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最強メイド!誕生のお話。
第9話 難ありな護衛対象
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教室を出て、帰るために廊下に出てきている同級生たちをかき分けて進むと、結構先の方に杏くんの姿を見つける。
よかった、見失わずに済んだよ。
早足で歩いている杏くんだったけれど、色んな訓練をしてきた私にとって人込みをよけて早く進むのくらいお手のもの。
すぐに追いつくことが出来た。
「もう、そんなに急いでどうしたの?」
「ぅおわっ⁉」
近くに行って声をかけると、ものすごく驚かれた。
私がこんなに近くに来てると思っていなかったみたい。
「……もしかして、私を撒《ま》こうとしてた?」
今までの杏くんの態度や今の状況を考えて聞いてみる。
そしたら案の定にらまれて「そうだよ!」と怒鳴られた。
「お前本当何なの? 護衛とか自己紹介で言う事かよ⁉」
「え? でも本当のことだし……」
「俺は認めてねぇ!」
怒って叫んだ杏くんは、そのまま足をふみ鳴らして進んで行く。
杏くんが認めてなくても、美奈都さんたちから正式に依頼されたことだもん。
護衛しないなんて選択肢はないよ。
でも本当。護衛対象とだけは上手くいかないなぁ……。
メインの護衛対象じゃない紫苑くんとは仲良くなれたし、学園でも友達が出来たっていうのに。
はぁ、と小さくため息を吐いて、もう一人の護衛対象を思い浮かべる。
「あ、そういえば柊さんって学園ではいつもあんななの?」
「は?」
態度は悪いけれど無視はしない杏くん。
何言ってんだ?って顔の彼に、私は問いを続ける。
「入学式のあいさつのときの柊さん、すっごいキラキラした笑顔で話してたでしょ? 家にいる時とは大違いだったから」
「ああ……」
追加の説明で私の聞きたいことを理解した杏くんは、納得しつつもムスッとした表情をしていた。
「兄さんは学園――っていうか、家の外では大体あんな感じだよ。長男だし、色々あるんだよ」
そうしてまた私から視線をそらして歩き出したから話は終わったと思ったけれど、ボソッとつけ加えられる。
「家でくらい、周りの目を気にしないでゆっくりして欲しいじゃんかよ」
聞こえたつぶやきに私は目をパチクリ。
え? あれってリラックスしてる状態だったの⁉
あの無表情がリラックス……。
うーん、柊さんがどういう人なのか掴めないな。
でも、ゆっくりして欲しいとか。
杏くんって案外お兄さん思いなんだね。
ちょっと見直しちゃった。
杏くんの方はちょっと分かったかも。
私のことは嫌いっぽいけど、だからって全く相手にしてくれないわけじゃないし。
多分基本的には情に厚《あつ》いタイプなんだね。
そう思ったら少しは安心出来た。
仲良くなれるかは分からないけれど、嫌いにはならなくてすみそうだから。
護衛対象を嫌いになっちゃったら、守るのためらっちゃうこともありそうだし。
だから帰りの車の中では比較的ご機嫌だった私。
そんな私に柊さんがふと思い出したって感じで話しかけてきた。
「そうそう。学園では、望乃さんは基本杏についててもらう感じらしいから。放課後だけ、生徒会の仕事で遅くなる僕につくんだって」
「あ、はい。分かりました」
いつそんなことが決まったんだろうって思いながら、今日は金曜日だし本格的な護衛任務は来週からだねと考える。
了解した私に、柊さんは目を少し細めてちょっと警戒するような感情を見せる。
「……二人きりになることもあるけど、仕事の邪魔はしないでよね?」
「え? はい、それはもちろん」
答えながら首をひねる。
柊さんは何を思ってそんなことを言ってるんだろう?
二人きりだろうが何だろうが、私がするのは護衛だけ。わざわざ柊さんの仕事の邪魔なんてしないのに。
不思議がる私に、柊さんはほんのちょっとだけ驚いた顔をして「なら良いけど」といつもの無表情に戻ってしまった。
柊さんって本当に何を考えているのか分からないよ。
でもまあ私がやることは変わらないよね。
難ありな護衛対象たちだけれど、彼らを危険から守るのが私の仕事。
そこは割り切って行こう。
また改めて決意をし、私は来週からの護衛任務のことを考えていた。
よかった、見失わずに済んだよ。
早足で歩いている杏くんだったけれど、色んな訓練をしてきた私にとって人込みをよけて早く進むのくらいお手のもの。
すぐに追いつくことが出来た。
「もう、そんなに急いでどうしたの?」
「ぅおわっ⁉」
近くに行って声をかけると、ものすごく驚かれた。
私がこんなに近くに来てると思っていなかったみたい。
「……もしかして、私を撒《ま》こうとしてた?」
今までの杏くんの態度や今の状況を考えて聞いてみる。
そしたら案の定にらまれて「そうだよ!」と怒鳴られた。
「お前本当何なの? 護衛とか自己紹介で言う事かよ⁉」
「え? でも本当のことだし……」
「俺は認めてねぇ!」
怒って叫んだ杏くんは、そのまま足をふみ鳴らして進んで行く。
杏くんが認めてなくても、美奈都さんたちから正式に依頼されたことだもん。
護衛しないなんて選択肢はないよ。
でも本当。護衛対象とだけは上手くいかないなぁ……。
メインの護衛対象じゃない紫苑くんとは仲良くなれたし、学園でも友達が出来たっていうのに。
はぁ、と小さくため息を吐いて、もう一人の護衛対象を思い浮かべる。
「あ、そういえば柊さんって学園ではいつもあんななの?」
「は?」
態度は悪いけれど無視はしない杏くん。
何言ってんだ?って顔の彼に、私は問いを続ける。
「入学式のあいさつのときの柊さん、すっごいキラキラした笑顔で話してたでしょ? 家にいる時とは大違いだったから」
「ああ……」
追加の説明で私の聞きたいことを理解した杏くんは、納得しつつもムスッとした表情をしていた。
「兄さんは学園――っていうか、家の外では大体あんな感じだよ。長男だし、色々あるんだよ」
そうしてまた私から視線をそらして歩き出したから話は終わったと思ったけれど、ボソッとつけ加えられる。
「家でくらい、周りの目を気にしないでゆっくりして欲しいじゃんかよ」
聞こえたつぶやきに私は目をパチクリ。
え? あれってリラックスしてる状態だったの⁉
あの無表情がリラックス……。
うーん、柊さんがどういう人なのか掴めないな。
でも、ゆっくりして欲しいとか。
杏くんって案外お兄さん思いなんだね。
ちょっと見直しちゃった。
杏くんの方はちょっと分かったかも。
私のことは嫌いっぽいけど、だからって全く相手にしてくれないわけじゃないし。
多分基本的には情に厚《あつ》いタイプなんだね。
そう思ったら少しは安心出来た。
仲良くなれるかは分からないけれど、嫌いにはならなくてすみそうだから。
護衛対象を嫌いになっちゃったら、守るのためらっちゃうこともありそうだし。
だから帰りの車の中では比較的ご機嫌だった私。
そんな私に柊さんがふと思い出したって感じで話しかけてきた。
「そうそう。学園では、望乃さんは基本杏についててもらう感じらしいから。放課後だけ、生徒会の仕事で遅くなる僕につくんだって」
「あ、はい。分かりました」
いつそんなことが決まったんだろうって思いながら、今日は金曜日だし本格的な護衛任務は来週からだねと考える。
了解した私に、柊さんは目を少し細めてちょっと警戒するような感情を見せる。
「……二人きりになることもあるけど、仕事の邪魔はしないでよね?」
「え? はい、それはもちろん」
答えながら首をひねる。
柊さんは何を思ってそんなことを言ってるんだろう?
二人きりだろうが何だろうが、私がするのは護衛だけ。わざわざ柊さんの仕事の邪魔なんてしないのに。
不思議がる私に、柊さんはほんのちょっとだけ驚いた顔をして「なら良いけど」といつもの無表情に戻ってしまった。
柊さんって本当に何を考えているのか分からないよ。
でもまあ私がやることは変わらないよね。
難ありな護衛対象たちだけれど、彼らを危険から守るのが私の仕事。
そこは割り切って行こう。
また改めて決意をし、私は来週からの護衛任務のことを考えていた。
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