17 / 30
最強メイド!誕生のお話。
第17話 好意
しおりを挟む
あきれながら女子の集団が離れて行くのを見ていると、柊さんの声が私に届いた。
「もういいんじゃないかな? 下りておいで」
言われてスタッと飛び降りて木の葉を払う。
「来てくれてありがとうございます。あのコウモリのロボット、もしかしてカメラとかついてるんですか?」
「へぇ、よくわかったね」
さっき空を見上げた時に見えたのは初めて柊さんと会ったときに彼が持っていたコウモリのロボット。
後からあれは柊さんが作ったものだって聞いて驚いた。
あのコウモリが飛んでいて、今柊さんが来たからもしかしたらと思って言ったのに、本当にカメラついてたんだ……。
「たまたま偵察《ていさつ》のテストしてたら君が連れて行かれるのが見えて……。でも助けは必要なかったかな?」
「いえ、助かりましたよ? あのままだと彼女たちがいなくなるのまだ時間がかかりそうでしたし」
ありがとうございます、とお礼を言うとフクザツそうな顔をされた。
「でも大した助けにはなっていないだろう? こうしてつめ寄られたのはきっと僕のせいなのに……」
「それは違いますよ」
自分を責めようとする柊さんの言葉をしっかり否定する。
「確かに彼女たちは柊さんや杏くんに近づくなみたいなこと言ってましたけれど、私は護衛なんだから近くにいて当然なんです。仕事で近くにいるのに、変な勘繰りを入れてくる方が間違ってます」
当たり前すぎる私の言い分に、柊さんは目を大きく開いて何度もまばたきした。
そんな彼に「それに」と続ける。
「たとえ仕事が関係なくても同じです。悪いのは柊さんの気持ちも考えず勝手な判断で行動した彼女たちで、柊さんに悪いところなんてないんですよ?」
「っ!」
「だから、僕のせいなんて言わないでください」
笑顔で、自分を責めないで欲しいって伝えた。
人気のある柊さんは、もしかしたら今みたいなことを何度も経験してきたのかもしれない。
だから、外では当たりさわりのないような王子様の仮面をかぶっているんじゃないかな?
その反動で家では普通に笑うことすら疲れちゃってたんじゃないかなって思った。
杏くんはリラックスしてるんだって言ってたけれど、やっぱりちょっと違うと思うから。
あの感情が顔に出ない感じは、疲れているからっていう方が当てはまっている気がするんだ。
まあ、これは私の個人的な考えでしかないけどね。
「……望乃さんは、本当に面白い子だね」
「は? 面白い?」
それはどういう評価なんだろう?
良い方にも悪い方にも取れるから微妙だと思って眉を寄せると、柊さんは優しい笑みを浮かべた。
「っ!」
ふわりと甘く優しいほほ笑み。
学園で見せる張りつけたような王子様スマイルじゃなくて、最近見せてくれるようになった気安い感じの笑いでもない。
柊さんの血の味のように、甘くとろけるようなほほ笑みだった。
……ああ、好きだな。
ただ純粋に、そう思った。
正直恋かどうかなんて分からない。
でも、ただ柊さんっていうその人が好きだと思ったんだ。
「面白いよ? お姫様みたいに可愛いのにメイドだし、弱そうなのに強いヴァンパイアだし。それに、僕のことをよく見ているし」
「っ! それは、最近のことを言ってるんですか?」
あれだけジッと見ちゃってたし、さっきの子たちにも気づかれていたくらいだから柊さん本人が気づかないわけないよね?
「それもあるけれど、今の話とかもね。……僕のことを考えてくれてるんだなって。嬉しいよ、ありがとう」
「いえ……」
「でも聞いていいかな? どうして最近あんなに僕を見ていたの?」
「うっ」
やっぱりそこはつっ込まれちゃうかぁ……。
できれば秘密にしておきたかったけれど、聞かれてしまった以上話した方がいいかな。
理由も分からずジッと見られてたなんて、すっごく気になってただろうし。
私はどこまで話そうか少しだけ迷って、結局“唯一”のことを簡単にだけれど全部話した。
「僕が、望乃さんの“唯一”かもしれない、か……」
「あ、あくまで“かもしれない”ってだけですから! 気にしないでください」
確かなことじゃないし、変に気にして欲しくないし。
「それってさ……つまり、望乃さんは僕のことが好きってことなのかな?」
真剣とも無表情とも取れそうな顔は何を思っているのか分からなかった。
でも、私の気持ちが変わることはないから素直に答える。
「はい、そうですね」
「っ⁉」
聞いておきながら柊さんはとても驚いた顔をした。
「素の表情で笑っている柊さんを見るとドキッとしちゃいます。これが恋なのかは分からないんですけど、柊さんのことを好きだなぁって思っていることは事実ですね」
「……恋か分からないけれど、好き」
私の言葉をくり返すようにつぶやく柊さんは何とも不思議な状態だった。
照れているのか耳は赤いのに、顔に出ている表情はものすごくフクザツそう。
気にしないでと言ったのに、結局困らせてしまったみたい。
「えっと……そろそろ行きましょうか? 生徒会のお仕事、終わるの遅くなっちゃいますし」
もう気にしないで欲しくてうながす。
どっちにしろいつまでもここにいるわけにはいかないからね。
「ああ、そうだね」
柊さんも同意したことで、私は生徒会室に向かうため歩き出す。
先に歩き始めた私の後ろで、小さくつぶやく柊さんの声が聞こえた。
「恋か分からない、か……手強いかもな」
「もういいんじゃないかな? 下りておいで」
言われてスタッと飛び降りて木の葉を払う。
「来てくれてありがとうございます。あのコウモリのロボット、もしかしてカメラとかついてるんですか?」
「へぇ、よくわかったね」
さっき空を見上げた時に見えたのは初めて柊さんと会ったときに彼が持っていたコウモリのロボット。
後からあれは柊さんが作ったものだって聞いて驚いた。
あのコウモリが飛んでいて、今柊さんが来たからもしかしたらと思って言ったのに、本当にカメラついてたんだ……。
「たまたま偵察《ていさつ》のテストしてたら君が連れて行かれるのが見えて……。でも助けは必要なかったかな?」
「いえ、助かりましたよ? あのままだと彼女たちがいなくなるのまだ時間がかかりそうでしたし」
ありがとうございます、とお礼を言うとフクザツそうな顔をされた。
「でも大した助けにはなっていないだろう? こうしてつめ寄られたのはきっと僕のせいなのに……」
「それは違いますよ」
自分を責めようとする柊さんの言葉をしっかり否定する。
「確かに彼女たちは柊さんや杏くんに近づくなみたいなこと言ってましたけれど、私は護衛なんだから近くにいて当然なんです。仕事で近くにいるのに、変な勘繰りを入れてくる方が間違ってます」
当たり前すぎる私の言い分に、柊さんは目を大きく開いて何度もまばたきした。
そんな彼に「それに」と続ける。
「たとえ仕事が関係なくても同じです。悪いのは柊さんの気持ちも考えず勝手な判断で行動した彼女たちで、柊さんに悪いところなんてないんですよ?」
「っ!」
「だから、僕のせいなんて言わないでください」
笑顔で、自分を責めないで欲しいって伝えた。
人気のある柊さんは、もしかしたら今みたいなことを何度も経験してきたのかもしれない。
だから、外では当たりさわりのないような王子様の仮面をかぶっているんじゃないかな?
その反動で家では普通に笑うことすら疲れちゃってたんじゃないかなって思った。
杏くんはリラックスしてるんだって言ってたけれど、やっぱりちょっと違うと思うから。
あの感情が顔に出ない感じは、疲れているからっていう方が当てはまっている気がするんだ。
まあ、これは私の個人的な考えでしかないけどね。
「……望乃さんは、本当に面白い子だね」
「は? 面白い?」
それはどういう評価なんだろう?
良い方にも悪い方にも取れるから微妙だと思って眉を寄せると、柊さんは優しい笑みを浮かべた。
「っ!」
ふわりと甘く優しいほほ笑み。
学園で見せる張りつけたような王子様スマイルじゃなくて、最近見せてくれるようになった気安い感じの笑いでもない。
柊さんの血の味のように、甘くとろけるようなほほ笑みだった。
……ああ、好きだな。
ただ純粋に、そう思った。
正直恋かどうかなんて分からない。
でも、ただ柊さんっていうその人が好きだと思ったんだ。
「面白いよ? お姫様みたいに可愛いのにメイドだし、弱そうなのに強いヴァンパイアだし。それに、僕のことをよく見ているし」
「っ! それは、最近のことを言ってるんですか?」
あれだけジッと見ちゃってたし、さっきの子たちにも気づかれていたくらいだから柊さん本人が気づかないわけないよね?
「それもあるけれど、今の話とかもね。……僕のことを考えてくれてるんだなって。嬉しいよ、ありがとう」
「いえ……」
「でも聞いていいかな? どうして最近あんなに僕を見ていたの?」
「うっ」
やっぱりそこはつっ込まれちゃうかぁ……。
できれば秘密にしておきたかったけれど、聞かれてしまった以上話した方がいいかな。
理由も分からずジッと見られてたなんて、すっごく気になってただろうし。
私はどこまで話そうか少しだけ迷って、結局“唯一”のことを簡単にだけれど全部話した。
「僕が、望乃さんの“唯一”かもしれない、か……」
「あ、あくまで“かもしれない”ってだけですから! 気にしないでください」
確かなことじゃないし、変に気にして欲しくないし。
「それってさ……つまり、望乃さんは僕のことが好きってことなのかな?」
真剣とも無表情とも取れそうな顔は何を思っているのか分からなかった。
でも、私の気持ちが変わることはないから素直に答える。
「はい、そうですね」
「っ⁉」
聞いておきながら柊さんはとても驚いた顔をした。
「素の表情で笑っている柊さんを見るとドキッとしちゃいます。これが恋なのかは分からないんですけど、柊さんのことを好きだなぁって思っていることは事実ですね」
「……恋か分からないけれど、好き」
私の言葉をくり返すようにつぶやく柊さんは何とも不思議な状態だった。
照れているのか耳は赤いのに、顔に出ている表情はものすごくフクザツそう。
気にしないでと言ったのに、結局困らせてしまったみたい。
「えっと……そろそろ行きましょうか? 生徒会のお仕事、終わるの遅くなっちゃいますし」
もう気にしないで欲しくてうながす。
どっちにしろいつまでもここにいるわけにはいかないからね。
「ああ、そうだね」
柊さんも同意したことで、私は生徒会室に向かうため歩き出す。
先に歩き始めた私の後ろで、小さくつぶやく柊さんの声が聞こえた。
「恋か分からない、か……手強いかもな」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
甘い香りがする君は誰より甘くて、少し苦い。
めぇ
児童書・童話
いつもクールで静かな天井柊羽(あまいしゅう)くんはキレイなお顔をしていて、みんな近付きたいって思ってるのに不愛想で誰とも喋ろうとしない。
でもそんな天井くんと初めて話した時、ふわふわと甘くておいしそうな香りがした。
これは大好きなキャラメルポップコーンの匂いだ。
でもどうして?
なんで天井くんからそんな香りがするの?
頬を赤くする天井くんから溢れる甘い香り…
クールで静かな天井くんは緊張すると甘くておいしそうな香りがする特異体質らしい!?
そんな天井くんが気になって、その甘い香りにドキドキしちゃう!
ホスト科のお世話係になりました
西羽咲 花月
児童書・童話
中2の愛美は突如先生からお世話係を任命される
金魚かな? それともうさぎ?
だけど連れてこられた先にいたのは4人の男子生徒たちだった……!?
ホスト科のお世話係になりました!
妖精の約束
鹿野 秋乃
児童書・童話
冬の夜。眠れない少年に母が語り聞かせた物語は、妖精の郷を救った王子の冒険だった。昔どこかで誰かに聞いたかもしれないおとぎ話。図書館の隅で読んだかも知れない童話。大人になって、ふと思い出す。そんな懐かしい、お菓子のようなお話。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
図書室はアヤカシ討伐司令室! 〜黒鎌鼬の呪唄〜
yolu
児童書・童話
凌(りょう)が住む帝天(だいてん)町には、古くからの言い伝えがある。
『黄昏刻のつむじ風に巻かれると呪われる』────
小学6年の凌にとって、中学2年の兄・新(あらた)はかっこいいヒーロー。
凌は霊感が強いことで、幽霊がはっきり見えてしまう。
そのたびに涙が滲んで足がすくむのに、兄は勇敢に守ってくれるからだ。
そんな兄と野球観戦した帰り道、噂のつむじ風が2人を覆う。
ただの噂と思っていたのに、風は兄の右足に黒い手となって絡みついた。
言い伝えを調べると、それは1週間後に死ぬ呪い──
凌は兄を救うべく、図書室の司書の先生から教わったおまじないで、鬼を召喚!
見た目は同い年の少年だが、年齢は自称170歳だという。
彼とのちぐはぐな学校生活を送りながら、呪いの正体を調べていると、同じクラスの蜜花(みつか)の姉・百合花(ゆりか)にも呪いにかかり……
凌と、鬼の冴鬼、そして密花の、年齢差158歳の3人で呪いに立ち向かう──!
クール天狗の溺愛事情
緋村燐
児童書・童話
サトリの子孫である美紗都は
中学の入学を期にあやかしの里・北妖に戻って来た。
一歳から人間の街で暮らしていたからうまく馴染めるか不安があったけれど……。
でも、素敵な出会いが待っていた。
黒い髪と同じ色の翼をもったカラス天狗。
普段クールだという彼は美紗都だけには甘くて……。
*・゜゚・*:.。..。.:*☆*:.。. .。.:*・゜゚・*
「可愛いな……」
*滝柳 風雅*
守りの力を持つカラス天狗
。.:*☆*:.。
「お前今から俺の第一嫁候補な」
*日宮 煉*
最強の火鬼
。.:*☆*:.。
「風雅の邪魔はしたくないけど、簡単に諦めたくもないなぁ」
*山里 那岐*
神の使いの白狐
\\ドキドキワクワクなあやかし現代ファンタジー!//
野いちご様
ベリーズカフェ様
魔法のiらんど様
エブリスタ様
にも掲載しています。
氷鬼司のあやかし退治
桜桃-サクランボ-
児童書・童話
日々、あやかしに追いかけられてしまう女子中学生、神崎詩織(かんざきしおり)。
氷鬼家の跡取りであり、天才と周りが認めているほどの実力がある男子中学生の氷鬼司(ひょうきつかさ)は、まだ、詩織が小さかった頃、あやかしに追いかけられていた時、顔に狐の面をつけ助けた。
これからは僕が君を守るよと、その時に約束する。
二人は一年くらいで別れることになってしまったが、二人が中学生になり再開。だが、詩織は自身を助けてくれた男の子が司とは知らない。
それでも、司はあやかしに追いかけられ続けている詩織を守る。
そんな時、カラス天狗が現れ、二人は命の危険にさらされてしまった。
狐面を付けた司を見た詩織は、過去の男の子の面影と重なる。
過去の約束は、二人をつなぎ止める素敵な約束。この約束が果たされた時、二人の想いはきっとつながる。
一人ぼっちだった詩織と、他人に興味なく冷たいと言われている司が繰り広げる、和風現代ファンタジーここに開幕!!
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる