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最強メイド!誕生のお話。
第23話 警戒体制
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契約発表前の一週間。
これまで以上に警戒しながら学園生活を送った。
玲菜さんに催眠術をかけた男の子のヴァンパイア。
何歳かはわからないけれど、学園に忍び込んでも違和感はないんだと思う。
だって、この宵満学園は初等部から高等部までのエスカレーター式の学園だもん。
どこかで制服を入手出来れば、学園敷地内には簡単にまぎれ込める。
普通であれば敷地内に入るために学生証のチェックとかあるんだけれど、そこはヴァンパイア。
催眠術や身体能力を駆使《くし》すれば入り込むことは難しくない。
だからその男の子が七歳から十八歳までの年齢だったなら、きっと学園に入って来ると思う。
だから少しでも見た事のない人がいたら要注意と思って生活していた。
とは言えしらみつぶしに探すわけにはいかないから、基本的には杏くんに近づいて来る人を見張っている感じ。
柊さんのそばにもついていられれば良いんだろうけれど、あくまで一学生として通っている以上授業を受けないわけにもいかないし。
柊さんは生徒会長で学園の王子様的存在だからどこにいても結構目立つし、大体周りに誰かがいる。
だから今まではその周囲の人が見張り代わりになるからってことで授業中の護衛は必要ないって言われてたんだよね。
でも学園に入り込めるヴァンパイアがいるとわかった以上、その周りの人が催眠術をかけられるかもしれない。
だから今からでも柊さんに護衛をつけられないか美奈都さんに聞いてみたんだけど……。
「今から頼んでも来てくれるのは来週になっちゃうらしいのよ」
すでに依頼してみた後だったらしい。
「でも、それじゃあ柊さんが危ないんじゃあ……」
心配する私に、美奈都さんは「そうね」とうなずく。
「だから望乃ちゃんに柊のGPSを共有してもらうわ」
「え?」
「柊が学園外に行っていたらそれはさらわれたってことよ。だから、望乃ちゃんには定期的に柊の居場所を確認して、もしもがあったら助け出して欲しいの」
真剣な様子に、私以上に柊さんを心配しているのがわかる。
そりゃあそうだよね、母親だもん。
先日の誘拐未遂事件のときのことを思い出しても、三兄弟を大事に思っていることは伝わってきた。
「わかりました。柊さんも杏くんも、絶対に守ります」
というわけで、私は休み時間のたびにスマホで柊さんの位置を確認している。
ちょっとストーカーっぽいかな? と思ってしまうこともあるけれど、護衛のためだし!
「のんちゃん、何してんの?」
「うひゃあ⁉」
何となーくいたたまれない気持ちがあったからか、呼ばれただけなのに大げさに反応しちゃった。
「な、どうしたんだよ。そんなに驚いて」
「い、いや。なんでもないよ! ごめんね梶くん」
目を見開いて驚く梶くんに謝ると、何をしていたかつっこまれたくなくてすぐに聞き返す。
「それより何? 私に何か用事?」
「あ、いや。カスミンどこ行ったのかなと思って。伝言頼まれたんだよ」
どうやら用事があるのは私じゃなくて香澄ちゃんにらしい。
「さっきお手洗いに行くって言ってたよ?」
「そっか、わかった」
そうして私から離れて行く梶くんを見てホッとする。
休み時間のたびにGPS確認するところなんて見られたら、どう思われるかわかったもんじゃないしね。
やりすぎでしょって言われるのがオチだもん。
それくらい危険な状況なんだって言ってもわかってもらえるとは思えないし。
ましてやヴァンパイアのことなんて話せないしね。
顔を上げたついでに杏くんの様子を確認しつつ、私はまたスマホに視線を移した。
マークは学園の敷地から移動していない。
ちゃんと学園の中にいる事がわかって安心する。
ホッとしつつも、早くこんな状況終わって欲しいなって思う。
さらわれたら当然助けに行くけれど、杏くんの護衛に時間を取られていたら手遅れになってしまうかもしれない。
そんな不安を抱えたままの護衛は正直気が気じゃないから。
「でも、無事に契約成立したらみんなとはお別れなんだよね……」
それを考えると、胸にたくさんの隙間が出来てしまう気がした。
慕《した》ってくれる可愛い紫苑くん。
素っ気ないところもあるけれど、家族思いで私のことも気にかけてくれる杏くん。
そして私の“唯一”かもしれない柊さん。
恋か、憧れか。いまだにわからないけれど、好きだなって思える相手。
三人の顔が浮かんで、離れるのは寂しいなって思った。
これまで以上に警戒しながら学園生活を送った。
玲菜さんに催眠術をかけた男の子のヴァンパイア。
何歳かはわからないけれど、学園に忍び込んでも違和感はないんだと思う。
だって、この宵満学園は初等部から高等部までのエスカレーター式の学園だもん。
どこかで制服を入手出来れば、学園敷地内には簡単にまぎれ込める。
普通であれば敷地内に入るために学生証のチェックとかあるんだけれど、そこはヴァンパイア。
催眠術や身体能力を駆使《くし》すれば入り込むことは難しくない。
だからその男の子が七歳から十八歳までの年齢だったなら、きっと学園に入って来ると思う。
だから少しでも見た事のない人がいたら要注意と思って生活していた。
とは言えしらみつぶしに探すわけにはいかないから、基本的には杏くんに近づいて来る人を見張っている感じ。
柊さんのそばにもついていられれば良いんだろうけれど、あくまで一学生として通っている以上授業を受けないわけにもいかないし。
柊さんは生徒会長で学園の王子様的存在だからどこにいても結構目立つし、大体周りに誰かがいる。
だから今まではその周囲の人が見張り代わりになるからってことで授業中の護衛は必要ないって言われてたんだよね。
でも学園に入り込めるヴァンパイアがいるとわかった以上、その周りの人が催眠術をかけられるかもしれない。
だから今からでも柊さんに護衛をつけられないか美奈都さんに聞いてみたんだけど……。
「今から頼んでも来てくれるのは来週になっちゃうらしいのよ」
すでに依頼してみた後だったらしい。
「でも、それじゃあ柊さんが危ないんじゃあ……」
心配する私に、美奈都さんは「そうね」とうなずく。
「だから望乃ちゃんに柊のGPSを共有してもらうわ」
「え?」
「柊が学園外に行っていたらそれはさらわれたってことよ。だから、望乃ちゃんには定期的に柊の居場所を確認して、もしもがあったら助け出して欲しいの」
真剣な様子に、私以上に柊さんを心配しているのがわかる。
そりゃあそうだよね、母親だもん。
先日の誘拐未遂事件のときのことを思い出しても、三兄弟を大事に思っていることは伝わってきた。
「わかりました。柊さんも杏くんも、絶対に守ります」
というわけで、私は休み時間のたびにスマホで柊さんの位置を確認している。
ちょっとストーカーっぽいかな? と思ってしまうこともあるけれど、護衛のためだし!
「のんちゃん、何してんの?」
「うひゃあ⁉」
何となーくいたたまれない気持ちがあったからか、呼ばれただけなのに大げさに反応しちゃった。
「な、どうしたんだよ。そんなに驚いて」
「い、いや。なんでもないよ! ごめんね梶くん」
目を見開いて驚く梶くんに謝ると、何をしていたかつっこまれたくなくてすぐに聞き返す。
「それより何? 私に何か用事?」
「あ、いや。カスミンどこ行ったのかなと思って。伝言頼まれたんだよ」
どうやら用事があるのは私じゃなくて香澄ちゃんにらしい。
「さっきお手洗いに行くって言ってたよ?」
「そっか、わかった」
そうして私から離れて行く梶くんを見てホッとする。
休み時間のたびにGPS確認するところなんて見られたら、どう思われるかわかったもんじゃないしね。
やりすぎでしょって言われるのがオチだもん。
それくらい危険な状況なんだって言ってもわかってもらえるとは思えないし。
ましてやヴァンパイアのことなんて話せないしね。
顔を上げたついでに杏くんの様子を確認しつつ、私はまたスマホに視線を移した。
マークは学園の敷地から移動していない。
ちゃんと学園の中にいる事がわかって安心する。
ホッとしつつも、早くこんな状況終わって欲しいなって思う。
さらわれたら当然助けに行くけれど、杏くんの護衛に時間を取られていたら手遅れになってしまうかもしれない。
そんな不安を抱えたままの護衛は正直気が気じゃないから。
「でも、無事に契約成立したらみんなとはお別れなんだよね……」
それを考えると、胸にたくさんの隙間が出来てしまう気がした。
慕《した》ってくれる可愛い紫苑くん。
素っ気ないところもあるけれど、家族思いで私のことも気にかけてくれる杏くん。
そして私の“唯一”かもしれない柊さん。
恋か、憧れか。いまだにわからないけれど、好きだなって思える相手。
三人の顔が浮かんで、離れるのは寂しいなって思った。
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