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最強メイド!誕生のお話。
第25話 やるべきこと
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「望乃さん!」
どうするべきなのかもわからず、一人裏口の前で立っていると柊さんが来てくれた。
うまく働かない頭で、柊さんだけでも無事でよかったと思う。
思ってから、すぐに否定した。
良くない、杏くんは連れ去られちゃったじゃない!
離れていた柊さんじゃなくて、同じ教室にいた杏くんを。
後悔が頭の中だけじゃなく全身をかけめぐっているみたい。
可能性を見落としてなければ、杏くんから目を離さなければ。
そんな思いばかりで体もまともに動かない。
「望乃さん? どうしたんだ? 杏は?」
「っ!」
近くに来た柊さんに顔をのぞき込まれ、泣きそうになる。
杏くんのこと、言わなきゃ。
「ご、ごめ、なさ……」
「望乃さん?」
杏くんを守れなかった。
柊さんの大事な弟を守れなかった。
それを伝えるのが怖い。
「杏くんが、拉致《らち》されてしまいました……」
でも、言わないわけにはいかないから消え入りそうな声で伝えた。
「っ⁉」
驚き息をのむ柊さんに、私はまたごめんなさいと続ける。
「私が、ちゃんと気づいていれば! 近くに敵がいる可能性を考えていればこんなことには!」
「望乃さん?」
「いくら友だちに話しかけられたからって、杏くんから目を離さなければ!」
「望乃さん、いったん落ち着いて」
柊さんに呼びかけられていたけれど、叫ばずにはいられない。
この後悔をはき出さずにはいられなかった。
「相手がヴァンパイアだって分かっていたのに! クロちゃんを置いてきたせいで逃がしてしまって!」
「望乃さん!――望乃!」
「っ⁉」
“さん”がなくなった名前を強く呼ばれる。
それと同時に、ギュウッと抱き締められていたことに気づいて一瞬全てが吹き飛んだ。
「落ち着いて。すべてを君が背負う必要はないんだ」
柊さんの言葉は優しく私にしみわたっていく。
「一人じゃない、そばにはいなくても君を心配してくれる人はいるだろう?」
電話ごしに聞いたお母さんの言葉を思い出す。
『望乃ちゃん自身のことも大事にしてね?』
そうだ、お母さんはいつも私を気にかけてくれてる。
「護衛任務だって、君一人だけでしてるわけじゃない」
うん。三人の一番近くに私がいるってだけで、他にもたくさんの護衛の人がいる。
直接話したことはほとんどないけれど、私が中学生だからって馬鹿にしたりはしてこなかった。
ちゃんと同じ護衛として見てくれていたのは感じていた。
「それに、僕もいる。君ほど強くないし、守られてばかりだけど……こうして支えてあげることは出来るから」
「柊さん……」
抱きしめられて、そのぬくもりを感じて、落ち着いていく。
本当だ。
折れそうだった心が、支えられているみたい。
「……ありがとうございます。おかげで落ち着きました」
お礼を言うと、柊さんは少し離れて私の目をしっかり見る。
「良かった。じゃあ、今君がするべきことは?」
落ち着けた私は、その質問を冷静に考えた。
杏くんが拉致《らち》された。
なら、助け出すことが最優先。
でも居場所が分からないし、助けに向かえたとしてもその間に脅迫《きょうはく》の電話が美奈都さんたちのもとに行ってしまうかもしれない。
こういう場合は、まず報告だ。
依頼を受けると決めたとき、両親から口が酸っぱくなるくらい聞かされたこと。
『ミスをしたときなにより大事なのは、報告、連絡、相談よ』
『一人で考えるな』
何度も言われたっけ。
忘れてしまうくらいパニックになっていたみたい。
柊さんのおかげで今やるべきことを思い出せた。
感謝を込めて柊さんの目を見返し、私は答える。
「まずは、報告と相談をします!」
どうするべきなのかもわからず、一人裏口の前で立っていると柊さんが来てくれた。
うまく働かない頭で、柊さんだけでも無事でよかったと思う。
思ってから、すぐに否定した。
良くない、杏くんは連れ去られちゃったじゃない!
離れていた柊さんじゃなくて、同じ教室にいた杏くんを。
後悔が頭の中だけじゃなく全身をかけめぐっているみたい。
可能性を見落としてなければ、杏くんから目を離さなければ。
そんな思いばかりで体もまともに動かない。
「望乃さん? どうしたんだ? 杏は?」
「っ!」
近くに来た柊さんに顔をのぞき込まれ、泣きそうになる。
杏くんのこと、言わなきゃ。
「ご、ごめ、なさ……」
「望乃さん?」
杏くんを守れなかった。
柊さんの大事な弟を守れなかった。
それを伝えるのが怖い。
「杏くんが、拉致《らち》されてしまいました……」
でも、言わないわけにはいかないから消え入りそうな声で伝えた。
「っ⁉」
驚き息をのむ柊さんに、私はまたごめんなさいと続ける。
「私が、ちゃんと気づいていれば! 近くに敵がいる可能性を考えていればこんなことには!」
「望乃さん?」
「いくら友だちに話しかけられたからって、杏くんから目を離さなければ!」
「望乃さん、いったん落ち着いて」
柊さんに呼びかけられていたけれど、叫ばずにはいられない。
この後悔をはき出さずにはいられなかった。
「相手がヴァンパイアだって分かっていたのに! クロちゃんを置いてきたせいで逃がしてしまって!」
「望乃さん!――望乃!」
「っ⁉」
“さん”がなくなった名前を強く呼ばれる。
それと同時に、ギュウッと抱き締められていたことに気づいて一瞬全てが吹き飛んだ。
「落ち着いて。すべてを君が背負う必要はないんだ」
柊さんの言葉は優しく私にしみわたっていく。
「一人じゃない、そばにはいなくても君を心配してくれる人はいるだろう?」
電話ごしに聞いたお母さんの言葉を思い出す。
『望乃ちゃん自身のことも大事にしてね?』
そうだ、お母さんはいつも私を気にかけてくれてる。
「護衛任務だって、君一人だけでしてるわけじゃない」
うん。三人の一番近くに私がいるってだけで、他にもたくさんの護衛の人がいる。
直接話したことはほとんどないけれど、私が中学生だからって馬鹿にしたりはしてこなかった。
ちゃんと同じ護衛として見てくれていたのは感じていた。
「それに、僕もいる。君ほど強くないし、守られてばかりだけど……こうして支えてあげることは出来るから」
「柊さん……」
抱きしめられて、そのぬくもりを感じて、落ち着いていく。
本当だ。
折れそうだった心が、支えられているみたい。
「……ありがとうございます。おかげで落ち着きました」
お礼を言うと、柊さんは少し離れて私の目をしっかり見る。
「良かった。じゃあ、今君がするべきことは?」
落ち着けた私は、その質問を冷静に考えた。
杏くんが拉致《らち》された。
なら、助け出すことが最優先。
でも居場所が分からないし、助けに向かえたとしてもその間に脅迫《きょうはく》の電話が美奈都さんたちのもとに行ってしまうかもしれない。
こういう場合は、まず報告だ。
依頼を受けると決めたとき、両親から口が酸っぱくなるくらい聞かされたこと。
『ミスをしたときなにより大事なのは、報告、連絡、相談よ』
『一人で考えるな』
何度も言われたっけ。
忘れてしまうくらいパニックになっていたみたい。
柊さんのおかげで今やるべきことを思い出せた。
感謝を込めて柊さんの目を見返し、私は答える。
「まずは、報告と相談をします!」
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