、聖騎士は四肢を失っています。《権力の具現》から解放される為四肢を破壊したのでしょう。

「貴女は破壊神様の使い魔でしょうか?黒猫の悪魔はどちらへ?」

言葉からは焦りが感じられます。質問の答えは敬語を使わずに伝えましょうか。彼女に敬語は使いたくありません。

「私が《残酷なる晩餐》で吸収したの」

「……っっ!!」

焦慮の声でした。悪魔達が聖域への侵入を遂げてしまった事を知った天界の王の様な雰囲気です。

「つまり貴女は破壊神が使用する魔法、黒猫の悪魔が使用する魔法を兼ね備えたという事でございますね……。
しかし、貴女が私を倒す事は不可能でございます……!徒死するのですよ……!異形達の様に!」

油断は完全に捨て去った事が伝わってきます。全力を出すのですね。

「具現!《絶望統括暗黒龍》!!」

聖騎士の周囲から強風がごおおおっと猛然たる勢いで放射されます。
私の髪やドレスは激しくなびきます。そして、聖騎士の周囲に膨大な量の闇が集結します。まるで、聖騎士の所為で死んだ世界中の人間の怨念が集っている様です。
そして闇は形の形成を始めます……。その巨大な姿は崇高なまでに邪悪でした。
三つの頭を持ち、黒色のペガサスの様な姿でした。ペガサスと言ってもそれぞれの頭に血色の王冠を冠しており、禁じられた契約を持ちかける様な悪魔の角を生やしています。

また、首に装飾されたヘタマイトの様な黒き宝石のネックレス、額に刻まれた血色の逆さ五芒星等も邪です。
邪神的な威圧感を感じていると、ごおおおおと甚大な被害をも及ぼす様な暴虐の風が吹き始めます。
黒龍の具現と同時に発動する《悲観する人類》が発動し、台風が発生しているのですね。
――刹那、ペガサスは《破壊衝動の具現》の光線を5発程連射しました。

私は戦い慣れはしていません。ですが、モアゼルさんから引き継いだ移動速度があります。なんとか回避はこなせます。
私に命中しなかった光線は全て後方の芝生に向かいます。光線はどがぁぁぁぁぁ!という轟音を立て芝生を削りました。
黒龍は再度5発程《破壊衝動の具現》を連射します。私は光線を全て避けるのみです。またも命中しなかった光線は芝生に命中し、凄まじい音を立てます。

黒龍は攻撃を停止しました。……!黒光線を発射するだけでは埒が開かないと判断したのでしょうか。
黒龍の一歩前に巨大な魔法陣が浮かび上がり始めました。禁断の魔法の発動準備を開始したという事ですね。
私は予定通り、高速で黒龍と150メートル程距離を取り、即座に《権力の具現》を発動します。
私自身に鉄球の重りを付け、黒龍の元に吸い込まれるのを遅らせる事が狙いです。
気がつくと大いなる絶望の陣は完成していました。《文明崩壊を告げる黒き光》は発動されます。

この時既に黒龍の敗北は確定していました。




ごおおおおという吸収音が五月蝿いです。《文明崩壊を告げる黒き光》の発動から5分程経過すると、私は黒龍の20メートル程手前まで吸い寄せられていました。
また、眼前の魔法陣の元には悲鳴を上げる堕天使達が大量に集結していました。
あれはモアゼルさんによって使い魔にされたこの町の異形達です。使い魔達は元々黒猫の姿だったのですが、モアゼルさんは私の体の一部になりました。
だから使い魔達は私のものに変化し、姿も堕天使に変化したという事ですね。

それはそうと、抵抗しているのか知りませんが、まだ魔法陣の元に集まっていない使い魔が何匹か居るように思えます。では、あと3匹程集まったら策の完遂させましょうか。

「ふふ……!枷を自身に付け時間稼ぎをしている様ですが無意味でございますよ!いずれ貴女も絶望の元へ到着するでしょうね!」

騒音を貫き、遠くまで聞こえる程の声量でした。美しくも迫力がある声に圧倒されそうです。

「やはり《文明崩壊を告げる黒き光》は最強であり、この魔法の前では貴女達は服するのみでございます!具現するまでもありませんでしたね!」

それは違います……!

「私達は貴女に服さない……!実際に貴女に対抗する策の準備は完了しているもの……!」

「何ですかそれは!負け犬の遠吠え、虚言をお聞きする側の立場は気持ち良いものでございますね!
私は玉座に座っているかの様な風格で敗者達の悲鳴を聞く側なのですよ!」

私達は既に敗北していると思いこんで、私の発言は虚言と思っているのでしょうか……。では、

「信じられないなら具体的に話してあげるよ……!私は黒猫の悪魔を吸収した時に黒猫の悪魔の力を手にした事は言うまでも無いね……!
だから私は逆らう事の出来ないテレパシーを使い魔達に伝える力も入手しているという事も分かっているよね?」

「ええ!その様な事英才教育済みの脳は一瞬で理解します!」

「私は絶対服従のテレパシーを使える訳だから、その力を使って使い魔達に、『黒炎魔法を発動し、生成された炎を体内に収納して』と指示していたの……!
使い魔が使える魔法=召喚者が使える魔法だから使い魔達も黒炎魔法を使える筈だしね……!」

「なるほど!つまり、私の前に集まった貴女の使い魔達の体内には破壊の炎が収納されているという事でございますね!
しかし、それは無意味でございます!《文明崩壊を告げる黒き光》は魔法の使用、放出を禁止しますからね!」

「確かに魔法の放出は禁止らしいね……!でも、その禁止って具体的に言うと『魔法を放出させる機能を使う事』が禁止なんだよね?
それなら魔法を放出させる機能を使わずに強制的に魔法を放出させる事は禁止じゃない!」

「そんな事は不可能でございますよ!私が踏みにじった破壊神の精神が元の形に戻る事が不可能な事と同様です!」

私の精神安定を乱させる様な比喩を放ちますが言葉の内容は間違いです。

「不可能じゃない……!私が《弱者を統べる君主》を解除すればいいだけの話だから!」

「……!!まさか……!」

気付いた様子です。自分は既に玉座から引き下ろされていると……!

「察しの通り私が《弱者を統べる君主》を解除すれば使い魔達は人間の姿に戻るよね?
つまり体内に魔法の力を収納する機能は失われる!炎は強制的に放出されるんだよ!貴女の前に集まった大量の使い魔達全員の体内からね!」

「目前の使い魔達全員の体から大量の炎が放出されれば当然私に燃え移る……。そうなれば私は……!!」

「灰塵と化す!」

「……!!あ……あり得ません……!《文明崩壊を告げる黒き光》の発動中は魔法を使えない筈ですもの……」

異形だからという理由で家族を全員処分され憔悴し切った貴族の様な表情でした。言葉の内容は歯車がずれ初めています。

「魔法の使用は禁止だけれど魔法解除を禁止する効果なんて何処にも存在していない!」

「………………」

チェックメイトを宣言した様でした。黒龍は口をつぐみます。しかし、もう憔悴の表示は浮かべていません。
表情を整えていました。
これから自分は死ぬ所だというのに落ち着いた表情をしていられるとはそれ程に精神力が強いという事でしょうかね……。
歴戦の剣を目にしているかの様な感覚を覚えていると黒龍は口を開きます。

「……私の敗北は認めます。ですが、最後に質問させて下さい。何故、貴女達は私に立ち向かって来られたのでしょうか?
貴女達は愛別離苦の感情や圧倒的な私の力に対する絶望の感情を覚えていた筈でございます。
普通の人間なら自ら命を絶つ様な状況だった筈です……。それなのに何故……」

距離が縮まって来た為声量は足りていました。

「確かに拷問を受けているみたいで死にたったよ。でもね、黒猫の悪魔が大切な事を教えてくれたから生きて、
貴女に立ち向かう決意が出来たんだ。大切な事と言っても当然の事だけれどね」

「詳しくお聞かせ下さい」

「黒猫の悪魔から教えてもらったのは私が苦痛に耐えて聖騎士に立ち向かえばネメジスさんを救える、
貴女が拷問に耐える事は愛する人の為になる、気高き事だっていう事だよ……!」

「拷問に耐える事が気高き事と言っても、死んだ方が楽でしょう。生きていれば顔を濡らしたくなる様な激痛に苦しめられるのですよ?」

「私は拷問の様な状況に置かれようと死んで逃げたりはしないって決意をしているの……!激痛なんて歯牙にかけない……!涙一つ流す事はない!」

「……大層な決意でございますね。ですが、感心したりはしません。嫌悪感を覚えております。
同族嫌悪でございますよ。私だってあらゆる苦痛を貫く鋼鉄の剣の如き決意を持っています。
故に、私は幼少期から苦痛に耐えて努力が出来る人間でした。幼少期にした努力が報われる事一切ありませんでしたがね……!」

……私が見ているのは彼女の闇の一角に過ぎないのかもしれません。彼女は底知れない闇を抱えているのでしょうし……。

「今決めました……!嫌悪感ある存在に少しでも弱々しい姿を見せるのはプライドが許しませんね!最後まで堂々たる態度を崩さない事にしましょう!」

ここまで強靭な精神力を持っているとは……。

「死ぬ直前なのに弱気にならないとは……」

「暗黒物質は最後まで堂々たる黒色で君臨し続けるものでございますよ!」

これ以上彼女と話す事は時間の浪費に他なりません。策を完遂させましょうか。

「《弱者を統べる君主》解除!」

黒龍の眼前に集結した堕天使達の体内から炎が一斉に放出され、巨大な炎の柱が生まれます。
その炎柱は世界を破壊する事すら容易そうな勢いで轟々と蠢いています。
そして、炎柱は黒龍を飲み込みました。堕落したかつての貴族は悲鳴を上げません。姿勢を崩す事すらありませんでした。




罪人に一切の慈悲も、希望も与える気の無い暗闇の巨大拷問場の最奥にて……。十字架に磔にされた囚人服の大罪人は外から聞こえる炎を音を聞いていた……。
五月蝿いな……。灼熱の神でも降臨したのだろうか……。また、さっきまで猛威を振るっていた嵐の音は消え失せているな……。
もしかして、サンティや支配者が聖騎士を討ち果たしたという事だろうか……?まさかな……。外で何が起こっているのか不明だがこんな事どうでもいいか……。

私は地獄の門を潜ろうとしている身なのだからな……。でも、どうでもいいと思えない事もあるんだ……。
未練がある……。拷問場の中で冷静になって気付いたんだ……。悪魔達が天意を冒涜している事は理解している……。でも、私は悪魔達に惨たらしい事をし過ぎた……。
十字架が喋っている途中で殺してしまった……。メルヘンが好きな処理場のメルヘンを汚してしまった……。
もうプライドなんて不要なんだ……。謝罪をさせてくれ……。
悪魔を殺し罪滅ぼしをしなければという事に囚われていて倫理観が崩壊していたんだ……。
とは言っても悪魔達はこの世の何処にも居ない……。私が殺したからだ……。そんな絶望の天蓋の中に私は居た……。
だが、その時私が磔にされる十字架近くの天井に穴が穿たれた……。光源から堕天使の様な服装の少女が私に向かって羽ばたいて来る……。まさか……!

「やっと会えましたたね……。ネメジスさん」

私の眼前で黒き翼を閉じた堕天使はサンティだった……!
私の瞳にサンティは救世主の様に映っていた……。まるで眠に囚われた姫を目覚めさせる王子の様な……。
つまりは嬉しかったんだ……。こんな人殺しであり、嘘吐きである私を助けに来てくれた事が……。

「ありがとう……ありがとう……」

私は救済されるべき存在では無い事は分かっている……。だが、この救済の感情に感謝してしまっていた……。

「褒められると嬉しいです……。あ、モアゼルさんにも感謝しないと駄目ですよ。
モアゼルさんが策を考えて、犠牲にもなってくれたから聖騎士を倒してネメジスさんを助けに来れたんですよ」

「そういう事か……。お前が彼女を吸収し2人の力で聖騎士を討ったという事だな……。私なんかの為に犠牲になってくれて心より感謝する……」

「その言葉をモアゼルさんが聞いたら嬉々として妄想の世界に浸り始めそうですね」

「その通りだな……。はは……」

……明るい会話の中ふと我に返った……。私には見るべき現実があるんだ……。

「なあサンティ……。私がこの世界を滅ぼした破壊神である事は分かっているよな……。
だから私は刑死しなくてはならないんだ……。助けに来てくれた所本当に申し訳ないな……」

「…………」

彼女が悲しむ表情は何よりも辛い……。これ程に私の心を動かす表情は世界の何処にも無い……。

「でも、ネメジスさんは自分が生んだ悪魔達をしっかりと処刑しました。減刑されている筈ですよね?」

「罪が完全に消えたわけでは無いが、それはそうかもしれないな……」

「なら自分の望みを私に聞かせる権利くらいある筈です。死刑の前に何か望む事はありますか?
どんな望みでも私が叶えてみせます。最後に私がネメジスさんの望みを叶えてあげればモアゼルさんもきっと満足してくれると思うんです」

なるほどな……。望みは少しあった……。今になって気付いたが私はサンティに大天使ネメジスとして振る舞っていた時間が幸福だった……。
幻想的だった……。最後はそんな流麗なハープの音楽が合う様な幻想の中で逝きたいんだ……。だから、

「幻覚魔法で私達を出会った当初と同じ姿に見える様にしてくれ……。
私達が使う魔法のエフェクトも天使らしいものに変えるんだ……。そしてお前は私に《灰塵と化す愚者》を放つんだ……。お前の手で私を殺してくれ……」

サンティは苦心の表情を浮かべ口を開く……。

「……本当にその望みでいいんですか?」

「ああ……。私は今言った事を心から望んでいる……」

「了解です。私がネメジスさんが心からの願望を叶えられるなら、
モアゼルさんが命を捨ててまで私とネメジスさんを再開させてくれた事に大きな価値があったと思えますしね」

「左様だな……。黒猫の悪魔には頭が上がらない……」

黒猫の悪魔に大いなる謝意を抱いているとサンティは決意を感じられる表情を浮かべる……。

「《聖なる偶像》!」

暗い目をした王子とロリータの使い魔は再開を果たした……。そしてサンティの方からごくりと唾液を飲み込む音が聞こえる……。悲劇を終幕させるんだ……。

「《灰塵と化す愚者》!」

輝かしい炎が私を包み込む……。炎の輝きは神聖で、罪が浄化される様だ……。
その様な炎に包まれて重畳だがサンティは寂しげな表情だった……。
葬式場で両親が火葬される光景を見る子供の様だ……。永遠の別れが哀痛なのだな……。私まで悲しく――途端サンティが可笑しな行動に出た……。

「サンティ……!私から離れろ……。お前まで死んでしまう……」

サンティが磔になる私に抱きついて来たのだ……。断罪の炎はサンティにも燃え移る……。

「いいえ……。これで良いんです……。今意味が分かりました……。愛の対象が悪人だろうと付いて行き、その道の果ては破滅であるなら共に破滅する。これが真の愛ですから……」

同じ言葉を耳にした事がある……。確か言葉の主は許嫁と対談するかの様な丁寧な口調だった……。

「黒猫の悪魔に感化させられたという事か……。だが、お前には罪は無い……。それに未来があるだろ……」

「いいえ。考えてみればネメジスさんが居ない世界に未来なんてありませんよ……。
それに私だって聖騎士を倒す過程で無辜の使い魔達を沢山殺しました……。私も罪人なんです……」

ありのままのサンティだった……。嘘を吐かない、純粋な瞳だった……。

「では、世に執着は無いんだな……?」

「はい」

サンティは成長したのだな……。選択を自分で出来る人間に……。私もサンティに抱き付いた……。そして、煌びやかな炎の中、人生最後の会話が始まる……。

「ねえネメジスさん。私も最後に望みがあるんです。聞いてくれますか?」

「何だ……?こんな状況でも聞ける望みなら何でも聞いてやる……」

「もしもの話ですがね、私達が今の記憶を維持したまま転生出来たら、
ネメジスさんは私の転生先を探し出して会いに来て欲しいんです。ネメジスさんは利発だから人探しも得意でしょう?それに……」

「寂しいのだろ……。サンティは寂しがり屋だからな……」

「そうですね、でもネメジスさんだって寂しがり屋じゃないですか……。私達が最初に出会った小屋でのやり取りは忘れていませんよ……?」

「そうだったな、私も寂しがり屋なんだ……。はは――」




私はコーヒーの香りと味を軽く楽しみティーカップを置いた。話しを始めようか。

「人間には様々なタイプが居る事は分かっているよな。この惨状でも尚、涙も流さず、気高く私達に攻撃してくるタイプの人間には敬意を持って接して欲しいんだ」

「何故でしょうか?人間達もダニに敬意を持って接したりしないでしょう。格下の者には敬意を持ったりしないのは当然だと存じますわ」

彼女は反論も礼儀正しく行う。まだ私の言いたい事は伝わっていないみたいだし続きを話そうか。

「確かに人間達は私達より格下だ。だが、人間達にとって今の状況は絶望そのものだよな。
強大な悪魔が降臨し、挨拶の様な感覚で人が殺され、世界は破滅的な終わりに向かっている。
心が痛くて痛くて仕方がないだろう。今の人間達からすれば自分達は精神的な拷問場に居るかの様な心境と言えるよな」

「左様でございますわね」

「そんな拷問場の様な世界に居ながら気高くあろうとする精神、素晴らしいと思わないか」




END
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