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最強メイド!誕生のお話。
第11話 柊さんのお部屋へ
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屋敷に帰って来てから、私は夕食の時間まで部屋にこもっていた。
美奈都さんたちにバレるなって言われたのに、これじゃあバレちゃうよ!
血をなめただけなら何か理由をつけて誤魔化せたかもしれないけれど、傷が治っちゃってるもんね。
そんな不思議現象どう誤魔化せばいいのか分からないよ!
それに、ガマン出来ずに血をなめちゃうなんて……やっぱり吸血衝動がはじまっちゃったのかな?
「……一応、血液パック頼んでおいた方がいいかな?」
つぶやいてからとりあえず一つ頼んでみることにする。
万が一本当に始まっちゃってたら、血液パックがないと困ったことになっちゃうから。
あまり使っていないスマホをトントンとタップして操作し終えると、私は大きなため息を吐いた。
「本当、なんて説明しよう……」
悩みに悩んだけれど良い案は出ないまま夕食もすんでしまう。
私はメイド服のまま、柊さんの部屋に向かった。
初日は迷い込んで行ってしまった青いカーペットの辺り。
今はさすがに迷うこともなくそっちの方に向かう。
登代さんには用事がない限り向かわないようにと言われたけれど、今は呼び出された状態だから行って良いんだよね?
いや、出来れば行きたくないんだけれど……。
「お風呂入ってていませんでしたーとかならないかな?」
柊さんたち屋敷の主人家族はお手伝いさんたちより早めに食事をとる。
だからいつもならお風呂に入っているくらいの時間だった。
でもまあ、待ってるって言ってたしそんな都合のいいことにはならないよね。
トホホ、と思いながら青いカーペットの上を歩いていると。
「なっ⁉ お前、なんでこんなところにいるんだよ⁉」
それこそお風呂上りらしい杏くんと紫苑くんにバッタリ会ってしまう。
「え? えっと……柊さんに呼び出されちゃって」
詳しい事情は話したくなくて簡単に説明する。
でもそれじゃあ納得してくれなかったらしい。
杏くんは目を吊り上げて私をにらんだ。
「呼び出されて? 襲いに来たの間違いじゃないのか?」
「はぁ?」
何を馬鹿なことを言ってるんだろう。
「襲うわけないでしょう? 私は護衛なんだよ?」
そう言葉を返しながら、そういえば初日にここに迷い込んだとき柊さんも同じようなことを言っていたなって思い出した。
護衛として認められていないのは分かるけれど、だからって襲うわけないじゃない。
もう、本当二人して私を何だと思っているのかな⁉
心の中で怒っていると、杏くんの口から思ってもいなかった言葉が出てきた。
「だから、護衛って言いながら兄さんに近づいて……よ、夜這《よば》いとかしようとしてるんじゃないのかってことだよ!」
「よっよばっ⁉ 何言ってるのよ⁉」
あまりにもな言葉に私は顔を真っ赤にさせて怒鳴った。
え? 何? もしかしてずっとそんな風に見られてたってこと?
まさか柊さんにも⁉
色んな意味で頭に血がのぼってフラフラしてきたとき、今まで私たちの会話をただ聞いていた紫苑くんが不思議そうに首をかしげた。
「よばいって、なーに?」
『っ⁉』
その質問には私も杏くんも慌てた。
「え、えっと。夜に他の人のお部屋にお邪魔することかな?」
本当のことを言うわけにもいかないし、かといって全く違うことを教えても変に覚えちゃうだろうし。
と言っても、私も夜異性の部屋に行くってことくらいしか知らないんだけどね。
……あれ? それで言うと今私がしようとしてることは夜這いなのかな?
なんて、私まで分からなくなってきたけれど杏くんの説明で違うって分かった。
「そ、そうだよ。夜に人の部屋に行って悪いことをすることを言うんだ!」
あ、そうなんだ。って、私も納得して安心する。
「じゃあののねーちゃん、わるいことするの?」
分かっているのかいないのか、繰り返して私に聞いて来る紫苑くん。
そんな純粋な紫苑くんの頭を撫でて「しないよ」って答えた。
「ただお話をするだけだもん。悪いことなんてしないよ」
だからやっぱり夜這いじゃないよね。
「よかった。ののねーちゃん、いいこ!」
私の言葉を信じてニッコリ天使の笑みを見せてくれた紫苑くん。
手を伸ばしてきたからしゃがむと、頭をなでなでしてくれた。
ふわぁー……可愛いなぁ……。
「お、俺は信じねぇからな!」
紫苑くんの可愛さにほっこりしたけれど、杏くんはまだ私をにらんでる。
困ったな。
しゃがんだ状態で杏くんを見上ていると、少し先の部屋のドアがカチャリと開く音がした。
ひょこっと顔を出して来たのは柊さんだ。
「三人で何してるんだ? 望乃さん、早くおいで」
「あ、はい」
呼ばれて、私は紫苑くんの手をそっと下ろして立ち上がる。
杏くんは本当に柊さんが私を呼んだってことに驚いているのか、驚きの表情だ。
まあ、これなら誤解もされないよね?
とりあえずは良かった、と思って柊さんの部屋に向かうと、杏くんは「俺も!」と声を上げる。
「俺も一緒に話を聞く! そいつと兄さんを二人きりになんてさせられるか!」
「ええぇ?」
まだかみついて来る杏くんに困り果てる私。
でも柊さんはそうでもなかったみたい。
「……そうだね、杏にも一緒に聞いていてもらおうかな」
少し考えてからそう言って、柊さんは杏くんと紫苑くんも部屋に招き入れた。
ええ⁉ 二人も一緒に話を聞くの⁉
ただでさえなんて説明をすればいいのか分からないのに、事情を知らない二人も一緒に話を聞くとか……。
もう本当にどうすればいいの⁉
ほとんど混乱状態の私だったけれど、もう一度「望乃さん?」と呼ばれてしまって柊さんの部屋に入るしかなくなった。
美奈都さんたちにバレるなって言われたのに、これじゃあバレちゃうよ!
血をなめただけなら何か理由をつけて誤魔化せたかもしれないけれど、傷が治っちゃってるもんね。
そんな不思議現象どう誤魔化せばいいのか分からないよ!
それに、ガマン出来ずに血をなめちゃうなんて……やっぱり吸血衝動がはじまっちゃったのかな?
「……一応、血液パック頼んでおいた方がいいかな?」
つぶやいてからとりあえず一つ頼んでみることにする。
万が一本当に始まっちゃってたら、血液パックがないと困ったことになっちゃうから。
あまり使っていないスマホをトントンとタップして操作し終えると、私は大きなため息を吐いた。
「本当、なんて説明しよう……」
悩みに悩んだけれど良い案は出ないまま夕食もすんでしまう。
私はメイド服のまま、柊さんの部屋に向かった。
初日は迷い込んで行ってしまった青いカーペットの辺り。
今はさすがに迷うこともなくそっちの方に向かう。
登代さんには用事がない限り向かわないようにと言われたけれど、今は呼び出された状態だから行って良いんだよね?
いや、出来れば行きたくないんだけれど……。
「お風呂入ってていませんでしたーとかならないかな?」
柊さんたち屋敷の主人家族はお手伝いさんたちより早めに食事をとる。
だからいつもならお風呂に入っているくらいの時間だった。
でもまあ、待ってるって言ってたしそんな都合のいいことにはならないよね。
トホホ、と思いながら青いカーペットの上を歩いていると。
「なっ⁉ お前、なんでこんなところにいるんだよ⁉」
それこそお風呂上りらしい杏くんと紫苑くんにバッタリ会ってしまう。
「え? えっと……柊さんに呼び出されちゃって」
詳しい事情は話したくなくて簡単に説明する。
でもそれじゃあ納得してくれなかったらしい。
杏くんは目を吊り上げて私をにらんだ。
「呼び出されて? 襲いに来たの間違いじゃないのか?」
「はぁ?」
何を馬鹿なことを言ってるんだろう。
「襲うわけないでしょう? 私は護衛なんだよ?」
そう言葉を返しながら、そういえば初日にここに迷い込んだとき柊さんも同じようなことを言っていたなって思い出した。
護衛として認められていないのは分かるけれど、だからって襲うわけないじゃない。
もう、本当二人して私を何だと思っているのかな⁉
心の中で怒っていると、杏くんの口から思ってもいなかった言葉が出てきた。
「だから、護衛って言いながら兄さんに近づいて……よ、夜這《よば》いとかしようとしてるんじゃないのかってことだよ!」
「よっよばっ⁉ 何言ってるのよ⁉」
あまりにもな言葉に私は顔を真っ赤にさせて怒鳴った。
え? 何? もしかしてずっとそんな風に見られてたってこと?
まさか柊さんにも⁉
色んな意味で頭に血がのぼってフラフラしてきたとき、今まで私たちの会話をただ聞いていた紫苑くんが不思議そうに首をかしげた。
「よばいって、なーに?」
『っ⁉』
その質問には私も杏くんも慌てた。
「え、えっと。夜に他の人のお部屋にお邪魔することかな?」
本当のことを言うわけにもいかないし、かといって全く違うことを教えても変に覚えちゃうだろうし。
と言っても、私も夜異性の部屋に行くってことくらいしか知らないんだけどね。
……あれ? それで言うと今私がしようとしてることは夜這いなのかな?
なんて、私まで分からなくなってきたけれど杏くんの説明で違うって分かった。
「そ、そうだよ。夜に人の部屋に行って悪いことをすることを言うんだ!」
あ、そうなんだ。って、私も納得して安心する。
「じゃあののねーちゃん、わるいことするの?」
分かっているのかいないのか、繰り返して私に聞いて来る紫苑くん。
そんな純粋な紫苑くんの頭を撫でて「しないよ」って答えた。
「ただお話をするだけだもん。悪いことなんてしないよ」
だからやっぱり夜這いじゃないよね。
「よかった。ののねーちゃん、いいこ!」
私の言葉を信じてニッコリ天使の笑みを見せてくれた紫苑くん。
手を伸ばしてきたからしゃがむと、頭をなでなでしてくれた。
ふわぁー……可愛いなぁ……。
「お、俺は信じねぇからな!」
紫苑くんの可愛さにほっこりしたけれど、杏くんはまだ私をにらんでる。
困ったな。
しゃがんだ状態で杏くんを見上ていると、少し先の部屋のドアがカチャリと開く音がした。
ひょこっと顔を出して来たのは柊さんだ。
「三人で何してるんだ? 望乃さん、早くおいで」
「あ、はい」
呼ばれて、私は紫苑くんの手をそっと下ろして立ち上がる。
杏くんは本当に柊さんが私を呼んだってことに驚いているのか、驚きの表情だ。
まあ、これなら誤解もされないよね?
とりあえずは良かった、と思って柊さんの部屋に向かうと、杏くんは「俺も!」と声を上げる。
「俺も一緒に話を聞く! そいつと兄さんを二人きりになんてさせられるか!」
「ええぇ?」
まだかみついて来る杏くんに困り果てる私。
でも柊さんはそうでもなかったみたい。
「……そうだね、杏にも一緒に聞いていてもらおうかな」
少し考えてからそう言って、柊さんは杏くんと紫苑くんも部屋に招き入れた。
ええ⁉ 二人も一緒に話を聞くの⁉
ただでさえなんて説明をすればいいのか分からないのに、事情を知らない二人も一緒に話を聞くとか……。
もう本当にどうすればいいの⁉
ほとんど混乱状態の私だったけれど、もう一度「望乃さん?」と呼ばれてしまって柊さんの部屋に入るしかなくなった。
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