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第Ⅰ章。「二つの種族」

2、人の誕生

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 --時は戻り、闇に眠るアクティスの様子--

アクテイスは眠っていた。
確かに自由はうばわれていた。力もうばわれていた。
しかし、闇は優しくアクテイスをいやす。
アクテイスにとって闇は母である。
今は亡き闇の長アクデシアの優しさ、静けさ、厳格な心が伝わる。
アクデシア(おさ)は当然、性別をつけるとすれば男である。でも、神にとって性別も歳も、有ってないようなものである。女性も男性も同格であった。闇は母(女性)、光は父(男性)である。命は永遠である。

生命は闇からうまれ、光のエネルギーで育ち、闇にかえるのである。

闇は無ではない。(闇は母である)
細かい元素の集まりである。
(優しい 静かな ひんやりした暖かさ)
アクテイスは自分が生きていると感じれるほど意識が少し戻った。
(まだ、生きている…)

(う 体が動かない 目もあかない 呪文かなにか?)
(そんな訳はない 気持ちのエネルギーで打ち破れないものはない
 そう 長アクデシアに教わったではないか…)

(アクテイス それは正しい行いだ)
アクデシアの声が聞こえた気がする。

 --過去に戻る--

 --人の誕生[わけ]--

イリノイスは軽くちゅうに浮くとエネルギーの塊になり白色の光を放った、光は光の天空城に向かって一直線にギュンと走った。
空には、イリノイスの笑い声が残った気がする。
(あははは は は   は)

 天空城には13の塔がある。真ん中に銀の塔、周りに12の金の塔があった。銀の塔がイリノイスの塔である。殺伐さつばつとして城以外に街らしきものは無かった。
ただ一か所の花の森庭を除いて。

イリノイスは銀の塔の頂上の部屋に降り立つ。頂上の部屋は四方が開いていた。そして、螺旋階段らせんかいだんを下へ下へ降りていく。
(これで作物を守れる。作物つくりを12宮神の一人ドッボォフに命じていた。最近、虫というものが農園にでて作物を荒らす。いちいち、そんな小さなものをパワーを使って退治できるものではない。そして、人間と言う種族が増える。いや、奴隷化?とにかく、我と12宮神では、見飽きるわ)

 神にも悩みが有るものだ。我の手先となって働く者が必要であった。そうでなければ、ただの天空をさまよう亡霊の城である。人間をつかって、この広い世界を支配する。そうすれば神の意義もある。全能にも意義がある。当然、イリノイスには、パワーがあった。雲を生み、雨・雷・竜巻・津波、あらゆる天変地異を起こせた。しかし、作物の間に潜む虫をパワーで追いやるには無理があった。作物ごとなぎ倒してしまうからである。
 「着いた」
イリノイスは中心の部屋(中光集殿ちゅうこうしゅうでん)に着いた。そこは、光が集まる場所であった。


--人の誕生[儀式]--

イリノイスは中光集殿の前に立った。
 「光の集まる所へ 我 光の王は着きたり」
 「扉を開けたまえ」
 「オン ザ ヒヤ エレメント」
(呪文か… 我ながらあきる)
呪文…さして、一人で考えると飽きるろもである。呪文は、気持ちを表す言葉である。
若干の条件を明示する意味もあるが、気持ちの重みで力は発揮出来るものである。

扉が両側に開く。「ゴォオ ゴォオオ …」
光が満ちる。真っ白な光の中へ入った。

光の中、中央に祭壇がある。祭壇は2段に成っていた。上段には2本の銀の飾台があり、球を上に乗せていた。
飾台しょくだいとは、飾り台で、円錐の台座がり、その上に物を置ける皿状の器が乗っていた。
そこから光が満ちてる。それが、真光球しんこうきゅう。その左側の球の横には小さな丸い石めいたものが光を受け青白く光を少し放っている。それが、受光石じゅこうせきである。
(太陽と月 これこそ 生命の源だ)
(太陽が父 月が母である)
下の段には、金の飾台があり同じように球体が乗せてあった。真闇球しんあきゅうである。しかし、光は放っていない。飾台の真ん中にはルビーとも見える青い宝石がめてあった。台は黒くクスビテいる。
アクデシアにもらった飾台と球体である。
(アクデシアは金の飾台の前に立てば分かると言っていたが…)
イリノイスはアクデシアに命の種をもらったとき、命を生む呪文を聞こうとしたが、命の種をもらうだけでさえ強い自制心が必要なのに呪文まで教わるには耐えがたいものがあった。
それを察したか、アクデシアは「種はおのずと作用する。金の飾台と真闇球に…」
それ以上、イリノイスは聞くのを止めた。

(立っているぞアクデシア)(何も起こらんではないか…)
(む む むむ 暗い おかしい)
(優しい 静かな ひんやりした冷たさ)
気がつくとイリノイスの体の周りに黒い闇が1mmほど覆っていた。
そして、かすかな振動。
イリノイスの命もまた命の形の元となるのである。
(あ!命の種)黒い闇がポケットを染みて出ていた。
そこには命の種が入っている。

イリノイスは、種を袋から取り出し、そっとつかみ胸の前に握りしめ、そのまま金の飾台に向けた。

すると闇は体に入り、
(暖かい)エネルギーが体に満ち溢れる。
「闇が母である」ぼそっとつぶやいた。
 種は闇となり、金の飾台の中央の宝石に吸い込まれる。
(悟ったようなぁ…)
一瞬、部屋は夜空のように星が輝いたように感じた。


 --人の誕生[誕生]--

 種は闇となり、金の飾台の中央の宝石に全て吸い込まれた。
そして、今度は銀の飾台の上の真光球の光を吸い込み始めた。
(部屋が暗くなる)
「フォルテ フォルテ フォルテ…」
 光は強まろうとするが、真闇球の吸収力は、それと同時に強くなる。
「フォルテ フォルテ フォルテ…」
「フォルテ フォルテ フォルテ…」
「フォルテ フォルテ フォルテ…」
イリノイスは、全身のエネルギーを奪われかけていた。
(これが最後だ。)「フォルテぇえ」
 全エネルギーを使いはたし、ガクッと片ひざをついた。
(これが 全てだ どうだ!)
 部屋が真っ暗になっていた。その中、二つ、光が輝きだした。
(真の光の球が…)
 金の飾台の上の球(真闇球)の中に、二つ光りが現れだしていた。
(お お 真闇球!)
はじめ、二つの光は白色だったか、左の光は、だんだん青みを帯びて、
青と白の二つの光になり、光は球の外に漏れることなく球のなかで、強さを増していく。
やがて、球は青い光一色で満ちた。と思った瞬間、一点残っていた白い光が、
青い光の中心部に飛び込んだ。一瞬、凝縮したかと思うと、一遍いっぺんに爆発する。
光は球の壁を破って、部屋中に満ち溢れた。
(ど う だ ! あははは)
そして、真闇球の光の中から、光が一つ、二つ、…飛び出て宙に止まる。
イリノイスは、力尽きて片ひざをつき、床をぼぅと見ていた。陰が二つ
(う 他に誰か居る 誰だ?)
後ろを振り向くと12宮神のひとり、レマァーが立っている。
「すごい 命の誕生 イリノイス」
レマァーは、うっとりと言う。
「ふふふぅ。とうとうたどり着いたわ」
イリノイスは、満足気である。
「そこで見ていろ」
やがて、12の光が部屋の隅を囲んで留まっていた。一つ一つの光の中には
二つの光、それが、大きくなりつがいの赤ん坊に成っていた。人、地のもの、空のものの誕生である。

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