上 下
44 / 58
第4章。「東の地球の誕生」

13、魔族の王(014)~(019)

しおりを挟む
--魔族の王(014)--

そして、夜になった。
裕也は、かくまわれていた家を出、商店街の路地にでた。
果物屋やクリーニング屋や洋服屋の看板が出てる。
シャッタは、路地に入った時と同じで降ろされたままである。
(人はいない)
アーケードの切れ間から以前に魔族の国へ来た時と同じ場所。
遠く城がそびっていた。
(よし、私は行くとしよう)
裕也は、心を決め、迷いを払った。
少し歩くと、今度は、コンビニがある。
コンビニには電気がいていた。
看板が煌々こうこうと光っている。
(入ってみるか。何か買って行こう)
裕也がコンビニの扉の前に立つと、自動ドアが開いた。
中に入る。
棚には、お菓子が並んでいる。
ポテトチップスの袋がある。
地球と同じ袋のようだ。

奥には、弁当。
アイスお入れた冷蔵ボックスがある。
色々な飲み物や酒類も置かれている。

(自分が住んでる街のコンビニと同じ)
(何が良いかな?)
(そうだ、ワインにしよう。
 お祝い気分?
 そんな場合じゃないけど、まあいいや)

裕也は、赤ワインのびんを3本抱えてレジに向かった。
誰もいない。
「すいません すいません 店員さんはいますか」
返事はなかった。
どこへ行っても『王のルール』がある。
人に見本を見せなければならない。
(お金を払わなくてはいけない)
裕也は、お金を2千円置いてコンビニを出ることにした。

--魔族の王(015)--

裕也は、城への道を急いだ。
(城は、小高い丘の上にある。
 正面は、だめだ。
 西側へ。まず坂を登ろう)
裕也は、西に進んで、それから坂を登った。
登り切り、城の西側の門に続く道に出た。
まずい。数人の人影が見える。
(来ることが、誰かにれたのか?)
その影は、急にこちらに走り出した。
(ワインが重い。じゃまだ)
ワインの瓶を2つ捨て、
1本だけ持って路地へと走った。
しばらく走ると公園があった。
公園は、木々でおおわれていた。
(ここで暫く隠れよう。
 でも、もし俺がとらえられたら?)
裕也は、手に持ったワインの瓶をさくにぶつけた。
それは、破片はへんを飛び散らせわれた。

--魔族の王(016)--

裕也は、手に持っているワインの瓶を割った。
瓶は、口から3分の1を残して鋭く切り立っている。
(武器になるかな)
彼は少し思考が止まった。
(俺は、何をしようとしているのだ。
 こんな凶器を使っては、
 相手を傷つけてしまう。
 どんな相手でも、そんな行動を犯してはならない。
 それは、罪の行動だ)
裕也は、ぎりぎりのとっころでその行動を思いとどめた。


--魔族の王(017)--

裕也は、手に持っている瓶の欠片かけらを捨てた。

「裕也。見つけたぞ」
ふと気づくと魔族の警備隊が公園を囲んでいた。

「私は、アイリア王女に会いに来ただけだ」
裕也は、警備隊に言った。

だが、そんなことが通じる相手と裕也も思っていない。

「あなた達の女王は仏法を行ずると誓った。
 あなた達は、その女王からよみがえった。
 その事を知らねばならない。
 あなた方は、仏法者なのです。
 過ちを犯せば罪は大きい。
 あなたがたは、仏国土を築かねばならない」
裕也は、言い放った。

「俺たちは、悪魔だ。
 そんなこと知るか」警備隊は、叫ぶ。

「蘇らせられた時、仏法を信じると誓ったはずだ。
 忘れたか!」裕也は、激怒した。

「う。分からん」
警備隊は、少し裕也が毅然きぜんとしているので驚き、どうするか迷った。

「四の五の言うな。やれぇー」
警備隊の一人が言う。
悪魔は女王の命令に従うことに決めたのである。

魔族の警備隊は、裕也に襲い掛かる。
一人、二人、三人、四人、五人と裕也は、払いのけた。
「なんて力だ。普通の人間か」
倒された警備隊の一人が裕也の足をおさえた。
次々と数の力で圧し掛かる。
とうとう裕也は、警備隊に抑え込まれた。
裕也の体の上には、50人ともあろう警備隊がし掛かっていた。
(動けない。これまでか)
裕也が観念しかけた。
その時。

--魔族の王(018)--

裕也の体の上に多くの魔族の警備隊が押し掛かっていた。
裕也は、彼らの下敷きに成っている。
裕也は、圧迫される中、意識が薄れていった。
その時、地面がゆっくり回りだす。
そこだけ時空が違うかのようにである。
だんだん早くなり、
空気が渦を巻き、
竜巻のような風の嵐が起こった。
嵐は、裕也が捨てたワインの瓶の欠片かけらを巻き上げていく。
(裕也、良く頑張りました。安心しなさい。
 後は、私に任せてください)
裕也の心に声が響いた。
そして、天からの声は、その世界に響き渡る。
『魔族の者たちよ。仏法者に生まれ変われば、
 今までの悪の罪をつぐなわなければならない。
 生まれ変われば罪が消える、それは誤りです。
 仏法は、そんなに甘いものではない。
 あなた方は罪の罰をうける時が来たのです』

嵐は、魔族の警備隊に向かってだんだん近づいてくる。
魔族は、異様な雰囲気を感じた。
(罪を償うとき?)
(今の声は、誰の声だ)
(何が起こるんだ?)
「ギャー ガァー ウォー」
ガラスの破片は、魔族たち襲い掛かった。

--魔族の王(019)--

地面は激しく回り、ガラスの嵐は、一段と大きくなり、
日本をした魔族の国全土におよんでいった。
嵐は、容赦なく家を街を破壊する。
罪を背負っている魔族たちは、ガラスの破片が刺さり、次々死んでいった。


そして、魔族の城でも、この異変に気づき始めていた。

(この大地の揺れは、何だ)
魔族の女王メディは、思いあせった。

そして、窓から外を見た。
外は、嵐が吹き叫んでいた。
「バリン!!!」
窓ガラスが割れ、風が吹き込んでくる。

「アアアー。ギャァーー」
メディの額には、ガラスの破片が刺さっていた。
メディは、静かに死んで行く。
その中で思った。
(蘇ったのに。なぜ。なぜ。
 あー。そうだ。
 仏法を信じたのに、私は、何をしていたのだろう。
 裕也)
メディは、また死んだ。

罪を背負いし魔族は、全て死んだ。
大地は、2つに折れ。
そして、時間は止まった。

魔族の王(完)

つづく。 次回(東の地球(001))
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

声劇台本置き場

ツムギ
キャラ文芸
望本(もちもと)ツムギが作成したフリーの声劇台本を投稿する場所になります。使用報告は要りませんが、使用の際には、作者の名前を出して頂けたら嬉しいです。 台本は人数ごとで分けました。比率は男:女の順で記載しています。キャラクターの性別を変更しなければ、演じる方の声は男女問いません。詳細は本編内の上部に記載しており、登場人物、上演時間、あらすじなどを記載してあります。 詳しい注意事項に付きましては、【ご利用の際について】を一読して頂ければと思います。(書いてる内容は正直変わりません)

闇と光の慈愛のコントラスト

ひろの助
ファンタジー
この世界には、闇と光があり、そして、人間がいる。 これは、遠い遠い昔、宇宙の始まりの物語です。 2つの種族があった。 一つの種族は、光の神と崇(あが)められ、 もう一つの種族は、土と共に生きる闇の民である。 神や民と記していますが、それは、誰が決めたのでしょう。 その2つの種族から人は生まれる。 光と闇。それは、戦い合う運命なのか? それが、定めなのか? 神とは、闇とは、魔物とは、人とは何だ。 そんな問いかけ、疑問が沸く物語です。 光の神と闇の民、そして、人間が織りなす模様をご覧ください。 闇の民の老人アクデシアと光の神イリノイスの出会いから始まる。 イリノイスは、全能の神に成りたかった。それで、闇の力を借りて人を創る。 しかし、光の神は、闇の民を羨(うらや)ましいかったのか、闇の民を蔑(さげす)みます。 神も民も人も生命の重みは同じです。 誰が創造したかは、大きな問題ではないのです。 次に闇の女神アクティスと光の神イリノイスとの闘争の物語になります。 闇と光、そして人間、どちらが勝つのか、どちらが正義なのでしょうか? あなたは、この物語を読んでどう思うのでしょう。 私も自身の心にも問いかけています。 遠い昔の細かい情景が浮かぶような物語を目指しています。 出来るだけ、私も想像を駆り立て執筆しますので、 皆さんもどうかお楽しみください。 これは、私がブログに掲載した初めての自作小説です。 当時、何も知らない私は、拙(つたな)い物語を書きました。 今、それを推敲(すいこう)して当サイトに掲載し直します。 WEB小説の形を取っていたため読みやすさを追求しセンテンスは短めになっていて前段は前のセンテンスと被ることがありますが、最初の特徴を出来るだけ尊重したい。それは生かしたいと思っています。 しかし、改善すべきところは改善し多くの人に好かれ読めれることを望みます。 では、物語は、はじまります。

処理中です...