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二章 人気者の先輩たち
風雅先輩とわたし
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人間の街から引っ越してきて、あやかしの学校・北妖中学に入学して一週間。
なじめるのか、友達が出来るのかと心配していたのがウソのように順調な学生生活を送っていた。
引っ越してきたその日に仁菜ちゃんと仲良くなれたし、クラスメイトとも結構普通に仲良くできてる。
学校生活も基本は人間の学校と変わりないから、戸惑うこともなく通えてる。
ただ、戸惑いはないけれどちょっとした驚きはちょくちょくあった。
クラスメイトのカッパのあやかしである河内くんが、カツラを取って頭の皿を見せつつ「私がフランシスコ・ザビエルだ」なんて言って笑いを取るのはいつものことだし。
二年の雪女の先輩が友達とケンカしてうっかり水道凍らせちゃったってのもある。
そんな驚きを体験しつつ、楽しい学生生活を送っていた。
……ただ一つをのぞいては。
***
あっ……。
移動教室で音楽室に向かっているとき、ちょうど反対側から風雅先輩が友達と歩いて来るのが見えた。
わたしが気づいたすぐ後に風雅先輩もこっちに気づく。
その瞬間、風雅先輩がふわりと微笑みを浮かべた。
ドキドキはしつつも最近ちょっとだけ慣れてきた表情。
それに応えるようにわたしはペコリと会釈した。
「次は音楽か? 美沙都の歌も聞いてみたいな」
「聞かせるほどうまくないですよ?」
「それでも聞いてみたいよ。……じゃあな」
と、頭にポンと手をのせて去って行く風雅先輩。
そんなちょっとしたやり取り。
でも、そんなやり取りですらたまたま周囲にいた人たちにとってはかなりの衝撃みたいで……。
「滝柳先輩、あんな風に笑うことあるの!?」
「ってかあの子誰だよ!?」
「ちょっと! あなた滝柳先輩とどういう関係!?」
と、風雅先輩が見えなくなった途端詰め寄られる。
「みなさん落ち着いてくださーい!」
一緒にいた仁菜ちゃんが抑えてくれて、何とか聞く体勢になってくれた。
「山で迷ってたところを助けてもらっただけです。小動物扱いされているだけです!」
何度も口にした説明を今回も言う。
校内で風雅先輩と会うと繰り返される光景。
何度詰め寄られても慣れる気はしないけれど、言うべきことはこの2つだけってハッキリしてきたと思う。
「助けてもらった?」
「小動物扱い……ああ……」
小動物扱いされているって言うといつも納得される。
うう……小柄なのは今だけだもん。
これから成長期が来るもん!
小動物扱いなんて自分で言うのはちょっと悲しくなるけれど、事実だし騒ぎが一番早く収まる。
でもこんな感じだから、わたしが風雅先輩に可愛がられているっていうのは結構知れ渡ってしまった。
仁菜ちゃんと秘密にしようって決めたことは、早々にばれてしまっていたんだ。
今のところは丸く収まっているけれど、このまま何も起こらなければいいなぁ。
なんて思っていたからかな?
まさかこのあと、とんでもない出会いが立て続けに起こるとは思わなかった。
なじめるのか、友達が出来るのかと心配していたのがウソのように順調な学生生活を送っていた。
引っ越してきたその日に仁菜ちゃんと仲良くなれたし、クラスメイトとも結構普通に仲良くできてる。
学校生活も基本は人間の学校と変わりないから、戸惑うこともなく通えてる。
ただ、戸惑いはないけれどちょっとした驚きはちょくちょくあった。
クラスメイトのカッパのあやかしである河内くんが、カツラを取って頭の皿を見せつつ「私がフランシスコ・ザビエルだ」なんて言って笑いを取るのはいつものことだし。
二年の雪女の先輩が友達とケンカしてうっかり水道凍らせちゃったってのもある。
そんな驚きを体験しつつ、楽しい学生生活を送っていた。
……ただ一つをのぞいては。
***
あっ……。
移動教室で音楽室に向かっているとき、ちょうど反対側から風雅先輩が友達と歩いて来るのが見えた。
わたしが気づいたすぐ後に風雅先輩もこっちに気づく。
その瞬間、風雅先輩がふわりと微笑みを浮かべた。
ドキドキはしつつも最近ちょっとだけ慣れてきた表情。
それに応えるようにわたしはペコリと会釈した。
「次は音楽か? 美沙都の歌も聞いてみたいな」
「聞かせるほどうまくないですよ?」
「それでも聞いてみたいよ。……じゃあな」
と、頭にポンと手をのせて去って行く風雅先輩。
そんなちょっとしたやり取り。
でも、そんなやり取りですらたまたま周囲にいた人たちにとってはかなりの衝撃みたいで……。
「滝柳先輩、あんな風に笑うことあるの!?」
「ってかあの子誰だよ!?」
「ちょっと! あなた滝柳先輩とどういう関係!?」
と、風雅先輩が見えなくなった途端詰め寄られる。
「みなさん落ち着いてくださーい!」
一緒にいた仁菜ちゃんが抑えてくれて、何とか聞く体勢になってくれた。
「山で迷ってたところを助けてもらっただけです。小動物扱いされているだけです!」
何度も口にした説明を今回も言う。
校内で風雅先輩と会うと繰り返される光景。
何度詰め寄られても慣れる気はしないけれど、言うべきことはこの2つだけってハッキリしてきたと思う。
「助けてもらった?」
「小動物扱い……ああ……」
小動物扱いされているって言うといつも納得される。
うう……小柄なのは今だけだもん。
これから成長期が来るもん!
小動物扱いなんて自分で言うのはちょっと悲しくなるけれど、事実だし騒ぎが一番早く収まる。
でもこんな感じだから、わたしが風雅先輩に可愛がられているっていうのは結構知れ渡ってしまった。
仁菜ちゃんと秘密にしようって決めたことは、早々にばれてしまっていたんだ。
今のところは丸く収まっているけれど、このまま何も起こらなければいいなぁ。
なんて思っていたからかな?
まさかこのあと、とんでもない出会いが立て続けに起こるとは思わなかった。
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