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月を狩る者狩られる者
~同棲~
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しばらく走った車は、外観からも分かるような高級マンションの駐車場に停まった。
しかも案内された部屋は最上階……。
うわぁ……。
リビングにある街を見下ろせる大きな窓が私を迎え入れた。
ふらふらと誘われる様に窓に近づき、眼下の景色に圧倒される。
「望、そんなところでボーっとしてないでシャワー浴びてこい。お前昨日会ったときのままだろう」
暗に汚れている事を指摘され、ちょっとムッとなる。
景色に感動していた気分がガクンと下がった。
でも、正直言うとその指示はありがたい。
眠気の方が圧倒的に勝っていたけれど、シャワーを浴びてさっぱりしたいのも確かだったから。
「……そうね。使わせてもらうわ。……入って来ないでね?」
あからさまに不審そうな眼差しを朔夜に向ける。
「入らないさ。俺はそこまでセコくない」
あっさりと返ってきた言葉に一瞬疑ったけれど、確かにと思いなおした。
堂々と自信有り気な朔夜が入浴中などの隙をわざわざ狙ってくるのは想像出来ない。
「……それじゃあ、遠慮なく」
そう言って私はバスルームに向かう。
シャワーの温かいお湯は丁度良く、気持ち良かった。
程よく暖まった体は眠気を誘う。
服着て寝よう……すぐに寝よう……。
そう思って脱衣所に置いてある服を見て絶句した。
バスタオルのみを纏い、朔夜がいるリビングへ走る。
「さ~く~や~!」
「何だ、そんな格好で。誘っているのか?」
「んなわけあるか! 何よこれ⁉」
私は叫んで、脱衣所にあった大きめの白いシャツを突き出した。
「私の服は? まさか捨てたんじゃ無いでしょうね⁉」
「いや、あれは仕事着みたいだったからな。捨ててはいない」
その言葉にホッとし、次いで言った。
「じゃあ返してよ」
「無理だな、クリーニングに出したから」
「なっ⁉」
また私に断りもなく~!
「早くそれ着てこい。それとも裸で寝るか?」
目を細めてニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる朔夜。
私は反射的に顔を赤くして脱衣所に戻る。
脱衣所のカゴの中をよく見ると、レースがたくさんついた白いショーツもあった。
シャツとショーツのみ。
下着があるのは助かったけれど……。
何であるの?
ぱっと見男の一人暮らし。
女物のショーツなんてある様には思えない。
そして、これは私の物でもない。
な……謎だわ……。
見た所新品の様だけれど……。
「まさか朔夜、私のアパートに来る前に買っておいた……とか?」
冗談のように呟いてみたけれど、それくらいしか思いつかない。
そして朔夜が女物のショーツを買っている姿を想像してしまった私は……。
「なんか……いや、うん……」
微妙な気分を味わったのだった。
シャツとショーツを着てリビングに戻ると、朔夜が待ち構えていたように私の手を取った。
「な、何?」
「寝るんだろう? ベッドはこっちだ」
どうやら案内しようとしているらしい。
……別に手は繋がなくてもいいんじゃ……。
思ったけど口には出さない。
どうせまたうるさいと言われるだけだろうから。
案内されたベッドルームはとても広く、その中にあるベッドも優に四人は寝れそうなスペースがあった。
ベッドの掛布団を上げた朔夜は、先に布団の中に入り込み――。
「ほら、来いよ」
自分の隣にスペースを作って私を誘った。
……え?
「まさか……一緒に寝るの?」
状況から見てまさかも何も無いのだが、私は聞かずにはいられなかった。
「当たり前だろう? ベッドは一つしか無いんだ」
「で、でもほら。朔夜も今寝る必要は無いじゃない」
何とか逃げ道を探そうと試みる。
「お前と一緒でずっと起きてたんだ。俺だって眠い」
試みはあっさりと断ち切られた。
それでも私は諦め悪く他の道を探そうと考え込む。
すると、いきなり腕を引かれて私はベッドの中に倒れ込んだ。
素早く朔夜の腕が腰に回り、抱き締められる。
「ちょっ⁉ 何するのよ! 離して!」
朔夜の腕から逃れようとしたけれど無理だった。
それどころか朔夜は。
「あぁ……やっぱり女は柔らかいな……」
と呟いてさっさと眠りに落ちていく。
眠ったなら腕の力も緩むかと思って、もう一度暴れてみたけれどビクともしなかった。
あ……だめ……もう、寝る……。
ただでさえ眠いのに、シャワーを浴びてさっぱりして、暴れて疲れた。
しかもふかふかのベッド。
それに朔夜の体温が程よく温かくて……。
朔夜の心臓の音が子守唄のように耳に心地良い。
もう、眠気を我慢することなんか出来るわけがなかった。
しかも案内された部屋は最上階……。
うわぁ……。
リビングにある街を見下ろせる大きな窓が私を迎え入れた。
ふらふらと誘われる様に窓に近づき、眼下の景色に圧倒される。
「望、そんなところでボーっとしてないでシャワー浴びてこい。お前昨日会ったときのままだろう」
暗に汚れている事を指摘され、ちょっとムッとなる。
景色に感動していた気分がガクンと下がった。
でも、正直言うとその指示はありがたい。
眠気の方が圧倒的に勝っていたけれど、シャワーを浴びてさっぱりしたいのも確かだったから。
「……そうね。使わせてもらうわ。……入って来ないでね?」
あからさまに不審そうな眼差しを朔夜に向ける。
「入らないさ。俺はそこまでセコくない」
あっさりと返ってきた言葉に一瞬疑ったけれど、確かにと思いなおした。
堂々と自信有り気な朔夜が入浴中などの隙をわざわざ狙ってくるのは想像出来ない。
「……それじゃあ、遠慮なく」
そう言って私はバスルームに向かう。
シャワーの温かいお湯は丁度良く、気持ち良かった。
程よく暖まった体は眠気を誘う。
服着て寝よう……すぐに寝よう……。
そう思って脱衣所に置いてある服を見て絶句した。
バスタオルのみを纏い、朔夜がいるリビングへ走る。
「さ~く~や~!」
「何だ、そんな格好で。誘っているのか?」
「んなわけあるか! 何よこれ⁉」
私は叫んで、脱衣所にあった大きめの白いシャツを突き出した。
「私の服は? まさか捨てたんじゃ無いでしょうね⁉」
「いや、あれは仕事着みたいだったからな。捨ててはいない」
その言葉にホッとし、次いで言った。
「じゃあ返してよ」
「無理だな、クリーニングに出したから」
「なっ⁉」
また私に断りもなく~!
「早くそれ着てこい。それとも裸で寝るか?」
目を細めてニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる朔夜。
私は反射的に顔を赤くして脱衣所に戻る。
脱衣所のカゴの中をよく見ると、レースがたくさんついた白いショーツもあった。
シャツとショーツのみ。
下着があるのは助かったけれど……。
何であるの?
ぱっと見男の一人暮らし。
女物のショーツなんてある様には思えない。
そして、これは私の物でもない。
な……謎だわ……。
見た所新品の様だけれど……。
「まさか朔夜、私のアパートに来る前に買っておいた……とか?」
冗談のように呟いてみたけれど、それくらいしか思いつかない。
そして朔夜が女物のショーツを買っている姿を想像してしまった私は……。
「なんか……いや、うん……」
微妙な気分を味わったのだった。
シャツとショーツを着てリビングに戻ると、朔夜が待ち構えていたように私の手を取った。
「な、何?」
「寝るんだろう? ベッドはこっちだ」
どうやら案内しようとしているらしい。
……別に手は繋がなくてもいいんじゃ……。
思ったけど口には出さない。
どうせまたうるさいと言われるだけだろうから。
案内されたベッドルームはとても広く、その中にあるベッドも優に四人は寝れそうなスペースがあった。
ベッドの掛布団を上げた朔夜は、先に布団の中に入り込み――。
「ほら、来いよ」
自分の隣にスペースを作って私を誘った。
……え?
「まさか……一緒に寝るの?」
状況から見てまさかも何も無いのだが、私は聞かずにはいられなかった。
「当たり前だろう? ベッドは一つしか無いんだ」
「で、でもほら。朔夜も今寝る必要は無いじゃない」
何とか逃げ道を探そうと試みる。
「お前と一緒でずっと起きてたんだ。俺だって眠い」
試みはあっさりと断ち切られた。
それでも私は諦め悪く他の道を探そうと考え込む。
すると、いきなり腕を引かれて私はベッドの中に倒れ込んだ。
素早く朔夜の腕が腰に回り、抱き締められる。
「ちょっ⁉ 何するのよ! 離して!」
朔夜の腕から逃れようとしたけれど無理だった。
それどころか朔夜は。
「あぁ……やっぱり女は柔らかいな……」
と呟いてさっさと眠りに落ちていく。
眠ったなら腕の力も緩むかと思って、もう一度暴れてみたけれどビクともしなかった。
あ……だめ……もう、寝る……。
ただでさえ眠いのに、シャワーを浴びてさっぱりして、暴れて疲れた。
しかもふかふかのベッド。
それに朔夜の体温が程よく温かくて……。
朔夜の心臓の音が子守唄のように耳に心地良い。
もう、眠気を我慢することなんか出来るわけがなかった。
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