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第Ⅵ章。「光の神イクタス」
2、神海家
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--神海家--
ここで神海家の話をしよう。
神海家は、天皇家の属家である。
最初に日本に神が降り立った時の、
日本書紀にはないが降りた神の末柄であった。
それ以来、歴史の陰に生き天皇家に仕えていた。
それが、第二次世界大戦の時に血筋は途絶えた。
その後は、養子を迎え家を存続していた。
身寄りのない優秀な子を養子にする。
天導は、そんな子であった。
養子になるには、儀式があった。
大阪から北へ車を走らせた。
「お父様、どこに向かっているのですか?」
天導は、尋ねるか迷ったが、
初めて出る思いである。
話をしようと聞いてみることにした。
「北アルプスだ。
長野県に向かっている。
そこで、お前は、儀式を受けるのだ」
養子にする父は、無愛想に答える。
天導は、尋ねるのを止めた。
「はい。ありがとうございます」
そう言うと声を出すのを止めじっと黙った。
いつの間にか山間を車は走っている。
急に横道にそれる。車が「ガタガタ」と揺れた。
草が生い茂っている。
(こんなところに空き地)
車が数台停まれる草原に出る。
そこに車を停める。
養父と天導と執事の3人は、車を降りた。
すると今度は、草を掻き分け山道に入る。
(こんなところを革靴で登れるのだろうか?)
天導は、自分が履いて来た靴が少し不安になった。
養父の靴を見た。
同じような革靴である。
すると、急に道が現れる。
砂利が敷き詰められた整った道である。
「林を掻き分け登山でもすると思ったか?」
「いいえ」
暫く進むと拓けた場所に出た。
立派な建物がある。
一階建てであるが、屋根は五重塔のように反り返っている。
屋根の上に残りの4重の塔を模した金細工がある。
これは、下から眺めているだけでは見えない。
建物の壁の正面の上側に家紋らしきものがはめ込まれている。
「あの家紋は、我が家の紫陽花の家紋だ」
天導の心を察してか、養父は、説明する。
「はい」
天導は、とにかく返事すべきであると頭で理解した。
格子の横引きの扉を引いて中へ入る。
一段高い畳が敷いてある座敷がる。
靴を脱ぎ揃え上がった。
白装束の神主らしき人が先に座っていた。
天道は、黒のブレザーに白のカッター、ネクタイをし、下は、黒の半ズボンを着ている。
正装である。
養父も正装である。
その後ろに養父と右に天導は、正座した。
神主の正面には、荘厳な屋敷を形どった木の神殿があり、
その前に御神体である鏡が置かれていた。
両側に火のついた蝋燭が揺れている。
最初に神主は、般若心経を読み。
そして、何やら古文書らしきものを次に読んだ。
終わりに、
「南無、天の皆の尊」を繰り返し唱え出す。
天導も唱えるように促された。
永遠に繰り返される。
天導が、唱えるのに慣れてくると、
神主と養父は、礼をした。
「今度、迎えに来るまで祈りづづけるように」
天導に言い出て行った。
水だけが用意されていて、
執事だけが座敷の後ろに残っていた。
昼夜、天導は、ひたすら祈った。
光が入ってくるが、
何日が経ったか分からない。
暗いか明るいかも分からず、
蝋燭に照らし出される御神体だけを見ていた。
意識がもうろうとしたとき、天導は、夢を見た。
白装束のワンピースに、
腰の辺りで紐で結んだギリシャ神話に出てきそうな、
洋風な顔つきの男性が靄に立っていた。
口を開いて話しかける。
(君は、何をしたくて祈っているのだ)
天導は、てっきり日本の神様が現れたのかと思った。
しかし、違った。
天導は、尊敬の念を込め恭しく答えた。
「世の中の頂点に立つためです」
本当は、「祈りなさい」と言われたからかもしれない。
だが、唱えているうちに何の為に祈っているか自問自答していた。
そうして、そういう欲望が湧き結論に達した。
(それは面白い。分かった。
我が名は、『イクタス』)心に声が響く。
「ガゴン!!!!」
体に何かが宿った。
そして、天導は、笑った。
(あはははは)
神殿を前に水だけで過ごした。
不思議な体験をした後は、少しも辛くなかった。
7日後、養父は、迎えに来た。
養父は、7日経った天導の顔を見た。
頬っぺたにそばかすがある。
それは、変わりないが何か違って見えた。
「今日から神海家の一員だ」
養父は、初めて笑顔を見せた。
注)くれぐれもフィクションです。
ここで神海家の話をしよう。
神海家は、天皇家の属家である。
最初に日本に神が降り立った時の、
日本書紀にはないが降りた神の末柄であった。
それ以来、歴史の陰に生き天皇家に仕えていた。
それが、第二次世界大戦の時に血筋は途絶えた。
その後は、養子を迎え家を存続していた。
身寄りのない優秀な子を養子にする。
天導は、そんな子であった。
養子になるには、儀式があった。
大阪から北へ車を走らせた。
「お父様、どこに向かっているのですか?」
天導は、尋ねるか迷ったが、
初めて出る思いである。
話をしようと聞いてみることにした。
「北アルプスだ。
長野県に向かっている。
そこで、お前は、儀式を受けるのだ」
養子にする父は、無愛想に答える。
天導は、尋ねるのを止めた。
「はい。ありがとうございます」
そう言うと声を出すのを止めじっと黙った。
いつの間にか山間を車は走っている。
急に横道にそれる。車が「ガタガタ」と揺れた。
草が生い茂っている。
(こんなところに空き地)
車が数台停まれる草原に出る。
そこに車を停める。
養父と天導と執事の3人は、車を降りた。
すると今度は、草を掻き分け山道に入る。
(こんなところを革靴で登れるのだろうか?)
天導は、自分が履いて来た靴が少し不安になった。
養父の靴を見た。
同じような革靴である。
すると、急に道が現れる。
砂利が敷き詰められた整った道である。
「林を掻き分け登山でもすると思ったか?」
「いいえ」
暫く進むと拓けた場所に出た。
立派な建物がある。
一階建てであるが、屋根は五重塔のように反り返っている。
屋根の上に残りの4重の塔を模した金細工がある。
これは、下から眺めているだけでは見えない。
建物の壁の正面の上側に家紋らしきものがはめ込まれている。
「あの家紋は、我が家の紫陽花の家紋だ」
天導の心を察してか、養父は、説明する。
「はい」
天導は、とにかく返事すべきであると頭で理解した。
格子の横引きの扉を引いて中へ入る。
一段高い畳が敷いてある座敷がる。
靴を脱ぎ揃え上がった。
白装束の神主らしき人が先に座っていた。
天道は、黒のブレザーに白のカッター、ネクタイをし、下は、黒の半ズボンを着ている。
正装である。
養父も正装である。
その後ろに養父と右に天導は、正座した。
神主の正面には、荘厳な屋敷を形どった木の神殿があり、
その前に御神体である鏡が置かれていた。
両側に火のついた蝋燭が揺れている。
最初に神主は、般若心経を読み。
そして、何やら古文書らしきものを次に読んだ。
終わりに、
「南無、天の皆の尊」を繰り返し唱え出す。
天導も唱えるように促された。
永遠に繰り返される。
天導が、唱えるのに慣れてくると、
神主と養父は、礼をした。
「今度、迎えに来るまで祈りづづけるように」
天導に言い出て行った。
水だけが用意されていて、
執事だけが座敷の後ろに残っていた。
昼夜、天導は、ひたすら祈った。
光が入ってくるが、
何日が経ったか分からない。
暗いか明るいかも分からず、
蝋燭に照らし出される御神体だけを見ていた。
意識がもうろうとしたとき、天導は、夢を見た。
白装束のワンピースに、
腰の辺りで紐で結んだギリシャ神話に出てきそうな、
洋風な顔つきの男性が靄に立っていた。
口を開いて話しかける。
(君は、何をしたくて祈っているのだ)
天導は、てっきり日本の神様が現れたのかと思った。
しかし、違った。
天導は、尊敬の念を込め恭しく答えた。
「世の中の頂点に立つためです」
本当は、「祈りなさい」と言われたからかもしれない。
だが、唱えているうちに何の為に祈っているか自問自答していた。
そうして、そういう欲望が湧き結論に達した。
(それは面白い。分かった。
我が名は、『イクタス』)心に声が響く。
「ガゴン!!!!」
体に何かが宿った。
そして、天導は、笑った。
(あはははは)
神殿を前に水だけで過ごした。
不思議な体験をした後は、少しも辛くなかった。
7日後、養父は、迎えに来た。
養父は、7日経った天導の顔を見た。
頬っぺたにそばかすがある。
それは、変わりないが何か違って見えた。
「今日から神海家の一員だ」
養父は、初めて笑顔を見せた。
注)くれぐれもフィクションです。
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