最強メイド!おぼっちゃまたちをお守りします!

緋村燐

文字の大きさ
上 下
19 / 30
最強メイド!誕生のお話。

第19話 初めてのドレス

しおりを挟む
 柊さんと紫苑くんが選んだドレスの着せ替えは特に反対意見が出ることもなく始まってしまった。
 着替えるときとか護衛出来なくなることだけが心配だったけれど、玲菜さんが店の外で待機している護衛の人に来てもらいましょうってすぐに連れてきてしまったし。
 そこまでされてしまったら、元々ドレスが気になっていた私はワクワクの方が勝っちゃう。

 ドレスなんて着たことないし、こんな高級店のものとなったらもう二度と着ることはないだろうし。
 任務中だけど、今だけはただの女の子として楽しんじゃってもいいかな?
 おばあちゃんに知られたら確実に雷が落ちるところだけれど、護衛対象にお願いされちゃったんだし少しくらいは良いよね?

 なんて言い訳をしつつ、二人がどんなドレスを選んでくれるのかドキドキしながら待っていた。

「ののねーちゃん! きめたよ! ぼくのきてみて!」

 初めに選んでくれたのは紫苑くん。

「紫苑さますごいですよ。センス良くてちょっと驚いちゃいました」

 玲菜さんの言葉通り紫苑くんの選んでくれたドレスは素敵だった。

 オフショルダータイプでスカートの前部分がひざ丈になっているちょっと珍しいタイプのドレス。
 後ろの方は床につきそうなくらい長くて、フィッシュテールっていうタイプのスカートなんだって。
 チュールやスパンコールも使っているピンクのドレスは豪華に見えるけれど、どこか落ち着きがあって品がある。
 胸元には桜のような花のモチーフがいくつも飾《かざ》られていて、もしかしたら紫苑くんはこの桜を見て決めたのかなって思った。

 私と紫苑くんが仲良くなれたキッカケでもあるし、紫苑くん桜の花が好きみたいだし。

 着替えてカフェスペースに戻ると柊さんの姿もあった。
 どうやら私が着替えている間に柊さんも決めたらしい。

「っ!」

 一休みしていたのか、紅茶を飲もうとしていた手が私を見て止まる。
 目をまん丸にして驚いているみたいだった。

 えっと、変……ではないよね?

 柊さんの反応にちょっと自信を無くしかけたけれど、すぐに紫苑くんがとても嬉しそうな声を上げる。

「ののねーちゃん、かわいー! さくらのようせいみたい!」

 キラキラした目を見れば純粋なほめ言葉だって分かる。

「本当に、とっても可愛いですね」

 玲菜さんも笑顔で言ってくれて、ホッとした。

「紫苑くんの見立てが良かったんですよ。ありがとう紫苑くん。こんな可愛いドレス着られて私嬉しいよ」

 安心して、私も素直にお礼を伝える。
 紫苑くんとニコニコしていると、いつの間にか立ち上がった柊さんが私の近くに来た。

「たしかにとっても可愛いね」

 柊さんにも可愛いと言ってもらえて良かったって思う。
 似合ってないなんて言われたらさすがにへこむから。

「じゃあ、次は柊さんのドレス着てきますね」
「あ、待って待って! せめて記念に写真撮りましょう!」

 玲菜さんにあわてて提案され、「すぐにすませるから」と取り出した自分のスマホで数枚写真を撮っていた。
 撮れたものは後で私のスマホにも送ってくれるんだって。

 次は柊さんの選んでくれたドレス。

 明るめだけれど落ち着いた色合いのパープルだ。
 サテン生地のマーメードラインのドレスで、大人っぽいけれど袖《そで》が布をたっぷり使ったフレアスリーブになっているからちょっと可愛らしさもある。
 でもこんなに大人っぽいドレス、私着こなせるかなぁ?

 正直不安だったけれど、柊さんは嬉しそうな笑みを見せてくれた。
 この間からたまに見せるようになった、ふわりと優しく甘い笑顔。

「良かった。思った通り、とても良く似合っているよ」

 そう言ってまた近くに来てくれる。

「ありがとうございます」

 今度はすぐにほめてもらえたので、照れながらも素直にお礼が言えた。

「……」

 紫苑くんは逆にさっきの柊さんみたいに目をまん丸にしている。
 その顔が笑顔になると、「すごーい!」とはしゃぎ始めた。

「しゅうにーちゃんすごい! ののねーちゃんキレイ!」

 まだ語彙ごいが少ないからか、すごいとキレイばかり連呼する紫苑くん。
 その後も杏くんが戻ってくるまで、いくつか選んでもらったドレスを着て披露《ひろう》した。

 任務を中断した状態だから申し訳ないなって気持ちもあったけれど、気になっていたドレスが着れてちょっと楽しかったな。
 ちょっと疲れたけれど。

 とはいえ、これ以上護衛任務を放棄《ほうき》するわけにはいかない。
 私はメイド服に着替え、気を引き締め直してカフェスペースへと向かう。
 何だかさわがしいなと思っていると、私が着替えている間に杏くんも用事が終わって合流したらしい。
 その杏くんが何か怒っているみたいだった。

「望乃を着飾らせてた⁉ そんな面白そうなこと何で俺がいないときにやってんだよ⁉」

 どうやら杏くんはいない間に何をしていたのか聞いたみたい。
 でも杏くん、さすがに着替えるの疲れたしこれ以上任務放棄は出来ないよ。
 内心ごめんねと思いながら、私は護衛としてみんなの所へ戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

氷鬼司のあやかし退治

桜桃-サクランボ-
児童書・童話
 日々、あやかしに追いかけられてしまう女子中学生、神崎詩織(かんざきしおり)。  氷鬼家の跡取りであり、天才と周りが認めているほどの実力がある男子中学生の氷鬼司(ひょうきつかさ)は、まだ、詩織が小さかった頃、あやかしに追いかけられていた時、顔に狐の面をつけ助けた。  これからは僕が君を守るよと、その時に約束する。  二人は一年くらいで別れることになってしまったが、二人が中学生になり再開。だが、詩織は自身を助けてくれた男の子が司とは知らない。  それでも、司はあやかしに追いかけられ続けている詩織を守る。  そんな時、カラス天狗が現れ、二人は命の危険にさらされてしまった。  狐面を付けた司を見た詩織は、過去の男の子の面影と重なる。  過去の約束は、二人をつなぎ止める素敵な約束。この約束が果たされた時、二人の想いはきっとつながる。  一人ぼっちだった詩織と、他人に興味なく冷たいと言われている司が繰り広げる、和風現代ファンタジーここに開幕!!

クール天狗の溺愛事情

緋村燐
児童書・童話
サトリの子孫である美紗都は 中学の入学を期にあやかしの里・北妖に戻って来た。 一歳から人間の街で暮らしていたからうまく馴染めるか不安があったけれど……。 でも、素敵な出会いが待っていた。 黒い髪と同じ色の翼をもったカラス天狗。 普段クールだという彼は美紗都だけには甘くて……。 *・゜゚・*:.。..。.:*☆*:.。. .。.:*・゜゚・* 「可愛いな……」 *滝柳 風雅* 守りの力を持つカラス天狗 。.:*☆*:.。 「お前今から俺の第一嫁候補な」 *日宮 煉* 最強の火鬼 。.:*☆*:.。 「風雅の邪魔はしたくないけど、簡単に諦めたくもないなぁ」 *山里 那岐* 神の使いの白狐 \\ドキドキワクワクなあやかし現代ファンタジー!// 野いちご様 ベリーズカフェ様 魔法のiらんど様 エブリスタ様 にも掲載しています。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

春風くんと秘宝管理クラブ!

はじめアキラ
児童書・童話
「私、恋ってやつをしちゃったかもしれない。落ちた、完璧に。一瞬にして」  五年生に進級して早々、同級生の春風祈に一目惚れをしてしまった秋野ひかり。  その祈は、秘宝管理クラブという不思議なクラブの部長をやっているという。  それは、科学で解明できない不思議なアイテムを管理・保護する不思議な場所だった。なりゆきで、彼のクラブ活動を手伝おうことになってしまったひかりは……。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

こちら御神楽学園心霊部!

緒方あきら
児童書・童話
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。 灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。 それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。 。 部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。 前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。 通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。 どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。 封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。 決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。 事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。 ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。 都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。 延々と名前を問う不気味な声【名前】。 10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。 

みかんに殺された獣

あめ
児童書・童話
果物などの食べ物が何も無くなり、生きもののいなくなった森。 その森には1匹の獣と1つの果物。 異種族とかの次元じゃない、果実と生きもの。 そんな2人の切なく悲しいお話。 全10話です。 1話1話の文字数少なめ。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

処理中です...