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最強メイド!誕生のお話。
第19話 初めてのドレス
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柊さんと紫苑くんが選んだドレスの着せ替えは特に反対意見が出ることもなく始まってしまった。
着替えるときとか護衛出来なくなることだけが心配だったけれど、玲菜さんが店の外で待機している護衛の人に来てもらいましょうってすぐに連れてきてしまったし。
そこまでされてしまったら、元々ドレスが気になっていた私はワクワクの方が勝っちゃう。
ドレスなんて着たことないし、こんな高級店のものとなったらもう二度と着ることはないだろうし。
任務中だけど、今だけはただの女の子として楽しんじゃってもいいかな?
おばあちゃんに知られたら確実に雷が落ちるところだけれど、護衛対象にお願いされちゃったんだし少しくらいは良いよね?
なんて言い訳をしつつ、二人がどんなドレスを選んでくれるのかドキドキしながら待っていた。
「ののねーちゃん! きめたよ! ぼくのきてみて!」
初めに選んでくれたのは紫苑くん。
「紫苑さますごいですよ。センス良くてちょっと驚いちゃいました」
玲菜さんの言葉通り紫苑くんの選んでくれたドレスは素敵だった。
オフショルダータイプでスカートの前部分がひざ丈になっているちょっと珍しいタイプのドレス。
後ろの方は床につきそうなくらい長くて、フィッシュテールっていうタイプのスカートなんだって。
チュールやスパンコールも使っているピンクのドレスは豪華に見えるけれど、どこか落ち着きがあって品がある。
胸元には桜のような花のモチーフがいくつも飾《かざ》られていて、もしかしたら紫苑くんはこの桜を見て決めたのかなって思った。
私と紫苑くんが仲良くなれたキッカケでもあるし、紫苑くん桜の花が好きみたいだし。
着替えてカフェスペースに戻ると柊さんの姿もあった。
どうやら私が着替えている間に柊さんも決めたらしい。
「っ!」
一休みしていたのか、紅茶を飲もうとしていた手が私を見て止まる。
目をまん丸にして驚いているみたいだった。
えっと、変……ではないよね?
柊さんの反応にちょっと自信を無くしかけたけれど、すぐに紫苑くんがとても嬉しそうな声を上げる。
「ののねーちゃん、かわいー! さくらのようせいみたい!」
キラキラした目を見れば純粋なほめ言葉だって分かる。
「本当に、とっても可愛いですね」
玲菜さんも笑顔で言ってくれて、ホッとした。
「紫苑くんの見立てが良かったんですよ。ありがとう紫苑くん。こんな可愛いドレス着られて私嬉しいよ」
安心して、私も素直にお礼を伝える。
紫苑くんとニコニコしていると、いつの間にか立ち上がった柊さんが私の近くに来た。
「たしかにとっても可愛いね」
柊さんにも可愛いと言ってもらえて良かったって思う。
似合ってないなんて言われたらさすがにへこむから。
「じゃあ、次は柊さんのドレス着てきますね」
「あ、待って待って! せめて記念に写真撮りましょう!」
玲菜さんにあわてて提案され、「すぐにすませるから」と取り出した自分のスマホで数枚写真を撮っていた。
撮れたものは後で私のスマホにも送ってくれるんだって。
次は柊さんの選んでくれたドレス。
明るめだけれど落ち着いた色合いのパープルだ。
サテン生地のマーメードラインのドレスで、大人っぽいけれど袖《そで》が布をたっぷり使ったフレアスリーブになっているからちょっと可愛らしさもある。
でもこんなに大人っぽいドレス、私着こなせるかなぁ?
正直不安だったけれど、柊さんは嬉しそうな笑みを見せてくれた。
この間からたまに見せるようになった、ふわりと優しく甘い笑顔。
「良かった。思った通り、とても良く似合っているよ」
そう言ってまた近くに来てくれる。
「ありがとうございます」
今度はすぐにほめてもらえたので、照れながらも素直にお礼が言えた。
「……」
紫苑くんは逆にさっきの柊さんみたいに目をまん丸にしている。
その顔が笑顔になると、「すごーい!」とはしゃぎ始めた。
「しゅうにーちゃんすごい! ののねーちゃんキレイ!」
まだ語彙が少ないからか、すごいとキレイばかり連呼する紫苑くん。
その後も杏くんが戻ってくるまで、いくつか選んでもらったドレスを着て披露《ひろう》した。
任務を中断した状態だから申し訳ないなって気持ちもあったけれど、気になっていたドレスが着れてちょっと楽しかったな。
ちょっと疲れたけれど。
とはいえ、これ以上護衛任務を放棄《ほうき》するわけにはいかない。
私はメイド服に着替え、気を引き締め直してカフェスペースへと向かう。
何だかさわがしいなと思っていると、私が着替えている間に杏くんも用事が終わって合流したらしい。
その杏くんが何か怒っているみたいだった。
「望乃を着飾らせてた⁉ そんな面白そうなこと何で俺がいないときにやってんだよ⁉」
どうやら杏くんはいない間に何をしていたのか聞いたみたい。
でも杏くん、さすがに着替えるの疲れたしこれ以上任務放棄は出来ないよ。
内心ごめんねと思いながら、私は護衛としてみんなの所へ戻った。
着替えるときとか護衛出来なくなることだけが心配だったけれど、玲菜さんが店の外で待機している護衛の人に来てもらいましょうってすぐに連れてきてしまったし。
そこまでされてしまったら、元々ドレスが気になっていた私はワクワクの方が勝っちゃう。
ドレスなんて着たことないし、こんな高級店のものとなったらもう二度と着ることはないだろうし。
任務中だけど、今だけはただの女の子として楽しんじゃってもいいかな?
おばあちゃんに知られたら確実に雷が落ちるところだけれど、護衛対象にお願いされちゃったんだし少しくらいは良いよね?
なんて言い訳をしつつ、二人がどんなドレスを選んでくれるのかドキドキしながら待っていた。
「ののねーちゃん! きめたよ! ぼくのきてみて!」
初めに選んでくれたのは紫苑くん。
「紫苑さますごいですよ。センス良くてちょっと驚いちゃいました」
玲菜さんの言葉通り紫苑くんの選んでくれたドレスは素敵だった。
オフショルダータイプでスカートの前部分がひざ丈になっているちょっと珍しいタイプのドレス。
後ろの方は床につきそうなくらい長くて、フィッシュテールっていうタイプのスカートなんだって。
チュールやスパンコールも使っているピンクのドレスは豪華に見えるけれど、どこか落ち着きがあって品がある。
胸元には桜のような花のモチーフがいくつも飾《かざ》られていて、もしかしたら紫苑くんはこの桜を見て決めたのかなって思った。
私と紫苑くんが仲良くなれたキッカケでもあるし、紫苑くん桜の花が好きみたいだし。
着替えてカフェスペースに戻ると柊さんの姿もあった。
どうやら私が着替えている間に柊さんも決めたらしい。
「っ!」
一休みしていたのか、紅茶を飲もうとしていた手が私を見て止まる。
目をまん丸にして驚いているみたいだった。
えっと、変……ではないよね?
柊さんの反応にちょっと自信を無くしかけたけれど、すぐに紫苑くんがとても嬉しそうな声を上げる。
「ののねーちゃん、かわいー! さくらのようせいみたい!」
キラキラした目を見れば純粋なほめ言葉だって分かる。
「本当に、とっても可愛いですね」
玲菜さんも笑顔で言ってくれて、ホッとした。
「紫苑くんの見立てが良かったんですよ。ありがとう紫苑くん。こんな可愛いドレス着られて私嬉しいよ」
安心して、私も素直にお礼を伝える。
紫苑くんとニコニコしていると、いつの間にか立ち上がった柊さんが私の近くに来た。
「たしかにとっても可愛いね」
柊さんにも可愛いと言ってもらえて良かったって思う。
似合ってないなんて言われたらさすがにへこむから。
「じゃあ、次は柊さんのドレス着てきますね」
「あ、待って待って! せめて記念に写真撮りましょう!」
玲菜さんにあわてて提案され、「すぐにすませるから」と取り出した自分のスマホで数枚写真を撮っていた。
撮れたものは後で私のスマホにも送ってくれるんだって。
次は柊さんの選んでくれたドレス。
明るめだけれど落ち着いた色合いのパープルだ。
サテン生地のマーメードラインのドレスで、大人っぽいけれど袖《そで》が布をたっぷり使ったフレアスリーブになっているからちょっと可愛らしさもある。
でもこんなに大人っぽいドレス、私着こなせるかなぁ?
正直不安だったけれど、柊さんは嬉しそうな笑みを見せてくれた。
この間からたまに見せるようになった、ふわりと優しく甘い笑顔。
「良かった。思った通り、とても良く似合っているよ」
そう言ってまた近くに来てくれる。
「ありがとうございます」
今度はすぐにほめてもらえたので、照れながらも素直にお礼が言えた。
「……」
紫苑くんは逆にさっきの柊さんみたいに目をまん丸にしている。
その顔が笑顔になると、「すごーい!」とはしゃぎ始めた。
「しゅうにーちゃんすごい! ののねーちゃんキレイ!」
まだ語彙が少ないからか、すごいとキレイばかり連呼する紫苑くん。
その後も杏くんが戻ってくるまで、いくつか選んでもらったドレスを着て披露《ひろう》した。
任務を中断した状態だから申し訳ないなって気持ちもあったけれど、気になっていたドレスが着れてちょっと楽しかったな。
ちょっと疲れたけれど。
とはいえ、これ以上護衛任務を放棄《ほうき》するわけにはいかない。
私はメイド服に着替え、気を引き締め直してカフェスペースへと向かう。
何だかさわがしいなと思っていると、私が着替えている間に杏くんも用事が終わって合流したらしい。
その杏くんが何か怒っているみたいだった。
「望乃を着飾らせてた⁉ そんな面白そうなこと何で俺がいないときにやってんだよ⁉」
どうやら杏くんはいない間に何をしていたのか聞いたみたい。
でも杏くん、さすがに着替えるの疲れたしこれ以上任務放棄は出来ないよ。
内心ごめんねと思いながら、私は護衛としてみんなの所へ戻った。
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